新宿少数民族の声

国際ビジネスに長年携わった経験を活かして世相を論じる。

KYB株式会社

2018-10-18 16:00:38 | コラム
何故データが改竄されるのだろう:

またかと思った報道だった。だが、一瞬「KYBって何処の会社?」かと困惑させられた。データ改竄などということをする以上は、昨日今日に出てきた会社ではないだろうとは考えたが、この社名には全く心当たりがなかった。それにしても、我が国の製造業の会社の品性は何処まで下落すれば気が済むのかなと落胆させられた。と同時に、何故そういうことをしたのが露見するのかなと、不思議に感じていた。内部告発か?

私の経験でも、確かに我が国の中間の需要家や最終ユーザーには「データ」の提示を求められる会社が多かったのは事実である。この点は既に既に指摘したが、製紙のような装置産業では1日24時間の操業で年間では少なくとも連続で350日以上は生産を停止したりしないものだ。そのような連続操業をしている機械の何時何処のどの時間帯の物性値(データ)を求めておられるのかと何時も疑問に思っていた。

先日も述べたが、1日に500 tonも造ってしまう製品の物性値の何処を採れば500 tonを代表するデータになるのかという疑問である。1枚の物性値の表が全体を代表できまいと言う意味だ。

データ論も兎も角、KYBとは何者かをWikipediaで検索してみた。そこで知り得たことは、カヤバ工業株式会社がKYB株式会社に社名を変更していたのであり、それはその昔の萱場製作所だったのだった。しかも、そういう免震装置では国内の65%もの占有率を誇っているとも知り得たのだった。なるほど、一昔も二昔から流行した「近代的」且つ海外にも通用するような社名の変更だったようだ。我が紙流通業界でも歴史と伝統に輝いていると思っていた「XX商店」という社名を「XX紙商事株式会社」というように近代化したところが何社もあった。

神戸製鋼が改竄でマスコミに大きく採り上げられた一番手だったように記憶するが、その時の専門家の解説に「スペックを実際の需要で要求されている物性値よりも高めに設定しておけば、実際の製品がその規格を多少下回っていても実害がないような安全策を採っている企業がある」とあった。ありそうな話だとは思って聞いた(読んだ)が、それでは「最初から達成不可能のようなスペックを設定するとは不可解な」と受け止めていた。

しかも、現実に物性値のデータを改竄せねばならないような製品が出来てしまうとは、「技術の日本」がそこまで劣化していたのかと嘆かわしく思った。同時に疑ったことは「経営陣が生産の現場でそういう製品を造ってしまう状態にあることを知りながら意図的に看過していたのではないか」という点だった。もしそうであれば、それは経営者の劣化であるし、生産技術も劣化したことになるのではないかと、深刻に受け止めていた。

余談だが、それにつけても感じたことは「例によって例の如くに謝罪の記者会見とやらに登場したKYB社の社長さんの偉そうな顔付き」だった。私は日本とアメリカの両方の会社勤めを経験して見えてきたことは「我が国の会社の役員はその地位が上がっていくのに伴って実務から離れていき、威張った顔付きになって行くこととだった。同時に、「偉そうな顔をする人たちほど内容が空疎なことしか言えない嫌いがある」という点だった。

思うに、我が国の会社では偉くなればなるほど実務と現場から遠ざかって行く傾向があるようだが、アメリカの会社では副社長兼事業本部長と雖も現実に担当する得意先を抱えているし実務も担当し、1年365日飛び回っているので極めて多忙なのである。従って、常に現実を直視せざるを得ないので、部下や取引先を相手にして偉そうな顔をしている暇がないようなのだと思って見てきた。これ即ち「文化の違い」である。疑えばキリがないが「KYBの社長さんも現場から遠ざかっておられたのではなかったな」などと考えている。