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お着物Enjoy生活からバレエ・オペラ・宝塚etcの観劇日記に...

ロイヤル・バレエ「うたかたの恋」 ③

2010-07-04 20:52:26 | BALLET
アルゼンチンもブラジルも敗退・・・南米勢優位との分析はなんだったのかしら?
このままいくと、ドイツ対オランダ、或いはスペイン対オランダ・・・(ウルグアイファンの方、ゴメンナサイ!でも主力がレッド退場覚悟の反則をした以上万全ではないチーム力、ということで!)うーん、どちらも観ごたえはありそう。
それよりも、これからウィンブルドンの決勝ではありませんか!
ロジャーの敗退は想定外でしたがナダルがんばれ!

諸々、あちこちに気持ちがぶれつつ・・・^^;
「Mayerling」,最終幕、行きます

<第3幕>

第1場 田園地帯。皇室の狩猟場

冬の狩猟大会の日。皇帝の誕生日に集ったメンバーが揃って、狩猟服を着ているのがシック。
控え目な色使いながら、毛皮など豪華な素材感が却ってその場のものさびしさ、寒さを物語ります。
冬を彩る楽しみごと、なれど、何気に伯爵夫人と皇太子妃が反目し合っていたり、なんとなくルドルフもイラついている感じ。
突如として王室メンバーの方に銃口が向いているにも関わらず、ルドルフが訳もなく発砲してしまう・・・。
もちろん銃の暴発、不幸な事故。
現代の新聞を賑わせる不毛な事件を思い起こさせる展開。

 第2場 ホフブルク宮のルドルフの部屋

憔然としているルドルフのもとにラリッシュ伯爵夫人が訪れます。
そこに伯爵夫人の叔母にあたるエリザベート皇后 が現れ夫人を責め、追い出します。
過去に、姪とはいえ身分はかなり格下なラリッシュ伯爵夫人とルドルフの愛人関係を知り、快くは思わぬまでもスキャンダルを防ぐために結婚を勧めたことがある、といういきさつがあるためか、今は正式な妻を迎えたルドルフとよりを戻しているのではないかと疑念を持ったから、でしょうか。

再び一人になった彼のもとに今度はマリーがやってきます。
極度の神経衰弱状態にあるルドルフは、彼女に心中を持ちかけます。
あっさりと断った以前の愛人、馴染みの娼婦ミッツィカスパーとは違い、銃を手に、その概念~愛のために死ぬこと~に見入られた様子のマリー。

 第3場 マイヤーリングの狩猟小屋

ホイオス伯爵、フィリップ公と遊んでいたルドルフ。
酒をあおるように飲む彼からグラスを取り上げるフィリップ。
ブラッツフィシュがマリーを伴って現れ、伯爵とフィリップ公は席をはずします。

何やら重苦しい空気を読んで、場を盛り上げようと、懸命に楽しく踊って見せるブラッフィッシュ。
リッカルド・セルヴェラが見事に回転技やジャンプを見せても一顧だにされず。
気落ちしつつも、何度も試みる彼に気付いたルドルフが、もういいよ、とハグします。
上着を手に、二人の様子を気にしながらも辞居するブラッツフィッシュの胸に去来したのは死の予感だったのでしょうか。

二人きりになったマリーとルドルフののパ・ド・ドゥ。
狂ったように情熱に駆られて愛を交わす二人。
死を覚悟したうえでの最期の情熱の発露。二人の心が同じ方向に向かって寄り添い、駆け抜けていくような非常にアクロバティックな踊りです。
音楽がやみ、静寂が訪れ、二人は横たわり、ただ、荒い息遣いだけが聞こえます。
お互いに銃をみて、そしてうなずくマリー。

二人が衝立の向こう側に姿を消して間もなく、銃声が響き渡ります。

よろめきながら姿を見せたルドルフ。
聞き咎めたお付きのものがやってくるが下がらせてまた衝立の向こうに姿を消し、再び銃声。

ロシュック、ホイオス、フィリップの3人が駆けつけると、
倒れた衝立の向こうに臥したルドルフ。ベッドの上にはマリーの屍。。。

<エピローグ>

夜明け前。ハイリゲンクロイツの墓地。

この心中事件は宰相ターフェ伯爵の命で、もみ消されました。
服を着せられ叔父二人につきそわれて馬車に座らされてきたマリーの遺体がようやく埋葬される運びに。

ブラッツフィッシュがその棺に白い花を一輪捧げて涙にくれます。
冒頭のシーンが繰り返され、墓地に並んで立つ叔父二人の黒いこうもり傘に白い雪が果断なく降り積もります・・・

