第4部。
ここでついに殿が・・とソワソワ(笑)
期待値MAX.ドキドキしながら待っていましたのでその前の3演目とその後の記憶が
かなり飛んでいます(ってロミジュリ以外全てってこと?)がご容赦を
◆「パリの炎」
シムキン・コチェトコワペアがBプロでセンセーショナルな盛り上がりを見せたこの演目。
なぜによりによってバレフェス一の地味な(失礼!)ペアが同じ演目を?
あまりに盛り上がらなかったらお気の毒・・と気をまわしていましたが。
いえいえ、全く違ったアプローチながら、実力者の意地を見せて、良かったですよ~。
純白チュチュのサレンコと、白ブラウス、ライトグレータイツ、サッシュもグレーであえて3色旗カラーは
使わず、のコンヴァリーナ。
衣装同様、テクニックの方も、特別仕様にはしないでシンプルかつ確実に決めてきたコンヴァリーナ。
フェッテからピルエット2回のコンビネーションもきれいに決まり、ジャンプも高く気合は充分。
軽やかで重力お構いなしで飛びまくっていたシムキンくんとはまた違った
大人のダンサーとしてしっかりとしたテクニックを見せてくれて表情も微笑みベース。
ヘンな気負いがなくて感じ良かったです。
サレンコはちょっと特別に気合が入っていましたよ~!
この人の場合、ちょっと一人になると自信なさげなのとバランス重視にしたソロのせいで
流れが冗漫になってしまっていたのが過去の2演目での反省(?)事項かなぁと思うのですが、
今回はわたしだってっと見せ場に対する集中が良い形で締めにつながり、
ラストのフェッテはあの90度ずつ方向を変えつつそれぞれ3回転、という離れ業を
キチッと決めてくれました。
場内、驚愕のおぉ~という声にならない声(笑)。
産休明けで、楽屋口でもベビーカーに赤ちゃんをのせてご登場のサレンコ。
お疲れ様です!
◆「三人姉妹」
ロイヤルですから、Aプロプティパ、Bプロバランシンとくれば、やはりここではマクミランか
アシュトンの演劇バレエははずせないのでしょう。
マクミランの「三人姉妹」。
田舎教師の夫に飽き足らない次女マーシャと、恋人ヴェルシーニン中佐の別れの場です。
くすんだピーチに胸元レース飾りの地味な衣装でキラキラオーラ封印のヌ二ェス。
でもマリアネラはどうみてもロシアの田舎の人妻ではありませんね。
ソアレスのシャープな男らしさは軍人衣装に似合っていましたが、田舎に駐留しそうにないですし(笑)
過去のバレフェスでタマラ・ロホとイナキ・ウルレザーガの2人が妙に場面設定に嵌まっていて
感心した舞台がありましたが・・。
ロホはその持ち前の演劇的才能でもってマーシャになっていたのですが
それまでバレフェス参加ダンサーにあるまじき粗野さで眉をひそめさせていたイニャーキ(笑)が
妙にロシアの田舎の物語にマッチしていて実に感慨深かったのは今でも心に残っています。
なんて思い出に浸っていたら終わっていました。マリアネラ、ごめんなさい・・・
◆「ザ・ピクチャー・オブ・・・」
ルグリの新しいソロ作品。
初演は2008年の東京のホテルでのクリスマス・スペシャル・ディナー・ショー。
こういう劇場空間では初めてご披露されるのかも。
ベジャールバレエ団の花形ダンサーとして活躍されていたパトリック・ド・バナ氏
(ベジャールガラ最終日にお姿をお見かけしましたよ~素敵でした)による振付。
ルグリは自身のソロ作品として「エンジェル」を長年踊ってきましたが、
キャリアが長いのでそろそろ別の作品も・・と周囲も、多分御本人も願ってきたのですが
それに応える新作、ということで楽しみにしておりました。
黒っぽい、よくアルマーニが着ているような、ピッタリと身体に沿った半袖丸首の
TシャツっぽいTOPSに黒のややゆったりとしたパンツ。
無音で始まり、2度聞かれた南国の鳥の叫びかと思われた声は、実は鯨の声だとか。
それからグレゴリオ聖歌のような重厚なアリアが流れます。
パーセルのオペラ「ディドとエアネス」より終幕のアリア「わたしが地に横たわるとき」
にのせて精神性豊かな静謐な世界が展開。
今のルグリ先生に相応しい、重みと品格と内に向かう深さが沁みる作品でとても良かったと思います。
ルグリ先生は今年の5月にパリ・オペラ座のエトワールの定年制度により、引退公演をされました。
来年からはウィーン・オペラ座バレエ団の芸術監督に就任される予定ですが
バレフェス会場で先行発売されていた本「パリオペラ座のマニュエル・ルグリ」でも
ご本人の弁として掲載されているように、コンテンポラリー作品が中心となっていくでしょうが
ダンサーとしてのキャリアに幕を下ろしたわけではない、とのこと。
今後もこの作品に接する機会に恵まれるといいなと思います。
◆「ロミオとジュリエット」
あの「ル・パルク」の振付家、プレルジョカージュ版のロミジュリです。
近未来都市での階級闘争。上流のジュリエットと下層のロミオの許されざる愛、がテーマ。
仮死状態で地下の霊安室、舞台中央の台に脚を客席に向けた方向で横たわるジュリエット=オレリー。
真紅の布?ドレス?をまとって麗しい。
そこに上手から走りこむロミオはぼろぼろの淡いグレーカーキのゆったりとしたランニングシャツに
左右の丈がちょっと違う短めの同じくゆったりとしたワークパンツに黒いソックス。
ジュリエットを発見して揺さぶり、起こそうと試みますがぐったりとした力のない彼女。
身体から朱赤の布をパッと取り除くと、白の短いキュロットペチとホルターネックの背中部分が
3回ほどリボンで編み上げられている小さなTOPSの下着姿に。
どうやら、この赤い布が仮死状態を作るための魔法の布、らしいのですが、
すぐには目覚めることのない彼女にロミオは次第に絶望的な気持ちになります。
慟哭しながら、彼女の指を口でくわえて胸の上で交差させるロミオ。
激しいパッションと深い悲しみが伝わるプレルジョカージュの舞踊言語をここまでナチュラルに
こなすダンサーも珍しい。
彼女を必死に抱き上げ手前の椅子に座らせて、椅子ごと抱きかかえて大きく揺さぶり
また、だらりと手足を落とす彼女の上にのしかかりますが、目覚めることはありません。
どうして!どうして死んでしまったんだ!!
