すっかりあれから月日がたってしまいましたが、
吉田都さんのロイヤルバレエ団での素晴らしいキャリアの最後を飾る公演、
英国ロイヤルバレエ団、2010年日本ツアーの東京公演最終日、2010年6月29日(火)、東京文化会館にて18:30からのソワレに向けて会社を休んで(^^;)行って参りました。
会員席とはいえ、7列目センターって嬉しすぎます。NBSさんありがとう!
もちろん、会場は「満員御礼」の札が入口に・・・。
平日の早めの夕方とも思えない、いつもよりテンション高めの会場には、フィギュア・スケートの浅田真央ちゃん、Kバレエの清水健太くん、もと宝塚のスター、和央ようかさんと花總まりさんのお姿も・・・。
そして、NHK「プロフェッショナル」の撮影クルーが会場のそこここでインタビューをされていましたので、きっとそのうち番組として放映されるのでしょうね。
キャストは27日の日曜日と全く変わらず。
27日の終演後、楽屋口で相手役のスティーブン・マックレーに、都さんのサポートも素晴らしいし、心のこもった演技をありがとう、と申し上げたら、都さんのFINAL STAGEでの相手役をおおせつかるのは光栄なことだし、彼女と一緒の舞台を心から楽しんでいる、とのことでした。
連日大盛況の今回のロイヤルの日本公演、ダンサーひとりひとりが、ファンとの交流を楽しみ、最終日に向けて舞台への意気込みを気軽に語ってくれた様子からも、最終日への期待が高まります。
<第1幕>
冒頭のロザラインへのマンドリンのシーン、ロミオはやんちゃ、というよりも夢見がちな青年。
まだ恋に恋しているような内気さも漂わせています。
ですが、ピケピルエットから始まるソロでその印象が一変。
スピーディでキレキレで・・・うーん、今夜のスティーブンは やってくれそうな予感。
そして驚かされたのは、マキューシオ。
ブライアン・マロニー、おとといはプリンシパル二人と並ぶと見劣りする・・・などと言ってゴメンナサイ!
いえ、びっくりするほど良かったです。
むしろ、ベンヴォーリオのポルーニンのほうが、この日はちょっと重く感じたところあり。
それにしても、この3人の並びはいいですね。
色彩的にも、赤毛がかった金髪のほっそりとしたロミオに、明るい金髪にオレンジの衣装のマキューシオ、褐色の髪と衣装のベンヴォーリオとバランスがキレイ。
ティボルトは荒くれ者な役作り。登場するなり、仲の悪いモンタギュー家の面々にくってかかります。
そのまま剣でのつつき合い、チャンバラシーンへと突入。
一昨日もスゴイ迫力でしたが(ロミオがけがをしてしまったくらい・・・;;)剣さばきが上手く、とりわけマロニーのスピード感は冴えていました。
気がつくと当主どおしまでが・・・。広場は騒然。
ヴェローナ大公がお出ましになり、その場を収めますが、ギャリーのキャピュレット公は憤懣やるかたない、といった風情です。
大公に言われて剣を置くも、反省の色なし(笑)
まだアラステア・マリオットのモンタギュー公のほうが聞きわけが良さそうでしたが・・・・
両陣営、ふんっとマントを翻して左右に掃けます。
第2場 ジュリエットの部屋
乳母とはしゃぐジュリエット。まだまだ子供な無邪気さに溢れています。
婚約者?なぁに、それ?
ステパネクのパリスは、日曜日にご本人に「ぼくの考えでは、パリスは本当にジュリエットのことが好きだったんだと思うな」と印象通りの返答をもらったこともあり、優しさエレガントさがまぶしいほど。
スラリとした長身で、白い衣装がいかにも王子様然としています。
よくある金持ちの気取りやパリスとは全く違います。
ギャリーの父親も、なんだか良いお父さん。
封建君主の絶対的な家長として命令を下す・・というよりは、寧ろ愛娘と未来の婿に気を使っている様子。
お互いに気に入っているようだ、良かった、という目線が温かい。
にっこりと近づくパリスに気後れするのと恥ずかしいのでジュリエットはす~っと後ずさりするようにパドブレ(お見事!)で逃げるのですが、これがなんともユーモラス。
ひとつひとつの動きに少女ジュリエットのフレッシュな可愛らしさが匂い立つようです。
でも、このとき、好意さえ感じていたパリスに、3幕でロミオの妻になった後は完全に心を閉ざして同じようにパドブレで逃げる・・・同じ動きで真逆の心情とシチュエーションを描く構成が巧みです。
このあと、乳母に、胸に手を当てて御覧なさい、もう大人の女性になろうとしているのですよ、という気づきで驚く場面が続きますが、これもまた、2幕のバルコニーのロミオとのシーンにつながり・・・
色々な伏線があるシーンです。
第3場 キャピュレット家入口
お客を迎えるのは今夜はティボルトではなくキャピュレット公御自らのお出ましです。
なぜ?でもギャリーファンとしてはたくさん見られて嬉しい
ここに麗しのロザラインを追いかけて忍び込んでやろうとするロミオたち3人。
ここで、3人揃い踏みの踊りがあるのですが、この場面、3人ともステキ。イキイキとした躍動感にあふれ、観ていてワクワクします。
第4場 舞踏会場
重厚感溢れる有名なテーマ音楽に乗っての貴族の踊り。
上手からティボルト、キャピュレット公、パリスが前面に出て、豪華な衣装を身にまとった貴族たちと宮廷の踊りを典雅に重々しく踊ります。
は~、やっぱりステキ!
