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お着物Enjoy生活からバレエ・オペラ・宝塚etcの観劇日記に...

「アストレとセラドン」ロメール最後の作品

2009-03-09 01:31:32 | FILM
映画の記事が続きます

先月、銀座テアトルシネマで上映、順次全国公開、のフランス映画、
エリック・ロメールの「我が至上の愛~アストレとセラドン」Les Amour d'Astree et de Celadon 
を観たのは1月29日。
スルーするには惜しい映画でしたので、ここでちょっと振り返っておきます



ヌーヴェル・バーグ世代の監督の中でも「カイエ・デュ・シネマ」の創刊者・初代編集長を務めたロメールは知性派として知られる存在。
みずみずしい映像感覚と愛についての知的な会話が楽しめる、いかにも、なフランス映画を撮り続けてきた1920年生まれの彼は、今回の作品で映画監督としてのキャリアに幕を下ろすそう。
「海辺のポ-リーヌ(1983)」「緑の光線(1986)」「夏物語(1996)」「木と市長と文化会館、または7つの偶然(1992)」「パリのランデブー(1995)」など・・・恋愛映画、というよりは恋愛論映画の巨匠という独自の路線は万人に受け入れられるものとは言い難かったかもしれませんが、ずっと気になる作家でわたくしはフォローし続けてきましたが・・・。

今回の作品の原作は、17世紀文学サロン、特にパリの貴婦人たちの間で大流行したというオノレ・デュルフェの大河ロマン『アストレ』(Astrée)。
映画の中で主人公アストレについて、両親が村の有力者で、その必要はないのに心の平穏のために羊飼いをしている、という設定がでてきますが、当時はアストレのように、羊飼いでありながらも最高級の宮廷人のように話すというのが理想とされたそうです。
・・・といえばマリー・アントワネットの”プチ・トリアノン”の田園趣味が髣髴とされますが・・・。
17世紀のサロン作家が描く5世紀のローマ時代のガリア地方(旧フランス)での恋のおはなし。

ロメールがこの小説を改めて読み返して、自分が今まで撮り続けてきたテーマ「貞節、忠誠(フィデリテ)」と原作のテーマが同じであること、そして原作の会話の意外な現代性と美しさにを発見して映画化を決意。

理想化された田園風景と神話の中の人物のような登場人物たち、詩的な会話、恋心のすれ違い、恋のさや当て、が当時のロワール地方を思わせるオーベルニュ地方の豊かな自然の中、美しい画像と古楽の調べとともに展開されていきます。



羊飼いのアストレとセラドンは恋人どおし。
ところがアストレは誤解から、セラドンが浮気をしたと思い込み、「私の前にもう二度と現れないで欲しい」と拒絶。
絶望したセラドンは入水自殺を図るが、城に住むニンフ(精霊)に助けられ、死を逃れていた―。
容姿端麗な彼は城主である貴婦人に気に入られ、村へ戻ることを許されない。
ドルイド教の僧侶の姪で城主に仕えるレオニードの計らいで脱出。
森の庵でアストレを想う詩を綴るセラドンを不憫に思ったレオニードとドルイド僧が、アストレに会う機会を彼に与えようとするが―。
周囲の女性を虜にする美貌の持主でありながら一途なセラドンに、モデル出身の新人アンディー・ジレ。そして、そんな彼を魅了する魅力あふれるアストレには、ベルギーの大作家マルグリット・ユルスナールを大叔母に持つミュージシャンのステファニー・クレイヤンクールが抜擢。
ともに演技は初めて、としつつも流れるようなロメールの演出に、優雅な時代の美男美女として嵌まっています。

それにしてもセラドン、頑固で一途すぎ。
そんな彼を放っておけない周囲の協力がまた涙ぐましいのですが、元来青春とは頑迷なものなのかも・・・そしてそれを知る大人たちにとってその姿はまぶしく、かつての自分を想って応援せざるを得ない気持ちにさせられるのかも・・・と思わされました。

