新宿少数民族の声

国際ビジネスに長年携わった経験を活かして世相を論じる。

10月16日 その2 街角の景気診断

2017-10-16 13:53:37 | コラム
景気回復は未だ未だこれからか:

つい先日、天候不順と小雨に不安なものを感じて、勿体ないとは思いつつも短距離をタクシーを利用した。短時間ではあっても折角の機会なので、何時ものように「タクシーの利用者は増えたか?」と尋ねてみた。所謂「街角の景気診断」である。答えなどは尋ねる前から解っていたが、何時も訊いてみるようにしている。私は運転手さんたちの答えは誇張でも何でも何でもなくて、景気回復未だしの実態を表現していると思っているし、可処分所得はそこまで伸びでいないということと解釈している。

そこに丁度、三菱UFJ信託銀行の7~9月期のマーケットレポートを入手したが、景気については下記のような記述があったので引用して紹介しよう。

>引用開始
景気鈍化が懸念される日本:
日本の景気は、世界各国への輸出が増加し、企業生産活動を中心に緩やかな景気回復が続いています。しかし、景気回復の持続性に自信を持てない企業は賃上げへ消極的であり、個人消費の低迷が続いています。特に今年の夏は、北朝鮮情勢への社会不安が高まり、長雨や台風などにより天候も不順であったことから、個人消費活動の冷え込みを背景に日本景気が鈍化へ転じる懸念も出てきています。

これに加えるに我が国の景気とは別な話題だが、アメリカの情勢についての記述も引用しておきたい。

トランプ大統領への政治不安が高まる米国:
米国では支持率が低迷するトランプ大統領への不安が高まりました。支持率回復を目指すトランプ大統領が、公約であった移民規制や保護貿易政策を強行するリスクや、北朝鮮への軍事行動に踏み切るリスクが不安視されています。また、トランプ政権は、主要閣僚の更迭・辞任が相次ぐ混乱状況となっており、大型減税などの経済政策が実現されないとの失望が拡がりました。一方、米国の景気は活発な企業活動や良好な雇用環境に支えられ、安定的な成長を続けています。この中で、米国中央銀行(FRB)は、9月に「量的引き締め政策」の開始を発表しました。
<引用終わる

私はアメリカの知人たちには「アベノミクスはこれから先に成功するのだと思う」と説明するようにしているのだが。

スペックシートの思い出

2017-10-16 13:37:22 | コラム
スペックシートを注意して見ていなかった:

W社に転進した頃に、その業界では世界的な会社との間にかなりの金額が絡むクレームが未解決で残っていた。新参のマネージャーはことの重大さに些か緊張して調べてみると、我が方から提出した当該品のスペックシートに「斯く斯く然々の用途に使用された場合の責任は持てない」と(当然のことに英語で)明記された用途に使われた結果で、事故が生じていたと判明した。

これには私も少なからず悩んでしまった。それは、これから先も長いお付き合いをして頂きたい大手需要家だったので、如何にして穏便に解決するかという問題だったからだ。そこで、思い悩むよりはと割り切って、間に入っていた商社にも納得して貰った上で、購買の担当者に真っ向から「御社の使い方に誤りがあったので、補償については改めてお話しさせていただきたい」と申し出たのだった。

業界の取引においては、確かに当該品のテストはして頂いた上で採用されるのだし、見本紙にスペックシートを添えて提出するのはごく一般的な習慣であろう。だが、スペックシート、それも英語で書かれた紙を入念に読んで検討されるユーザーは珍しいだろうとは思っていた。購買担当者は私が日本の会社の頃からつきあいがあった方なので「そう言われれば、我が社の手落ちになるか」と頭を抱えられてしまった。

そこから先は政治的且つ実務的な解決を図って「これから先も長いお付き合いを」ということで手打ちになった。そして、その購買担当者が述懐されたのは「御社の製品だからとの安心もあったし、テストの段階では申し分なかったので、まさかスペックシートにそういう記載があったとは気が付かなかった」ということだった。実際にはこういうスペックシートを何処の段階でも注意して読んではいないものだということを、私までが認識した事案だった。

神戸製鋼所のデータ改ざん事件のお陰で、このことを思い出したのだが、アメリカの紙パルプ業界の慣習では先ずスペックシートを提示することから始まるようなのだと知った。即ち、私が入社する前には本社側では「使ってはならない」とスペックシートに記載してある用途に使われた以上、メーカーには責任がないと考えていたようだった。

神戸製鋼所の場合はデータを改ざんしたというが、これまでに事故が起きていないというのは如何なる意味なのだろうかと思ってしまう。需要先と合意してあったスペックを下回るような物性値があったのか、何か事故でも起こしそうな品質的な欠陥でもあってそこを隠そうとしたのだろうか。検査する物性値の項目などは相当な数があるはずだから、その中の一つか二つに不具合があった時に何らかの致命的な問題が生じるのだろうか。何を隠そうとして改ざんに及んだのだろうか。部外者には見当も付かない事案だと思う。