このシーンも大好き。
ロミオたちもその場にいます。
ジュリエットが登場。
まるで眠りの森の美女のオーロラ姫16歳の誕生日、の登場シーンのように、そこだけパッと明るくスポットライトが当たったような存在感。
可憐で初々しい。
パリスと二人でセンターで踊りますが、もう、この場面だけでうっとり。
可愛らしくはにかむジュリエットと優しく微笑みをたたえて見つめるパリスとの、とても品のある美しいパ・ド・ドゥ。
マンドリンを膝にのせてつま弾くジュリエット。少女たち6人がバロック調の音楽に合わせて踊りますが、そこにロミオが乱入します。驚きながらも、見事な踊りにそのまま踊らせる人々。
ジュリエットがお返しにソロを踊ります。
音楽にも踊りにも才能がある、イキイキとした魅力たっぷりの少女ジュリエット。
パリスとジュリエットの間にロミオが乱入し、空気がこわばります。
そこにすかさず、マキューシオが踊り始め、その場の空気を変えて自分の方に注目を集めようとします。
うーん、ここでのマキューシオには何かが下りていました。
日曜日とは別人かと思うほど・・・。驚くほどのスピード感と小気味よさ。素晴らしかったです。
続きの間にひとり佇むジュリエット。そこに入ってくるロミオ。
びっくりして逃げ出そうをする とっさの反応が如何にも少女らしくてナチュラルですね。
あの人だわ!乳母を下がらせて、一瞬二人きりになりますが、そこにキャピュレット公とパリスが現れます。
ご一緒に、と誘うパリスにお断り。
とまどうパリスにパパがフォローを入れながら立ち去ります。
ようやく二人きりに。仮面を取るロミオ。見つめ合う二人。
しかし、ここで天敵登場。
ティボルトです。片手で顔を隠すロミオ。その周りを怪しみながらグルグルとつけまわすティボルト。
怪しい奴、顔を見せろ。手を払いのけられ、もう隠れられません。
おまえか・・・!失せろモンタギューめ!!
出口を指し示します。
そこにキャピュレット公が登場。
険悪な状況を見てとって、大人の対応。ティボルトを収め、ロミオを客として改めて迎えるジェスチャーを。
それに応えて、いとまごいの挨拶をするロミオたち。
第5場 キャピュレット家の外
第6場 ジュリエットの部屋のバルコニー
ジュリエットがバルコニーに姿を現します。
今日は色々なことがあったけど・・・あの人・・・胸一杯になって星空を見上げるジュリエット。
もうこの都さんの恋する表情を見ただけで涙がでそう。
ロミオがマントを翻して現れます。
舞台の上手からジュリエットの姿を認め、そして下手に走ってまた見つめます。
眼と眼が合い、ジュリエットが外階段を中庭に下りてきます。
マントを置いて、ジュリエットを迎えるロミオ。
手に手を取り、そしてジュリエットが彼の手を、胸に導いて気持ちを伝えます。
ロミオのソロ。歓喜に満ちあふれた踊り。
ジュリエットのソロ。
今日はリフトもバッチリです。
精一杯高々と掲げられた都さんの空中ポーズの美しいこと!
そっと口づけをかわし、階段を駆け上るジュリエット。
再び、中庭のロミオを見やると、二人ともいても立っていられなくなり、
バルコニーの上と下でお互いに向かって手を伸ばします・・・。
<第2幕>
第一場 市場
町の喧噪。娼婦の一団と一般人の女性たちとがいがみ合っています。
そこにロミオ登場。いつにも増して夢見心地。
ジュリエットの乳母が登場。ロミオを捜している模様。
3人は乳母をからかいます。
ロミオがキスするとパタンと倒れたり、なかなかコミカルな乳母の反応。
乳母から受け取ったのはジュリエットからのラブレター。
この日の高速シェネも凄かった!
