新宿少数民族の声

国際ビジネスに長年携わった経験を活かして世相を論じる。

国会の質疑に望みたいこと

2019-03-26 13:59:45 | コラム
「我々が国を動かしているのです」:

これは30年ほど前に通産省(現経産省)の課長補佐だった30歳前の青年官僚と語り合ったことがあった。「我々が云々」は彼が穏やかであり且つ誇り高く宣言したことである。彼は国会会期中には大臣等の答弁を深夜までかけても準備しているのだと語った。簡単に言えば、自分たちこそが国を動かす原動力であると述べたのだった。彼は毎日朝の2~3時に帰宅して6時には出勤のために家を出て行くので、親御さんたちは「如何にお国の為とは言えあれで体が保つのだろうか」と心配していた。

などとは言ったが、国会の質疑はこういうエリート官僚の力を借りる形で成り立っていることは広く知れ渡っているとは思う。この課長補佐も勿論東大法学部出身だった。だが、私はそうとは承知していたし、現実に通産官僚からそうと聞かされても、そういう形でしか国会の質疑が成り立っていないことには大いに不満を感じていた。即ち、大臣と野党議員との質疑応答でも、その場その場で両者が持てる知識と経験と頭脳を活かして丁々発止と建設的な議論を展開して欲しいものだと、毎回国会における審議の状態のテレビ中継を見ては「大いに不満である」と思っていた。

現時点では野党は厚労省の統計の不手際問題や桜田五輪担当大臣の失言の言葉尻を捉えては、無意味な遣り取りに専念しているだけである。彼らが本気で真剣に取り組むべき問題は、手っ取り早い所では目前に迫ったであろうトランプ大統領が持ちかけてくるだろうTAG(FTA)の件であるとか、その大統領自身の来日もある。DPRK問題にしても拉致被害者の件を安倍総理がどう裁いていくかなどは、私個人だって質問してみたくなる。北方領土問題にしても同様に関心がある。宙に浮いてしまったUKのEU離脱の件にしても、我が国にとっては重大な関心事だろうが、そういう事案について真剣に野党が内閣に質したという報道に接したことがない。

今から約1年ほど前に産経新聞の「新聞に喝」欄には門田隆将氏が「日本はそんなことをしているときではない。世界が注視する北の核問題、そして拉致問題で、仮に米朝首脳会談が決裂すれば、米軍の軍事オプション発動の可能性が高まる。(以下略)」と指摘していたが、そこから1年が経過して、モリカケこそ採り上げなくなっただけで、野党は暇さえあれば「厚労省の統計問題」と大臣たちの失言の揚げ足取りである。これでは完全に国費と時間の無駄遣いである。野党は自覚症状無しに揚げ足取りに専念していれば政権が戻ってくるとでも本気で考えているのだろうか。

25日の産経新聞の一面に大阪大学名誉教授の加地伸行氏がそのコラム「古典個展」で「質疑より国民守る行動を」と題して国会質疑の件を採り上げて批判しておられた。その中から一部を引用して終わりたい。それは「野党の質問は、質問というよりも、政府の失態を引き出そうとするから厭がらせが多い。恐らくその狙いは現政権は信頼できないというイメージを作り出し、近く行われる諸選挙において、与党の票数を少しでも減らそうという安っぽい党利党略上の質問」と決めつけておられた。これで私が言いたかったことを全て言い尽くしてくださった感がある。

少なくとも野党には国を動かそうとなどという意志も気力もないのは明らかだ。枝野幸男や玉木雄一郎は加地名誉教授に何と言って答えられるのか。