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お着物Enjoy生活からバレエ・オペラ・宝塚etcの観劇日記に...

ミラノ スカラ座公演 「ドン・カルロ」 ①

2009-09-08 11:17:40 | OPERA
今日は、スカラ座の2009年来日公演、もう一つの演目、
「ドン・カルロ」を観に行きます。

東京文化会館で、モダン演出。ヴェルディの心理劇を最高の歌手で・・・。





ミラノ・スカラ座 2009年日本公演 9月8日(火)

「ドン・カルロ」全4幕(イタリア語版)

指揮:ダニエレ・ガッティ

演出・舞台装置:シュテファン・ブラウンシュヴァイク
衣裳:ティボー・ファン・クレーネンブロック
照明:マリオン・ヒューレット
合唱指揮:ブルーノ・カゾーニ

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フィリッポ二世:ルネ・パーペ

ドン・カルロ:ラモン・ヴァルガス

ロドリーゴ:ダリボール・イェニス

宗教裁判長:アナトーリ・コチェルガ

修道士:ガボール・ブレッツ

エリザベッタ:バルバラ・フリットリ

エボリ公女:ドローラ・ザージック

テバルト:カルラ・ディ・チェンソ

レルマ伯爵:クリスティアーノ・クレモニーニ

国王の布告者:カルロ・ボージ

天の声:イレーナ・ベスパロヴァイテ

フランドルの6人の使者:
フィリッポ・ベットスキ
アレッサンドロ・パリャーガ
エルネスト・パナリエッロ
ステファノ・リナルディ・ミリアーニ
アレッサンドロ・スピーナ
ルチアーノ・バティニッチ


ミラノ・スカラ座管弦楽団 /ミラノ・スカラ座合唱団


◆上演時間◆

【第1幕】 18:00 - 19:15
休憩 30分
【第2幕】 19:45 - 20:25
休憩 30分
【第3幕】 20:55 - 22:00
-舞台転換-
【第4幕】 22:05 - 22:25


※本日宗教裁判長役に予定されていたサミュエル・ラミーは体調不良により自ら降板を申し出てきました。代わりまして本日はアナトーリ・コチェルガが出演いたします。何卒ご了承のほどお願いいたします

レイミーは降板・・・ということで大変残念ですが、
なんといってもルネ・パーペのフィリッポ2世が楽しみです。
あと、バルバラ・フリットリのエリザべッタにも期待。

ドローラ・ザージックはエボリ公女を当たり役にしているそうなので、
こちらは初見ですが、期待。
6時からということでこれから暫し、心身を休めて備えるつもりです。



ミラノ スカラ座公演 「アイーダ」 ⑤

2009-09-08 10:21:54 | OPERA
第4幕

裁判の前に、ラダメスを呼び出して説得を試みるアムネリス。
アイーダを愛している。言い訳はしない。刑に服する。
きっぱりとしたラダメスを脅しすかし愛を訴えるアムネリスは
恋する女の悲しさ弱さ必死な様を存分に見せて見事。
あなたの愛が一番おそろしい、と切り捨てられても尚、愛する心はどうにもならない。

「アイーダ」という作品は、「ロミオとジュリエット」の如く、敵味方に分かれた恋人の悲劇、という
見方がされがちですが、お互い苦悩の中にありながら、真っ直ぐにお互いの愛に生きる
主人公二人に比べ、すべてを手にしたファラオの娘であるのに愛する男に選ばれず、
一人生き延び、権力者として立たなくてはならない
孤独なアムネリスこそがこの物語の影の主役なのかも・・・そう思わせる存在感。

裁判が始まり、祖国を裏切ったラダメスに、生きながらにして埋葬する、という判決が。
必死に祭司長に取りすがり、訴え、最後は呪うアムネリス。
声質の柔らかさゆえ呪いに効力がありそうに思えないのがちょっぴり残念。
ここで権力者の娘としての強さが出るともっと良いのに・・と思わないでも
ありませんでしたが、実際に神権政治で神官の権力が王家に勝る部分もあった
古代エジプトの時代背景を思えば故無きにもあらず・・でしょうか。



墓に入ると、そこには逃げおおせたかと心配していたアイーダが。
父王は戦死。彼女はラダメスの裁判を聞きつけてともに死のうと墓所に忍んでいたのです。
天国への扉が・・と、アイーダの声はすでにこの世のものとは思われない静謐さ。

