新宿少数民族の声

国際ビジネスに長年携わった経験を活かして世相を論じる。

10月16日 その2 消費税率を10%に引き上げ

2018-10-16 16:45:34 | コラム
何故の軽減税率導入か:

安倍総理が19年10月からの10%への引き上げ実行を表明されて以来、各テレビ局が一斉に「10%に引き上げて軽減税率の8%を導入すれば」という特集を組んでいる。私は「軽減税率とは部数がアメリカほどではないにもせよ激減しつつある新聞社の悪足掻きか程度」にしか考えていなかった。だが、未だ細目は決定していないとは言え、テレビ局の努力?のお陰で、あのような複雑且つ不明解な制度を現実に導入すれば、途方もない混乱が生じるだろうと思わせては貰えた。

軽減税率が食べ物にも適用されるとは風の便りには聞いていたが、これを聞いた瞬間に思ったことは「回転寿司と牛丼店ではお持ち帰りが激増して商売が上がったりになりはしないか」という点だった。だが、テレビに登場する専門家の方々のご意見を伺えば、事はそんなに簡単な問題ではなく、小売や食料品店等の現場には収拾不可能な混乱が生じるのは必至だそうだが、それも尤も至極だと思うに至った。

私はかかる軽減税率の細目を考え出したのは財務省の頭脳明晰な官僚の方々だろうとは思うが、彼らが何処まで小売業やそこに至るまでの流通機構の現場の実態をご承知なのかと疑いたくなった。簡単に言えば「末端の商店街で掴み銭を天井から吊した笊に投げ込んでいるような家族経営の魚屋か八百屋等に、10%と8%の仕分けが出来るようなキャッシュレジスターを20万円補助するから設置せよと言うのか」なのである。枝野は「津々浦々の人々にまでクレデイットカードを持てというのか」と喚いていたが、遺憾ながら一理はあると思う。

財務省に「上げよう」と言われれば、官僚以下にしか物事と言うべきか、小売業や末端での商いの実態をご存じとは思えない自民党の議員たちは一も二もなく承知して、来年10月からの引き上げに賛成せざるを得ないのかなどと考えてしまった。もっと細かいことを言えば、現在使われているキャッシュレジスターに内在されたソフトが10%と8%を自動的に仕分け可能なような設定になっているのかと問いかけたくなってくる。それとも新製品の購入になるのかと言うことだ。

そういうことも問題にすべきだろうが、軽減税率を導入することによって1兆円も税収が減ってしまうことが適切かどうかを財務省も総理もどのようにお考えかも、気になってしまう。「我が国の不健全な財政状態では15%に引き上げても不足で、EUと言うか北欧の諸国並みにまで持って行くべきだ」という説は何年も前からあったではないか。それにも拘わらず、軽減税率導入とは如何なることなのかと、税収のことなど何も解らない私だって考えさせられてしまう。

田原総一朗だったと思うが「総理に何故消費税率引き上げを躊躇うのか」と尋ねたら「選挙に負けるからだと言われた」と語っていた。だから、軽減税率導入で負けないようにしようとお考えかなと、疑いたくなってしまう。私には単一の税率の方が解りやすいし、末端での混乱もなく実施しやすいように思えるのだが。


“inbound”って何のこと

2018-10-16 13:56:20 | コラム
何故カタカナ語を使うのか:

本日の産経新聞の「談話室」に元英語塾講師の方が「政府は何故カタカナ語を使うのか」という趣旨の投稿をしておられた。この方の解釈では“inbound”(=インバウンド)とは手元の英英辞書に「特に出発地点に戻る場合とある」と言っておられるのだ。実は、カタカナ語排斥論者の私は、訪日する人々を「インバウンド」とカタカナ語で表現されていることに余り注意していなかった。恥ずかしながら、それが政府が使う公用語だったとは全く知らなかった。

そこで、あらためて「インバウンド」を考えて見ることにした。極めて大雑把に言って「我が国を訪れる外国人」と言っても、外交官もおられれば、仕事(商用)でやって来られる方もあるし、日本見物(観光)の人たちもいれば、留学生も技能修習生いるだろう。それを十把一絡げにして如何に表現するかと考えた時に、アメリカの入管で問いかけてくるように“Business or pleasure?”と割り切れないだろうから、全てを包含できそうな「インバウンド」を選んだのかと考えた次第。

では“inbound”とはどういう意味かを手元のOxfordで調べてみた。これはそもそも形容詞であるし、formalだとあった。そこには“travelling toward a place rather than leaving it”とあり、投稿者の辞書の解釈とは異なるように思えた。そこで、Webster’s を見ればアッサリと“inward bound”とあった。そこでお馴染みのジーニアス英和を見れば「[通例限定]《船・飛行機が》本国行きの、帰航の」とあった。そして2番目には「市内[国内]に向かう」とあった。この辺りまでで私も十分に混乱させられた。と言うのは、“inbound”という言葉はWebster’sにあったように「内側に向けて」だろうと考えていたからだった。

解釈論はこれくらいにして、政府に言いたいことは「これほど様々な解釈がある英語の言葉をわざわざ選んで公用に使うとは何事か」なのである。更に追加すれば「もっと正確に『訪日客』か『来日者』といったような表現にして、意味不明か意味が正確に取られにくいカタカナ語を使うのは即刻お止めなさい」となるのだ。それでは不十分というのだったならば「商用、観光その他の来訪者」とでもしたら良いじゃないかとでも言ってやりたくなる。

何れにせよ、マスコミが何でもかんでも「トラブル」で括ってしまうような「英語の単語の本来の意味を無視したような粗雑なカタカナ語を使って表現するのは一国の政府がするべきことではないのではないか」と主張しているのである。因みに、“outbound”(アウトバウンド)はOxfordでは“travelling from a place rather than arriving in it”とある。何故、これで「夏休みや年末に海外旅行をする人たち」を表現しないのだろうか。だから、カタカナ語は辞めようと私は言うのだ。