怒りにも近い強い哀しみで激しく彼女を抱き上げて床に落として転がす・・・
オレリーは終始ぐったりと力ない肉体でしかないのですが、
彼女に向けて全身で語りかけるしかないロミオです。
ふとワークパンツの脇のポケットに手に当るものが・・・ナイフだ。
刃を開いて一度は取り落とすものの、ある決意で、ジュリエットをもとの台の上に戻し、
ナイフを開いて下腹部に当てたロミオはそのまま彼女の腹部にゆっくりと倒れます。
ロミオが事切れてまもなく、ジュリエットは目覚めます。
重いわ・・と眼を落とすと十字に覆いかぶさる彼が。
起きてロミオ、と揺さぶるも、彼はすでに・・・。
ジュリエットの慟哭。
ロミオとまったく同じように床に落とし、椅子に乗せ、荒々しく身体をぶつけ、床に転がり・・・
必死のジュリエットの息遣いが感じられます。
ローランはエレガントな容姿と完璧に滑らかな動きの中にも
どこかに情熱の炎に突き動かされているような官能的な血を、常にかすかに感じさせるダンサーですが
オレリーも同様な資質を持っているようですね。
この2人の作り出す世界は完璧にヴィジョンがシンクロしていて、
たとえガラでの一幕でも驚くほど濃密なドラマを展開させる、ということは
過去のルグリガラでの「ル・パルク」の解放のPDDでも証明済。
久し振りに見て、2人の作り出す世界に引きずり込まれました。
通常の版でのロミジュリですと、2人の悲劇は物語に折込済みのものとして
比較的あっさりと悲劇の手順を踏んで終わるのですが、このプレルジョカージュ版では
哀しみそのものが若い2人の大いなる悲劇の一幕としてクローズアップされており、
ここだけでこれだけ濃密なら全幕ではいかなるものになってしまうのだろう・・・と
鳥肌が立ちました。
ジュリエットがロミオの残したナイフを見つけ、手首に当てて・・・
ロミオの上にくず折れます。
涙なしには観られませんが、涙してしまうと見られないので、もう必死でした(;;)
全てを出し尽くした晴れやかな表情のイレール、カーテンコールではオレリーにお辞儀、
膝を折って彼女に投げキス。
2回目のカーテンコールでは彼女の肩を抱いてともに客席にお辞儀。
当然3回のカーテンコールでしたが、なかなか現実の世界にわたくしは戻れず・・・
相当ボーっとしてしまいました。
◆「春の声」
打って変わってヨハン・シュトラウスのワルツの調べにのって、スッと立って脚をリフトされながら
アリーナ登場。手からハラハラとこぼれ落ちる花びらのようなパステル色の紙ふぶきが
花輪を頭に載せたコジョカルを春の女神にしています。
軽やかに舞い踊るアリーナとそれを嬉しげに見つめ、しっかりと頼れるサポートをするコボー。
今回、この2人は一貫してこの路線で見せてくれましたが、本当に愛と幸せの化身のようで
しっかりと幸福感を舞台から受け取らせていただきました!
・・・が、いかんせん、他の世界に行ったままで観ていましたので
この程度の感想でごめんなさい!
◆「ドン・キホーテ」
ある意味、一瞬にして現実世界に引き戻された演目、です(爆)
黒・金・白のゴージャスかつ重厚な衣装のマッカテリに、ローズ赤から白へのグラデで
染め上げた特注?の大きめチュチュに村娘使用の赤のコルセットベストに
小さなパフスリーブにもちょっと赤グラデが入った白いペザントブラウス。
ヘッドドレスと対角線上のチュチュのウエスト近くに配した薔薇のコサージュも含め
大変可愛らしい衣装ですが、2人のバランスは??
という衣装どおりのパフォーマンス。
マッカテリとのコンビネーションに問題があったのか、大幅に内容を変えてきました。
キトリの見せ場はバランスに特化。10秒のアティテュードを2度見せて拍手喝采。
これで、一応バレフェスのトリを務める証明は終了、というわけではないでしょうが、
その後はやたらと扇や足先の小技で引き伸ばして、それに合わせた音楽が
とても奇妙なものになってしまっていたのは残念。
普段、高岸さんとだと問題なくクリアしているフィッシュのポーズを始め、
2人のコンビネーションを必要とする部分がさっくりと省略されていましたが、
きっと間に合わなかったので危険を回避したのでしょう。
今までの不調を背負ってガラのトリという大任をよくぞ乗り切ってくれたと思います。
そこまで彼女に負わせなくても・・・と企画に疑問をぶつけたくはありますが。