墓の上では一心に祈るアムネリスと巫女たちの慰霊の歌が・・・。


素晴らしい舞台でした。

何度も続くカーテンコール。
主役級のソリストたち、(アクーメンは舞台の上で演じたバレリーナと影で歌っていた歌手の
両方が出ていました)が何度か出た後、舞台に勢ぞろいしたオーケストラ。
一人ひとりの顔が、初日の成功に輝いていたのが印象に残りました。

更に何度かのカーテンコールの最後にバレンボイム氏が。
これで最後かと思いきや突如幕が上がると、こんな光景が。



スカラ座日本公演通算100回目に当る、ということでの記念式典?
鏡開きをスカラ座支配人、NBS会長佐々木氏などで行い、皆様で升の日本酒で乾杯されていました。

ちなみに、この日のNHKホール公演にはカメラが入っていましたが、
11月20日(金)NHK教育テレビの「芸術劇場」の枠で放映されるそうです。







ミラノ スカラ座公演 「アイーダ」 ④

2009-09-08 09:42:14 | OPERA
第3幕。
凱旋の場の煌びやかさとは打って変わって夜のテーベ川のほとりに巫女たちが・・・。
アクーメンはロイヤルブルーの衣装に身を包み、誘われるのは結婚式前夜の祈りの行に入るアムネリス。
「祈りましょう、彼の心をわたくしに、と・・・」
アムネリスの一途さ。
グバノヴァの柔らかな声で歌われると高慢な王女のはずなのに恋する乙女の切なさが心に響きます。



そこに現れたのは、ラダメスとの逢引に呼び出されたアイーダ。
物思いに沈み、別れを告げられることを覚悟して死を選ぶ決意です。
心残りは美しいふるさとの自然をもう目にすることができないこと・・・
とても美しいアリアが夜の帳にしめやかに流れます。

お父様!
人質のアモナズロがどうやってか、どうしてそれと知ったのか、この場に現れ娘に告げます。
自軍が反撃の準備をしている。エジプト軍の進路をスパイするように、と。
・・・できません。
愛する男の妻としてふるさとに帰ることが出来るのだぞ、と甘い言葉で娘を説得、
たたみかけて、母親の亡霊を持ち出し今度は裏切りモノめと罵倒。
もとより強い意志と王の威厳を持つアモナズロのアメとムチについにアイーダは折れてしまいます。

ラダメスだ!わかっているな、と姿を隠すアモナズロ。
「やっと会えたね、僕のアイーダ」
この男、状況がわかっているのかいないのか・・・とことん楽天的なヴィジョンを描きます。
次の戦でも武勲をたてれば、きっと僕の望みを王様にきいて貰えるさ。
嫉妬にかられたアムネリスにわたしと父は殺されます・・・。
アイーダはともに逃げようと誘います。
まさにこれから武功をたてんと張り切る男の心を動かせるのか・・・
緑の草原が二人の家、星空を見上げて・・・花の香りが漂う中を手を取り合って行きましょう・・・
アイーダのなまめかしい誘惑が武人の心をとろかします。
天上の音楽。美しい幻想に現実ははるか彼方に追いやられて・・・素晴らしい二重唱。
そう、この幕は誘惑と説得の章。
いや、それでもこの期に及んで戦線離脱とは・・・あなたわたしを愛していないのね!
女の切り札に抗えないラダメス。軍のルートも明かしてしまいます。

聴いたぞ!!
アモナズロ登場。王と名乗る彼に自分のしたことがわかり青ざめるラダメス。
そこに祈りを終えたアムネリスが。
憲兵、祭典長が駆けつけるときには二人を逃したラダメスは縄をかけようとする憲兵を跳ね除けて
自ら先頭に立って裁きを受けに赴きます。



ミラノ スカラ座公演 「アイーダ」 ③ 

2009-09-07 02:46:39 | OPERA
アイーダ、第1幕2場は、メンフィスのウルカヌス神殿。
フタの神に祈祷する巫女たち。
ちょっとエリザベス・テイラーのような面影のある美しい巫女長が
ジュディ・オングの「魅せられて」の衣装に似た黒い薄物の衣装をまとい、
神秘的な動作で聖的な雰囲気を盛り上げます。
この巫女の長は、演出のゼフィレッリの創作で、彼は「アクーメン」と名づけ、
主要人物に天上のエネルギーを注ぐ役割を持たせたそう。
聖剣がラダメスに手渡され、祭司長ランフィスが彼にエジプトの運命を託します。
神秘的でエキゾチックな音楽に彩られた幻想的な場面。