恋する男は手がつけられませんね。乳母の回りをシェネで一周、場内大喝采!
第2場 教会
神父はアラステア・マリオット。
モンタギュー公と2役です。
恋する若者の実行力を侮ってはいけませんね。素早い展開。
対立する両家の和解の助けになるのでは・・との判断で協力者となった神父による小さな結婚式。
神に誓う二人の真剣な表情に、これからの試練を思われて・・・。ちょっと切ない気分です。
第3場 広場
マンドリンダンス。ソリストはホセ・マルティン。
「リーズの結婚」ではアラン役が印象的だった彼、ここではテクニシャンの一面を見せて
ピルエットと豪快なジャンプで達者なテクニックを披露してくれました。
ティボルト登場。
楽しい雰囲気だったのに、空気が重く変わります。
マキューシオが挑発します。
ティボルトは教会から戻ってきたロミオをご指名。
胸に剣を突き付けてさぁ、と促しますが、ロミオはそんな気分ではありません。
手でその剣先をすっとはずしてしまいます。
皆がガッカリ。
じゃあ、代わりに俺様が相手だぞ、とマキューシオが剣を構えます。
ブライアン・マロニーここでもキレキレの剣さばき。
素晴らしい手首の返し技。
一度は勝負がついたのに、おさまらないティボルト。
たたき落とされた剣を手に背を向けたマキューシオの方に進みます。
それとは知らぬマキューシオが一歩後ずさりしたときに剣が脇腹を貫きます。
一瞬何が起こったのか双方気がつきません。
平気なふうを装うマキューシオ。しかし身体の自由がきかなくなり死を悟ります。
平気な顔のマキューシオに落ち着いた風情のティボルト。しかし、剣先を確かめると・・・。
刺さっている?
マキューシオはロミオとティボルトを指さしてこと切れます。続きは二人で、とのご指名か。
応えるように、ティボルトは剣でロミオを指し示します。
マキューシオの亡骸に取りすがり泣くロミオ。
突如、胸に湧きおこる感情がロミオに剣を取らせます。
その感情のまま激しく攻め立てて、間もなく、ティボルトはロミオの手にかかって命を落とします。
そんなつもりではなかったのに・・・
がっくりと膝をつくロミオ、ベンヴォーリオがロミオを抱きかかえます。
広場の中央で激しく嘆くキャピュレット夫人。ロミオは義理の母に許しを請いますが彼女は聞き入れません。
ベンヴォーリオはロミオをその場から連れ出します。
キャピュレット公が現れ、状況を見てとって驚き、ともに嘆きます。
<第3幕>
第1場 ジュリエットの寝室
夜明け前に立ち去らなくてはならないロミオ。
初夜を過ごしてすぐに別れなくてはならない二人。
一人残されるジュリエット。
そこに間もなく、乳母と両親、そして婚約者パリスがやってきます。
ティボルトの死をキャピュレット夫人の黒いヴェールが示しているものの、この縁談は
予定通り取り運ぼうというお話。
今のジュリエットにとって、夫であるロミオ以外の男性から触れられるのは我慢のできないほど嫌なこと。
昨日まではどうということもなかったパリスの手へのキスに飛びのき、肩に触れる手にビクッとし・・・。
パドブレで後ずさり。
優しくする全ての動作にジュリエットは過敏に嫌悪の情を示します。
傷ついた表情のパリス。
わがままと気まぐれもイイ加減にしなさい!と癇癪玉を破裂させるキャピュレット公。
従兄を殺した敵の家の息子と結婚したのよ、とも言えず、どうすることもできないジュリエット。
追い詰められて一人ぼんやりとベッドの上で絶望しているジュリエット。
最初は泣いているのですが、次第にロミオとの未来に向けて強くならなくては、と気持ちを切り替えて。
そうだわ、と笑顔になり、神父に相談するために走りだします。
夜明け前の薄暗いライトから一転して朝の光が差すような都さんの表情の変化がすばらしい。
第2場 教会
神父から銀の薬入れを手渡されるジュリエット。
第3場 寝室
戻ってすぐに薬を枕の下に隠したら、すぐにまたパパ達がやってきます。
ジュリエットは先程厳しく叱責された父親の手をすり抜けて母親にすがります。
お母様、助けて!
頭にきたキャピュレット公。
パリスもわけもわからず拒否されてちょっと意固地になってしまいます。
二人のパ・ド・ドゥ。
あの舞踏会の冒頭での完全なる調和と対極なこのPDD.