リストのメロドラマティックな音楽をジョン・ランチベリーが巧みに組み合わせて構成された音楽を、今回の公演では、(佐々木さんが張り込んでくださったと見え・笑)東フィルが確かな演奏でバリー・ワーズワースさんの指揮棒に応えてくれました。
幕が降りたとたんに拍手が起こりましたが、音楽が終わってからにしてほしかった・・・というのが感想です。

主役二人はもちろん、彼女なりのやり方で情のこまやかなところを見せるラリッシュ伯爵夫人のマーラ・ガレアッツィを始め、脇も盤石。
素晴らしい舞台でした
ただ、「リーズ」とは逆で、誰一人として心を通わせることのできる人物が出てこない、人間の心のダークサイドに光を当ててえぐりだすようなこの作品、また、他のキャストで観てみたい!と思うものではなかった・・・かも。
出来るだけBESTキャストの日を選んで、一度は観ておくと良い、価値のある舞台だとは思います。


ロイヤル・バレエ「うたかたの恋」 ②

2010-07-04 07:46:15 | BALLET
先週は都さんの感動的なロミジュリ、そして怒濤のサッカーのワールドカップの連日の試合をフォローするのに精いっぱいですっかり途中で放置してしまいましたxxx
ロイヤル・レポ、再開しますね!

3幕のバレエなのですが、プロローグとエピローグがつきます。
ともに雪の降りしきる暗闇の中の墓場。
ルドルフと心中した男爵令嬢、マリー・ヴェツェラの密葬です。
全体的に非常に演劇的な作り。

プロローグは 夜明け前のハイリゲンクロイツの墓場。

マリー・ヴェッツェラの亡骸は2人のおじによってひそやかに埋葬されます。
立ち会うのは牧師とルドルフ皇太子の腹心、個人的な御者を務めた人気芸人ブラットフィッシュだけ。
全てを見てきた彼は小さな花を供え、馬車に寄りかかって号泣します。
降り積もる雪・・・。

<第1幕>

■第1場 ウィーン、ホフブルク(宮廷)舞踏会の間■

オーストリア・ハンガリー帝国の皇太子、ルドルフとベルギー王女ステファニーの結婚式。
ステファニーはイオーナ・ルーツ。クララ役で観たことがあったような・・・。その時は名前の表記がアイオナになったいたと記憶しているのですがどうでしょう?(楽屋口でもアイオナ、と呼ばれていました)
立派な体格のアコスタと並ぶとと華奢な彼女は子供のよう。
この政略結婚に明らかに乗り気でないルドルフ、ステファニーの姉、ルイーズ皇女に目を留めてちょっかいを出します。

今回、初めてカルロス・アコスタを観たのですが、凄いダンサー!
背が高く、筋肉の乗った均整のとれた体型から繰り出されるダイナミックなソロには目を見張らされるものがあり。
ピルエットは難なく4回転。テクニックをテクニックと感じさせない。舞台俳優が台詞をしゃべるのと変わらないさりげなさで高難易度の技をやや憂いをふくんだ傲慢な表情を崩さないままに繰り出してくる。
黒人の彼がパプスブルグの皇太子を演ずるのってどんな感じなのかしら、と疑問に思っていたのが嘘のよう・・・。
口髭を蓄えて、ウェーブの黒髪を7.3になでつけ、白い軍服の礼装に身を包んだ彼から発するアロガントなオーラは神経質で繊細なルドルフ像とはまた違った、彼なりの、でも説得力のある表現になっています。

皇后付きの女官であり、ルドルフのもと愛人であるラリッシュ伯爵夫人が、ヴェッツェラ男爵夫人と令嬢マリーをルドルフに紹介。まだ子供子供したマリーは、小柄なロホが自分で演じています。

ルドルフの友人、4人のハンガリー将校が登場。彼らはハンガリーの分離派運動の闘士でもあり、ルドルフの協力を求めて説得しようとしているのですが・・・。
3回転のピケ・ピルエットを連発。4人が次々に繰り出すこの場面は迫力がありますが、少しでも乱れると4連続なだけに目立つこと必至。蔵健太くんが体格的にもダンスとしてもひけをとらないばかりか立派な姿で登場して、ちょっと感動。 

結婚式の厳粛な空気を乱すルドルフの振る舞いに立腹する皇帝。ステファニーの腕をとってルドルフは辞去します。

面白いのがこれからの場面転換でのカーテンの使い方。
カーテンの襞の陰に等間隔に4人の将校が隠れます。
ルドルフが来るとその襞の陰からサッと現れて彼の耳元にささやきかける、という趣向。