第2幕の1場はアムネリスのブドワール。
エジプト軍の帰還を迎える式典のために身づくろいをするアムネリスとそれを手伝う
たくさんの女奴隷たち・・・。
優雅な贅沢さが薫る、わたくしの大好きな場面なのですが、それもアムネリス役の歌手が
エレガントな美しさを持っていてこそ。貧弱な存在感の女性だと台無しになってしまうので
今回急なキャスト変更があったのを心配していたのですが、代役のエカテリーナ・グバノヴァは
美しい容姿と柔らかな声、確かな演技力で期待に応えてくれました。



大きな写真がなくて残念なのですがこのシーンのインテリアは金とサンドベージュ、
空色に少しのラベンダーで構成されていてとても美しい。
ブルーのぶちのある2頭の動物で飾られた寝台に座るアムネリスのもとにモザイクタイル
(先日アトリエ・モザイコさんで見た作品にそっくり!)のテーブルに準備されたジュエリーが
何人もの奴隷の手を経て渡されて、その一つ一つを身につけていく様を
一人深みのある赤を重ねた衣装でその場から浮いているアイーダが苦悶の表情で眺めます。
挿入される子供奴隷のダンスは東京バレエ学校の生徒さんたち。
結構テクニックを要する振りを達者に踊っていて微笑ましい。
彼らを優しく伴って女奴隷たちが退出すると只二人が残されます。

先日からの懸念を明らかにすべく、術を弄するアムネリス。
あなたのことは妹のように思えるの・・・とスリよりつつ、我が軍は勝利したけれどもその長を失った、
と言って顔色を伺います。思わず悲嘆にくれるアイーダ。
嘘よ、彼は生きているわ。
喜びに打たれるアイーダ。
間違いないわ。確信したアムネリスの恋敵宣言に思わず望むところよと挑戦的な王女としての対立を
垣間見せ、すぐに我に返って恭順の意を・・・
心猛ったアムネリスは勝利の凱旋パレードの場に立ち会うように傷心のアイーダに無理強いします。
女の対立。



そして・・・。
第2幕第2場 テーベの城門。

アイーダ・トランペットの輝かしい響き。有名な「凱旋行進曲」ですね。
悠然として高らかな金管の美しさにさすがスカラ、と思うとともに、
舞台上で繰り広げられる豪華な凱旋シーンの目くるめく絵巻に心を奪われます。

きれいに側面を強調した動きが統制されていて、行列の一人ひとりがアイーダの世界の
人物になりきっている様子が素晴らしい。
アクーメンはこの場では同じデザインの赤い衣装で、先陣を切って登場します。
王、そして輿に乗ってアムネリスが。女奴隷とアイーダを従えています。

ここで今の言葉ではありませんが所謂「土人の踊り」祝祭のダンスをスカラ座バレエ団のソリストが踊ります。
中心となる男女のペアは二人とも手足が長くて伸びやかな筋肉が美しい。
男性はアンドレア・ヴォルピンテスタ。
女性はまるで伝説のジョゼフィン・ベーカーのような、プリンシパル、サブリナ・ブラッツォ。
褐色に塗った肌と金色の刷毛目が効果的なハイライトでボディペインティングを施していて
なんとも魅力的です。
こういうオペラに挿入されるバレエシーンはおざなりなことが多いのですが、
今回はプリンシパルクラスまで参加していて、振り付けも難易度の高く凝ったもので
思わず振付をチェックしてみたら、なんとボリショイの元スターダンサーで
「白鳥の湖」の演出も手がけたウラジーミル・ワシーリエフ。
道理で男性のソリストの豪快なピルエットなど見せ場が多かったわけだと納得。

最後に登場するのはラダメスと捕虜のエチオピア人たち。
父王を認めて思わず駆け寄るアイーダ。
身分を隠しているアモナズロは娘に口止めをします。



ホアン・ポンスは性急なテンポと多目のブレスがちょっと気になったものの
存在感と威厳、説得力溢れるオーラはピカイチ。
敗軍の捕虜の身でありながら、堂々と明日はわが身と思い給えと慈悲ある処遇を
願い出ます。