ジュリエットをねじ伏せているようになってしまっているパリス。
完全に顔をそむけていやいや踊るジュリエット、ともに哀れなり・・。
ジュリエットはこの結婚に承諾する意思を示します。
ホッとするキャピュレット公。パリスも笑顔で手にキスをしようとすると、またもやサッと手を引かれ・・・
ジュリエットのわがままにまたもやカッとしつつも、とまどうパリスをなだめて立ち去るキャピュレット公。
女性たちも続きます。
一人になったジュリエット。
意を決して薬を飲みます。苦しい・・・。
意識が遠のく前に、ベッドに戻って横たわり、じきに薬がまわります。
花束を持ってさんざめきながら、6人のお友達が花嫁の付き添いとして現れます。
おめでとう!花嫁さんはお寝坊ね!起きて、ジュリエット!
・・・死んでいる?!
乳母とパパもお友達に続いてやってきますが、どうも皆の様子がおかしい。
ジュリエットが死んでいる!妻を呼ぶキャピュレット公。
ギャリーの泣き顔に胸がふたがれます。
第4場 キャピュレット家の墓室
暗い石室。家族が付き添い、最後に一人残って、パリスは夭折した婚約者のために祈り、十字を切ります。
伝え聞いて忍び込んできたロミオが、パリスを刺し、なにが起こったのかわからないままに息を引き取ります。
あぁ、なんて悲しい人生なのでしょうか、パリス・・・。
気の毒なパリスを一顧だにせず、ロミオはジュリエットの亡骸に涙して、墓石から降ろしてその亡骸を抱きつつ、ともに踊ろうと試みます。涙のパ・ド・ドゥ。
ふたりで生命のキラメキを確かめあうように踊ったそれまでのシーンがだぶり、必死のロミオと力なくだらりと垂れるジュリエットの腕と身体がなんとも残酷な・・・。
悲しみをいやがうえにも増すシーンです。
どんなに踊っても、もうジュリエットは蘇らない。
死後の世界でまた出会うしかない。
意を決してロミオはいざという時のために懐にしていた毒薬を飲み干し、こと切れます。
直後にジュリエットが眼を覚まします。
あぁ、あと10秒早ければ・・・と思ってしまいます。
上手に倒れたパリスを見て、死んでいる・・・?と思いながら次に逆側の傍らを見やるとそこにはロミオが!!
もうパリスのことは頭から消えています。
でもロミオは・・・死んでいる!
声にならない鋭い叫び。
瞬きも出来ずに見つめるわたくしも思わずハッと心がえぐられるように感じました。
それだけ激しいジュリエットの驚きと嘆きがその一瞬に伝わってきたのです。
パリスの近くにく転がっている短剣を手に、ひと思いにみぞおちに突き立てるジュリエット。
ロミオの近くで・・・と虫の息で墓石に戻り、ロミオに手を伸ばして触れ、安心したようにフッと命の炎が消えていきます・・・。
終わりました。
会場から割れんばかりの拍手が。
そのまま、カーテンコールが延々と15分ほど、だったでしょうか。
惜しみない拍手が送られ、
最後、幕が上がり、そこには大きな「SAYONARA」の横断幕が。
金色のコンフェッティが果断なく降り注ぎ、背後には出番を終えて私服になった人も多いダンサーたちとスタッフが。
挨拶を続ける都さんとスティーブン。
そこに次々と現れて舞台袖に並ぶのは、モニカ・メイソン芸術監督をはじめとするロイヤルの重鎮たち、そしてジョナサン・コープをはじめとするパートナーを務めた名ダンサーたち!
そう、それは、桟敷席のファンから降り注ぐフラワーシャワーこそありませんが、YouTubeで観たあのコヴェントガーデンでのフェアウェル公演の再現のよう!
降り注ぐ金のコンフェッティがスティーブンの頭に積り、彼が都さんにお辞儀をすると同時にミニ紙吹雪状態に
都さんのフェアウェル公演を守護する天使のようでした・・・
音楽、一つ一つの場面でのそれぞれのソリストたちの演技の濃さ、そして何より、この日が引退公演とは信じられない都さんの初々しいジュリエット!
このロイヤル・バレエという濃密な完成度の高い舞台の中央で、伸び伸びと演技する都さんを観られるのはこれが最後か・・と思うと泣けてきますが、
これからもダンサーとしての活躍は続けていただける、というのが何よりありがたいこと。
それにしてもこの日の公演をじっくりと観ることの出来た幸せに感謝します・・・
Bravi! Royal Balletよ永遠に。
都さん、素晴らしい舞台をありがとうございました!