■第2場 ホフブルク宮の皇后の部屋■

女官たちの踊り。金糸のブロケ―ドがふんだんに使われた衣装をまとった女性たちの優雅な踊り。
衣装の織の質感、色調の重厚さ加減、素晴らしく優美で豪華。
こういう舞台の表現・拵えはロイヤルの舞台ならでは!の充実感(それを思うと前回の来日公演での新版「眠り」の貧相な舞台はなんだったのかしら・・・悪い夢だった、ということにしておきましょう;;)
ルドルフの登場で退出する女官たち。皇后エリザベートは彼を無視してファッションの見本帳?を眺めてくつろいでいる。
自分のほうを見てほしい、話を聞いてほしい、という思いを、その本をとりあげ、投げ捨てることで訴えるが、エリザベートはとまどいの表情をみせるばかりで、彼の求めるなぐさめは得られず。

ハプスブルク歴代皇帝の肖像画のある回廊で、また、ハンガリー将校たちがルドルフを待ち構えています。
場面転換の時間を有効に使った演出。

■第3場 ホフブルク宮のルドルフの部屋■

夫婦の寝室。店外つきのベッドの前でお世話係の女官たちが初夜を迎えるステファニーの準備をしています。
楽しそうにしているお付きとは対照的に、ちょっと神経質になっている皇女ステファニー。
彼女が一人になります。
そこに登場する新郎ルドルフ。
手にはしゃれこうべとピストル。そのピストルを突き付けられておびえるステファニー。

おびえたステファニーを素早くリフトしてはじまるパ・ド・ドゥが圧巻。
アイオナが小柄とは言え、軽くふりまわし、翻弄し、思いのままにいたぶる・・・こんな痛い振付って・・・
マクミランならでは、ですね^^;
皇女らしく毅然としようとしながらも恐怖心から脚が細かく震えるステファニーの哀切。
アイオナ・ルーツの表現も鬼気迫るものがあり、息を殺して見守る観客。
ここまで恐怖を味あわせてからおもむろに床をともにする・・・この展開は新婚初夜、というよりはむしろ凌辱、です。

ルドルフのすでに破綻した人間性を垣間見せる場面。かなりショッキングな幕切れ。


<第2幕>

■第1場 悪評高い居酒屋■

ルドルフの馴染みの高級娼婦、ミッツィ・カスパーの酒場。
ブラッドフィッシュの馬車で、ルドルフにつれてこられたステファニーはグレーの襟元の詰まった質素な服装。
いかにも場違いで居心地が悪そうです。
対照的にくつろぐルドルフ。
酒場の女性たちのいでたちは大きくデコルテの開いた黒いコルセットスタイル。ガーターベルトにショートブーツ、色とりどりの羽と金モールで飾られた軍帽を細かく縮らせた赤毛に載せたSEXYスタイルは猥雑で魅惑的。

ハンガリーの将校4人とミッツィの踊り。
自在なポジションのリフトを多様したマクミラン・スタイル。

ルドルフ対将校たちのジャンプ合戦?のような踊り。非常にダイナミック。

ブラットフィッシュの踊り。リッカルド・セルヴェラが心地悪そうにしているステファニーを楽しませようと、達者な踊りを披露するも、彼女はその場を立ち去ります。慌てて追いかけるブラットフィッシュ。
ちょっと少年っぽい面立ちのセルヴェラは技巧をこらした踊りをキレイに決めますが、刺身のツマ的な存在なのがちょっと気の毒。ひと癖あって濃い登場人物たちの中にあって、心底ルドルフに忠実な青年は一服の清涼剤。

酒場の喧噪の中で、ハンガリー独立運動の密談が交わされます。
すでに酔っ払い状態のルドルフのソロ。
スピーディかつダイナミックなマネージュ。

突然、憲兵たちによる手入れが入り、客たちが逃げ出しますが酒場の女たちは抵抗しながらも拘束されてしまいます。
ルドルフとミッツィはいち早く隠れて事なきを得、再び静かになった酒場に姿を表します。
厭世的な気分に陥ったルドルフはミッツィに心中を持ち掛け、ピストルを見せますが、ミッツィにその気はさらさらありません。
人の気配に逃げるルドルフ。
首相であるターフェ伯爵。ミッツィは伯爵にルドルフを売り、独立運動のビラを証拠として渡します。
酒場の女主人としての派手なドレスの上に毛皮の外套を着こんで伯爵の腕をとって立ち去るミッツィ。

■第2場 居酒屋の外■

ハンガリー将校と会っているルドルフのもとに。マリーを連れたラリッシュ伯爵夫人がやってきます。
彼女は改めてマリーを彼に紹介します。どうやら女衒のようなことをしているらしい。
皇太子に挨拶をして、マリーは馬車で帰ります。

■第3場 ヴェッツェラの家■

マリーはうっとりと皇太子の肖像画を眺めています。母親であるヴェッツェラ 男爵夫人は名脇役エリザベス・マクゴリアン。
ロイヤルの宮廷に欠かせない美しい王妃役のエキスパートである長身の彼女が花を生けている様子はとても舞台映えがします。
そこに訪問者が。ラリッシュ伯爵夫人です。
3人のドレスがちょうどエトロのペイズリーのようなコックリとした金茶と臙脂色の色調に明るい朱赤がアクセントになっていて、沈んだ金と茶のの舞台装置と相まってとても色彩設計が美しい。
ラリッシュ夫人はマリーの運命をカードで占います。
死のカード!笑顔ですり替え、マリーに愛の成就を示すカードを見せる夫人。
喜んだマリーは皇太子への恋文を書いて夫人に託します。