精霊の女城主ガラテ様(上の画像セラドンを挟んで左)のローマ衣装の着こなし、セラドンへの身勝手な愛情、優雅な立ち居振る舞いには惚れ惚れします・・・

観た後、しばし、心は理想化された5世紀のガリア地方へ飛び、古楽の調べが耳に残ります・・・
突っ込みどころは色々ありますが、蓮見重彦先生も
「爆笑をこらえてこの艶笑喜劇(21世紀のルビッチ!)を楽しむには映画のいい加減さに対するまともな感性を備えていればそれで充分だ」とおっしゃっていることですし・・・(笑)
マリー・アントワネットの連想がでたところで池田理代子さんの評も引用してバランスをとっておきましょう。
「純愛とはかくもエロティシズムに満ちたものだったのかと感動させられる。
オルフェスとエウリディーケの神話を見るようだった」
ともに納得、です。


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4 コメント

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Unknown (chelsea)
2009-03-09 11:05:26
mariaさん
テアトルに行った時、美しそう~とても気になった映画でした。
その後忘れていましたが・・・
BSでそのうち夜中にでも放送してくれそうかな・・・待ってみます(^^
ロメール監督は引退なのですか・・・お歳ですしね・・・

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Unknown (maria)
2009-03-10 02:59:48
chelseaさん

ロメール監督のインタビューを見ると、アイデアとかイメージはどんどん今でも湧くのだけれども撮影に身体がついていかない、というようなことをおっしゃっていました。
お年を召されるほどに、若くて頭が良くて感受性の鋭いパリジェンヌの恋模様をみずみずしく等身大にリアルに描かれるのが驚異だなぁと思っていたのですが、今回も(いや、今回は特別に?!)本当に美しく、でも時折にやりとさせられるツボもあるロメール節は健在で、とてもこれで最後とは思えない余力を残した(笑)作品でした。
そうですね、BSあたりで放映されるかも・・・そうしたらわたくしももう1度見ます!

今回、一緒に観た友人もアストレワールドに嵌まってくれて、先日、フランスのアマゾンに発注した今回の映画化で使われた部分を抜粋した「Astree」本を見せてくれました。
フランス語が堪能なその友人によると、セラドンが女装して裏声で話すシーンがあるのですが、その声を編集したのが、フランスの現代音楽(クラシックの現代音楽、です)研究所として知る人ぞ知るインスティテュートで、最後のクレジットに出ていたとかで・・・
そんなところもロメール監督らしいですよね(^^;)

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Unknown (doo-)
2009-03-21 12:14:44
mariaさん ご無沙汰していました~{ダッシュ}{ルンルン}
先日 最初この記事を読んだ時から 気になっていたのですが 
2度読みすると ことさら拍車が掛かりますねぇ{ドキドキ}
「アストレとセラドン」のストーリーは いかにもフランス人っぽい考え方の
ストーリーだわ~{トリコロール}
ロメール氏の他の作品も mariaさんのオススメとなると 
どれもこれも気になってしまいます。。。{ラブラブ}
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Unknown (maria)
2009-03-21 21:49:43
doo-さん
こんばんは!
ふふ、ロメ-ル監督の映画に流れるフランス人気質の数々は
きっとdoo-さんもどこかで肌で感じていらっしゃることでは?と思います{ラブラブ}
今回は美男美女の古典劇というテーマ設定で風雅な言葉を散りばめていましたが(きっと原作に忠実)いつもはもっとリアルなパリジェンヌの恋物語です。
パリジェンヌの恋物語・・・という言葉から日本人が想像するOlive少女的な感じとは
やはりちょっと異なる、理屈っぽくて感受性の強い少女たち、女性たちと
あまりVisual的にはステキでない(失礼)知的な男性たちとの
丁々発止のやり取りにニヤリとさせられることが多く・・・
どなたにでも、とは申し上げにくいのですが、フランス人を判っていらっしゃる方が
ご覧になると楽しめると思いますわ{YES}
機会がありましたら是非~{止まるひよこ}
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