吉田都さんのロイヤルバレエ団での素晴らしいキャリアの最後を飾る公演、
英国ロイヤルバレエ団、2010年日本ツアーの東京公演最終日、2010年6月29日(火)、東京文化会館にて18:30からのソワレに向けて会社を休んで(^^;)行って参りました。
会員席とはいえ、7列目センターって嬉しすぎます。NBSさんありがとう!
もちろん、会場は「満員御礼」の札が入口に・・・。
平日の早めの夕方とも思えない、いつもよりテンション高めの会場には、フィギュア・スケートの浅田真央ちゃん、Kバレエの清水健太くん、もと宝塚のスター、和央ようかさんと花總まりさんのお姿も・・・。
そして、NHK「プロフェッショナル」の撮影クルーが会場のそこここでインタビューをされていましたので、きっとそのうち番組として放映されるのでしょうね。
キャストは27日の日曜日と全く変わらず。
27日の終演後、楽屋口で相手役のスティーブン・マックレーに、都さんのサポートも素晴らしいし、心のこもった演技をありがとう、と申し上げたら、都さんのFINAL STAGEでの相手役をおおせつかるのは光栄なことだし、彼女と一緒の舞台を心から楽しんでいる、とのことでした。
連日大盛況の今回のロイヤルの日本公演、ダンサーひとりひとりが、ファンとの交流を楽しみ、最終日に向けて舞台への意気込みを気軽に語ってくれた様子からも、最終日への期待が高まります。
<第1幕>
冒頭のロザラインへのマンドリンのシーン、ロミオはやんちゃ、というよりも夢見がちな青年。
まだ恋に恋しているような内気さも漂わせています。
ですが、ピケピルエットから始まるソロでその印象が一変。
スピーディでキレキレで・・・うーん、今夜のスティーブンは やってくれそうな予感。
そして驚かされたのは、マキューシオ。
ブライアン・マロニー、おとといはプリンシパル二人と並ぶと見劣りする・・・などと言ってゴメンナサイ!
いえ、びっくりするほど良かったです。
むしろ、ベンヴォーリオのポルーニンのほうが、この日はちょっと重く感じたところあり。
それにしても、この3人の並びはいいですね。
色彩的にも、赤毛がかった金髪のほっそりとしたロミオに、明るい金髪にオレンジの衣装のマキューシオ、褐色の髪と衣装のベンヴォーリオとバランスがキレイ。
ティボルトは荒くれ者な役作り。登場するなり、仲の悪いモンタギュー家の面々にくってかかります。
そのまま剣でのつつき合い、チャンバラシーンへと突入。
一昨日もスゴイ迫力でしたが(ロミオがけがをしてしまったくらい・・・;;)剣さばきが上手く、とりわけマロニーのスピード感は冴えていました。
気がつくと当主どおしまでが・・・。広場は騒然。
ヴェローナ大公がお出ましになり、その場を収めますが、ギャリーのキャピュレット公は憤懣やるかたない、といった風情です。
大公に言われて剣を置くも、反省の色なし(笑)
まだアラステア・マリオットのモンタギュー公のほうが聞きわけが良さそうでしたが・・・・
両陣営、ふんっとマントを翻して左右に掃けます。
第2場 ジュリエットの部屋
乳母とはしゃぐジュリエット。まだまだ子供な無邪気さに溢れています。
婚約者?なぁに、それ?
ステパネクのパリスは、日曜日にご本人に「ぼくの考えでは、パリスは本当にジュリエットのことが好きだったんだと思うな」と印象通りの返答をもらったこともあり、優しさエレガントさがまぶしいほど。
スラリとした長身で、白い衣装がいかにも王子様然としています。
よくある金持ちの気取りやパリスとは全く違います。
ギャリーの父親も、なんだか良いお父さん。
封建君主の絶対的な家長として命令を下す・・というよりは、寧ろ愛娘と未来の婿に気を使っている様子。
お互いに気に入っているようだ、良かった、という目線が温かい。
にっこりと近づくパリスに気後れするのと恥ずかしいのでジュリエットはす~っと後ずさりするようにパドブレ(お見事!)で逃げるのですが、これがなんともユーモラス。
ひとつひとつの動きに少女ジュリエットのフレッシュな可愛らしさが匂い立つようです。
でも、このとき、好意さえ感じていたパリスに、3幕でロミオの妻になった後は完全に心を閉ざして同じようにパドブレで逃げる・・・同じ動きで真逆の心情とシチュエーションを描く構成が巧みです。
このあと、乳母に、胸に手を当てて御覧なさい、もう大人の女性になろうとしているのですよ、という気づきで驚く場面が続きますが、これもまた、2幕のバルコニーのロミオとのシーンにつながり・・・
色々な伏線があるシーンです。
第3場 キャピュレット家入口
お客を迎えるのは今夜はティボルトではなくキャピュレット公御自らのお出ましです。
なぜ?でもギャリーファンとしてはたくさん見られて嬉しい
ここに麗しのロザラインを追いかけて忍び込んでやろうとするロミオたち3人。
ここで、3人揃い踏みの踊りがあるのですが、この場面、3人ともステキ。イキイキとした躍動感にあふれ、観ていてワクワクします。
第4場 舞踏会場
重厚感溢れる有名なテーマ音楽に乗っての貴族の踊り。
上手からティボルト、キャピュレット公、パリスが前面に出て、豪華な衣装を身にまとった貴族たちと宮廷の踊りを典雅に重々しく踊ります。
は~、やっぱりステキ!