勝利の立役者、ラダメスが聖剣をアクーメンに返還。
王から好きな褒美をと言われ、捕虜の自由を願い出ます。
エチオピア人の復讐を恐れたランフィスの進言により、国王が言い渡したのは
捕虜の解放と引き換えの・・・アイーダの父親を指名した人質。
そして王女を娶り国を治めよ、というものでした。

突然にすべての夢が敵った、と喜ぶアムネリス、エジプトの栄光を讃える人々、
雷に打たれたようだと悲痛なアイーダの絶望、復讐を誓うアモナズロ。。。
対立する旋律が溶け合っての心理描写。
ヴェルディの描き分ける各々の立場と激しい感情の交錯する場面は圧巻です。



ミラノ スカラ座公演 「アイーダ」 ②

2009-09-06 23:16:47 | OPERA
Milano Teatro alla Scala
2009日本公演 初日のAIDAを9月4日(金)にNHKホールで観て参りました。

17:00スタート、で平日だと言うのに大入り満員。
最高¥67000、強気の価格設定と散々言われたこの公演。
少しは空席があるのでは?と思っていたのですが、蓋を開けてみるとこの結果。
やはり良いものはオペラファンを惹きつけてしまうのだなぁと自分を棚に上げて感心してしまいした。

ゼフィレッリ演出、といえば新国立劇場の杮落としで話題になりましたし、
わたくしも再演時にその豪華な舞台を楽しみましたが、今回はオケ、指揮者、歌手、合唱、そして凱旋の場のバレエ、すべてがスカラ座、そのまま、ということでやはり感動の大きさ、スケールが違いました。



前奏曲の段階で、すでにあぁ、スカラ座だ・・・と。
とてもキレイな弱音で立ち上がり、徐々にドラマが展開していく、その静かな序盤ですでに気持ちはAIDAの世界に・・・。
そして幕が開いたその場面、古代エジプトの意匠を描いた舞台の隅々まで、作りこまれた完成度の高さ。
全体に吊り下げられた金色のパイプ状のオブジェがかすかにモダンな味を取り入れたこのゼフィレッリの
舞台美術は大好きです。

第1幕と第2幕は間に5分の暗転がありますが続けての上演。
最初に、敵を迎え撃つための軍の統括をダレに任せるか・・
神の啓示を待つ間、警護隊長ラダメスが、その任を自分が負うことが出来ればどんなに幸せか・・・
清々しい熱血漢、ヨハン・ボータの声は、ワーグナーものも得意とするだけあって、
ハリがあって安定感があり、輝かしくてラダメスにピッタリ。
栄光と名誉、そしてアイーダへの愛。
夢を語る彼の声には一点のくもりもありません。



祭司長ランフィスがイシスの女神の神殿で神託を待つ間、エジプト王女アムネリスは
秘かに愛するラダメスと自分の女奴隷アイーダの様子に不審の念を持ちます。

そこに知らせが。美声の伝令が告げる、エチオピア王アモナズロの侵攻。
王は神託に従って、ラダメスを指揮官に任命し、アムネリスが旗を渡します。
「勝ちて帰れ」
光栄な役目に高揚するラダメス、勝利を祈る人々とアムネリス、
そして父王と恋人の一騎打ちと言うありえない事態に苦しむアイーダ。
アイーダ役のヴィオレッタ・ウルマ-ナの声が想像以上に美しく、聴いた瞬間、
今回のアイーダ公演の成功を確信しました。



オーケストラと合唱とラダメスらの声を背にした深みと艶のある透き通った声は
自在に強弱をつけますが、そのしなやかな弱音の力強さ・・・どんな精巧なピアニシモでも
オケに埋没することのない声はアイーダとして理想的。

ラダメスのテノールは大抵立派な体格なのに対し、昨今のアイーダはスリムでセクシーなソプラノが
歌うことも珍しくはありませんが、ウルマーナはボータと丁度よい釣り合いの大きなヒト。
でも絶世の美女の声と輝かしい英雄の声が拮抗して、もうヴィジュアルがどうこうという気にもなりません。
声の力って凄い・・・。