ここで場面転換。場面転換に欠かせない4人のハンガリー将校。
エリザベート皇后 が現れて彼らと踊ります。

■第4場 ホフブルク宮■

皇帝フランツ・ヨーゼフの誕生日の祝いの席。
複雑な人間模様が交錯する場面で、大変に観る方も忙しいです(笑)

ターフェが見せた、ミッツィから得たビラを破り捨てるルドルフ。
軍服の礼装の人々の中、一人燕尾服のミドルトン大佐。通称ベイ。
皇后 の愛人としてこの場にいる彼は飄々とした演技と黒燕尾の似合うスタイルの良さでつい眼が行ってしまいます。
それもそのはず、ロイヤルの誇るプリンシパル・キャラクター・アーティスト陣の中でも極めつけの存在感を誇るギャリー・エイヴィスですから・・・(←ファン)
ターフェ首相に葉巻を勧め、彼が受け取るとそれがクラッカーになって破裂する・・・といったお茶目ないたずらもさりげなく仕掛ける彼のしぐさは実にエレガント。

一方、皇帝はカテリーナ・シュラットという歌手が目下の愛人。彼女のの肖像画を誕生日の祝いとする皇后 。
全ての思惑が交差して表面上はにこやかに優雅なふるまいの奥にしまいこまれる様をあますところなく見せるこの一場。
それぞれが常に演技をしているし、そこに含まれた意味が観てとれるので、ここ、目が3セットほど欲しいかも(笑)

花火が始まり、奥の窓辺に移動する一同。

皇后 とミドルトン大佐は残って二人で踊ります。微妙に色っぽい雰囲気が漂うダンス。
母親の”女”としての顔を複雑な気持ちで見つめるルドルフ。
二人がその場を立ち去ってから、苦悩のソロを踊ります。
非常に複雑で独創的な回転技の連続。
その様子を心配してみているラリッシュ夫人。多重的な構造が上手い演出。

花火のあとは、カテリーナ・シュラットの独唱。

愛と別れをテーマとしている、という美しくもせつないソプラノ。
見つめる皇帝。
囲む人々それぞれの思い。
舞台の上でも客席でも拍手。

ラリッシュ夫人はマリーから託された手紙をルドルフに渡します。

場面転換で幕。
今度の幕前での場面は三角関係。皇后 、ミドルトン大佐、そしてルドルフの友人、ホイオス伯爵。
若い伯爵は皇后 に懸想しているのですが体よくミドルトン大佐に追い払われてしまいます。

■第5場 ホフブルク宮のルドルフの部屋■

皇太子のおつきのロシュックが退出。
マリーの登場。コートの下は、キャミドレス。下着姿です。
ルドルフはマリーを引き寄せて愛撫します。
愛の、というか、欲望のパ・ド・ドゥ。

マリーはドラマチックなロマンスを夢見る夢想家であり、この年代ならではの残酷さと思い切りの良さを持つ少女。
皇太ルドルフとの許されない愛、というお膳立てが彼女の夢想を具現化し、自らをドラマの主人公に仕立て、暴走させた・・・という展開。

夢見たドラマチックなシーンに飛び込むマリーにためらいはありません。

ステファニーのときのようにルドルフが持ちだすしゃれこうべとピストルを逆に奪って、しゃれこうべを胸に抱いて愛撫し、ピストルをルドルフに突き付けて脅し、天井に向かって発砲するマリー。

さすがに怯えるルドルフの上からかぶさるように回転しながらキスをするマリー。
バレエダンサーにしてはむっちりした胸、白い柔肌、そして驚異のテクニックを誇る小柄なタマラ・ロホ。
大きな黒い瞳の強い視線も、ちょっとパセティックなマリーにぴったり。
身体のたくましさと裏腹な心の弱さを持つルドルフが持つ厭世的な気持ちを、彼女の悲劇に酔うドラマ至上主義が導いていった結果としての悲劇・・・という、このマイヤリング事件の解釈を見事に体現しています。

走りこみ、なんの迷いもなくルドルフの腕の中に飛び込むマリー。
空中にしなやかに延べられ心のままにうごめきながら屹立する脚、高々と頭上に掲げられるリフト、そして回転。
まるでフィギュアスケートのペア競技のような変幻自在の複雑なポジションチェンジを繰り返す超難易度のリフトの連続を情熱的に一つの瑕疵もなく踊りきる二人・・・。

見事です。