このシーンも大好き。
ロミオたちもその場にいます。
ジュリエットが登場。
まるで眠りの森の美女のオーロラ姫16歳の誕生日、の登場シーンのように、そこだけパッと明るくスポットライトが当たったような存在感。
可憐で初々しい。
パリスと二人でセンターで踊りますが、もう、この場面だけでうっとり。
可愛らしくはにかむジュリエットと優しく微笑みをたたえて見つめるパリスとの、とても品のある美しいパ・ド・ドゥ。
マンドリンを膝にのせてつま弾くジュリエット。少女たち6人がバロック調の音楽に合わせて踊りますが、そこにロミオが乱入します。驚きながらも、見事な踊りにそのまま踊らせる人々。
ジュリエットがお返しにソロを踊ります。
音楽にも踊りにも才能がある、イキイキとした魅力たっぷりの少女ジュリエット。
パリスとジュリエットの間にロミオが乱入し、空気がこわばります。
そこにすかさず、マキューシオが踊り始め、その場の空気を変えて自分の方に注目を集めようとします。
うーん、ここでのマキューシオには何かが下りていました。
日曜日とは別人かと思うほど・・・。驚くほどのスピード感と小気味よさ。素晴らしかったです。
続きの間にひとり佇むジュリエット。そこに入ってくるロミオ。
びっくりして逃げ出そうをする とっさの反応が如何にも少女らしくてナチュラルですね。
あの人だわ!乳母を下がらせて、一瞬二人きりになりますが、そこにキャピュレット公とパリスが現れます。
ご一緒に、と誘うパリスにお断り。
とまどうパリスにパパがフォローを入れながら立ち去ります。
ようやく二人きりに。仮面を取るロミオ。見つめ合う二人。
しかし、ここで天敵登場。
ティボルトです。片手で顔を隠すロミオ。その周りを怪しみながらグルグルとつけまわすティボルト。
怪しい奴、顔を見せろ。手を払いのけられ、もう隠れられません。
おまえか・・・!失せろモンタギューめ!!
出口を指し示します。
そこにキャピュレット公が登場。
険悪な状況を見てとって、大人の対応。ティボルトを収め、ロミオを客として改めて迎えるジェスチャーを。
それに応えて、いとまごいの挨拶をするロミオたち。
第5場 キャピュレット家の外
第6場 ジュリエットの部屋のバルコニー
ジュリエットがバルコニーに姿を現します。
今日は色々なことがあったけど・・・あの人・・・胸一杯になって星空を見上げるジュリエット。
もうこの都さんの恋する表情を見ただけで涙がでそう。
ロミオがマントを翻して現れます。
舞台の上手からジュリエットの姿を認め、そして下手に走ってまた見つめます。
眼と眼が合い、ジュリエットが外階段を中庭に下りてきます。
マントを置いて、ジュリエットを迎えるロミオ。
手に手を取り、そしてジュリエットが彼の手を、胸に導いて気持ちを伝えます。
ロミオのソロ。歓喜に満ちあふれた踊り。
ジュリエットのソロ。
今日はリフトもバッチリです。
精一杯高々と掲げられた都さんの空中ポーズの美しいこと!
そっと口づけをかわし、階段を駆け上るジュリエット。
再び、中庭のロミオを見やると、二人ともいても立っていられなくなり、
バルコニーの上と下でお互いに向かって手を伸ばします・・・。
<第2幕>
第一場 市場
町の喧噪。娼婦の一団と一般人の女性たちとがいがみ合っています。
そこにロミオ登場。いつにも増して夢見心地。
ジュリエットの乳母が登場。ロミオを捜している模様。
3人は乳母をからかいます。
ロミオがキスするとパタンと倒れたり、なかなかコミカルな乳母の反応。
乳母から受け取ったのはジュリエットからのラブレター。
この日の高速シェネも凄かった!
恋する男は手がつけられませんね。乳母の回りをシェネで一周、場内大喝采!
第2場 教会
神父はアラステア・マリオット。
モンタギュー公と2役です。
恋する若者の実行力を侮ってはいけませんね。素早い展開。
対立する両家の和解の助けになるのでは・・との判断で協力者となった神父による小さな結婚式。
神に誓う二人の真剣な表情に、これからの試練を思われて・・・。ちょっと切ない気分です。
第3場 広場
マンドリンダンス。ソリストはホセ・マルティン。
「リーズの結婚」ではアラン役が印象的だった彼、ここではテクニシャンの一面を見せて
ピルエットと豪快なジャンプで達者なテクニックを披露してくれました。
ティボルト登場。
楽しい雰囲気だったのに、空気が重く変わります。
マキューシオが挑発します。
ティボルトは教会から戻ってきたロミオをご指名。
胸に剣を突き付けてさぁ、と促しますが、ロミオはそんな気分ではありません。
手でその剣先をすっとはずしてしまいます。
皆がガッカリ。
じゃあ、代わりに俺様が相手だぞ、とマキューシオが剣を構えます。
ブライアン・マロニーここでもキレキレの剣さばき。
素晴らしい手首の返し技。
一度は勝負がついたのに、おさまらないティボルト。
たたき落とされた剣を手に背を向けたマキューシオの方に進みます。
それとは知らぬマキューシオが一歩後ずさりしたときに剣が脇腹を貫きます。
一瞬何が起こったのか双方気がつきません。
平気なふうを装うマキューシオ。しかし身体の自由がきかなくなり死を悟ります。
平気な顔のマキューシオに落ち着いた風情のティボルト。しかし、剣先を確かめると・・・。
刺さっている?
マキューシオはロミオとティボルトを指さしてこと切れます。続きは二人で、とのご指名か。
応えるように、ティボルトは剣でロミオを指し示します。
マキューシオの亡骸に取りすがり泣くロミオ。
突如、胸に湧きおこる感情がロミオに剣を取らせます。
その感情のまま激しく攻め立てて、間もなく、ティボルトはロミオの手にかかって命を落とします。
そんなつもりではなかったのに・・・
がっくりと膝をつくロミオ、ベンヴォーリオがロミオを抱きかかえます。
広場の中央で激しく嘆くキャピュレット夫人。ロミオは義理の母に許しを請いますが彼女は聞き入れません。
ベンヴォーリオはロミオをその場から連れ出します。
キャピュレット公が現れ、状況を見てとって驚き、ともに嘆きます。
<第3幕>
第1場 ジュリエットの寝室
夜明け前に立ち去らなくてはならないロミオ。
初夜を過ごしてすぐに別れなくてはならない二人。
一人残されるジュリエット。
そこに間もなく、乳母と両親、そして婚約者パリスがやってきます。
ティボルトの死をキャピュレット夫人の黒いヴェールが示しているものの、この縁談は
予定通り取り運ぼうというお話。
今のジュリエットにとって、夫であるロミオ以外の男性から触れられるのは我慢のできないほど嫌なこと。
昨日まではどうということもなかったパリスの手へのキスに飛びのき、肩に触れる手にビクッとし・・・。
パドブレで後ずさり。
優しくする全ての動作にジュリエットは過敏に嫌悪の情を示します。
傷ついた表情のパリス。
わがままと気まぐれもイイ加減にしなさい!と癇癪玉を破裂させるキャピュレット公。
従兄を殺した敵の家の息子と結婚したのよ、とも言えず、どうすることもできないジュリエット。
追い詰められて一人ぼんやりとベッドの上で絶望しているジュリエット。
最初は泣いているのですが、次第にロミオとの未来に向けて強くならなくては、と気持ちを切り替えて。
そうだわ、と笑顔になり、神父に相談するために走りだします。
夜明け前の薄暗いライトから一転して朝の光が差すような都さんの表情の変化がすばらしい。
第2場 教会
神父から銀の薬入れを手渡されるジュリエット。
第3場 寝室
戻ってすぐに薬を枕の下に隠したら、すぐにまたパパ達がやってきます。
ジュリエットは先程厳しく叱責された父親の手をすり抜けて母親にすがります。
お母様、助けて!
頭にきたキャピュレット公。
パリスもわけもわからず拒否されてちょっと意固地になってしまいます。
二人のパ・ド・ドゥ。
あの舞踏会の冒頭での完全なる調和と対極なこのPDD.
ジュリエットをねじ伏せているようになってしまっているパリス。
完全に顔をそむけていやいや踊るジュリエット、ともに哀れなり・・。
ジュリエットはこの結婚に承諾する意思を示します。
ホッとするキャピュレット公。パリスも笑顔で手にキスをしようとすると、またもやサッと手を引かれ・・・
ジュリエットのわがままにまたもやカッとしつつも、とまどうパリスをなだめて立ち去るキャピュレット公。
女性たちも続きます。
一人になったジュリエット。
意を決して薬を飲みます。苦しい・・・。
意識が遠のく前に、ベッドに戻って横たわり、じきに薬がまわります。
花束を持ってさんざめきながら、6人のお友達が花嫁の付き添いとして現れます。
おめでとう!花嫁さんはお寝坊ね!起きて、ジュリエット!
・・・死んでいる?!
乳母とパパもお友達に続いてやってきますが、どうも皆の様子がおかしい。
ジュリエットが死んでいる!妻を呼ぶキャピュレット公。
ギャリーの泣き顔に胸がふたがれます。
第4場 キャピュレット家の墓室
暗い石室。家族が付き添い、最後に一人残って、パリスは夭折した婚約者のために祈り、十字を切ります。
伝え聞いて忍び込んできたロミオが、パリスを刺し、なにが起こったのかわからないままに息を引き取ります。
あぁ、なんて悲しい人生なのでしょうか、パリス・・・。
気の毒なパリスを一顧だにせず、ロミオはジュリエットの亡骸に涙して、墓石から降ろしてその亡骸を抱きつつ、ともに踊ろうと試みます。涙のパ・ド・ドゥ。
ふたりで生命のキラメキを確かめあうように踊ったそれまでのシーンがだぶり、必死のロミオと力なくだらりと垂れるジュリエットの腕と身体がなんとも残酷な・・・。
悲しみをいやがうえにも増すシーンです。
どんなに踊っても、もうジュリエットは蘇らない。
死後の世界でまた出会うしかない。
意を決してロミオはいざという時のために懐にしていた毒薬を飲み干し、こと切れます。
直後にジュリエットが眼を覚まします。
あぁ、あと10秒早ければ・・・と思ってしまいます。
上手に倒れたパリスを見て、死んでいる・・・?と思いながら次に逆側の傍らを見やるとそこにはロミオが!!
もうパリスのことは頭から消えています。
でもロミオは・・・死んでいる!
声にならない鋭い叫び。
瞬きも出来ずに見つめるわたくしも思わずハッと心がえぐられるように感じました。
それだけ激しいジュリエットの驚きと嘆きがその一瞬に伝わってきたのです。
パリスの近くにく転がっている短剣を手に、ひと思いにみぞおちに突き立てるジュリエット。
ロミオの近くで・・・と虫の息で墓石に戻り、ロミオに手を伸ばして触れ、安心したようにフッと命の炎が消えていきます・・・。
終わりました。
会場から割れんばかりの拍手が。
そのまま、カーテンコールが延々と15分ほど、だったでしょうか。
惜しみない拍手が送られ、
最後、幕が上がり、そこには大きな「SAYONARA」の横断幕が。
金色のコンフェッティが果断なく降り注ぎ、背後には出番を終えて私服になった人も多いダンサーたちとスタッフが。
挨拶を続ける都さんとスティーブン。
そこに次々と現れて舞台袖に並ぶのは、モニカ・メイソン芸術監督をはじめとするロイヤルの重鎮たち、そしてジョナサン・コープをはじめとするパートナーを務めた名ダンサーたち!
そう、それは、桟敷席のファンから降り注ぐフラワーシャワーこそありませんが、YouTubeで観たあのコヴェントガーデンでのフェアウェル公演の再現のよう!
降り注ぐ金のコンフェッティがスティーブンの頭に積り、彼が都さんにお辞儀をすると同時にミニ紙吹雪状態に
都さんのフェアウェル公演を守護する天使のようでした・・・
音楽、一つ一つの場面でのそれぞれのソリストたちの演技の濃さ、そして何より、この日が引退公演とは信じられない都さんの初々しいジュリエット!
このロイヤル・バレエという濃密な完成度の高い舞台の中央で、伸び伸びと演技する都さんを観られるのはこれが最後か・・と思うと泣けてきますが、
これからもダンサーとしての活躍は続けていただける、というのが何よりありがたいこと。
それにしてもこの日の公演をじっくりと観ることの出来た幸せに感謝します・・・
Bravi! Royal Balletよ永遠に。
都さん、素晴らしい舞台をありがとうございました!