この世は上手く出来ているもの:
世界は習近平が目指すようになるのか:
アメリカはオバマ政権時代に言わば習近平政権を野放しにして、事を荒立てないようにした対中国政策を採ったとしか思えなかった。その間に習近平は恐らく我が世の春を目指して東南アジアの海域でも好き勝手に振る舞い、それどころかAIIBから一帯一路(One Belt and One Road)とヨーロッパにまで悪魔の手を伸ばし、世界制覇を目論んでいる姿勢を露骨の鮮明に打ち出したのだった。アフリカの諸国にも返却不可能な借金をさせて手懐けていった。そのあからさまな例がWHOのテドロス事務局長だと見える。
ところが、「太平洋を別けて管轄しよう」と持ちかけた、思いがけなくアメリカの大統領に就任したドナルド・トランプ氏は前任者のオバマ氏のように甘くはなかった。その選挙公約の通りに中国に対して真っ向から牙をむいて戦う姿勢で臨んできたのだった。中国を徹底的に叩く態勢を整えて貿易赤字削減策を採り、中国からの輸入品に高率の関税をかける手段に出てきた。これなどはその中国叩き政策のほんの一部で、5Gを巡って中国のエース的企業の華為締め出し策を打っていったし、貿易面では知的財産権保護に注力するなど中国が到底飲む訳に行かない国有企業優遇策を止めよとまで要求した。
トランプ政権の中国叩きは徹底的であり、広範囲に及んで行ったし、中国からの輸入に対する関税の賦課も時が経つにつれて広範囲に広がっていっただけではなく、中国にアメリカからの農産品などの輸入の増加を言わば強要するなどと、中国政府が到底容認できそうもない次元に達していった。習近平以下は懸命に防戦に努めているようには見えたが、虚しい抵抗であるかとも思わせられた時期すらあった。私は個人的にはトランプ大統領の中国叩きの姿勢だけには拍手喝采だったし、やれるところまで叩いて貰いたいと期待していた。
ところが、色々と情勢が変化していく間に、トランプ政権にもやや軟化の姿勢が見え始め、つい先頃何となく中途半端だとすら感じさせられた協定を結んで、極論的に言えば「アメリカ側が撃ち方止め」とでも言いたいような形で一段落させてしまった。この落とし方がトランプ大統領の選挙対策の一環かどうかは知らないが、私はやや失望した。だが、アメリカと中国が対立し続けて、関税合戦を続ければ、世界の経済に及ぼす悪影響が大きくなる一方なので、トランプ大統領がその辺りを考慮されたかとも思っていた。中国は言わば危機を脱したかの感があった。
だが、「天網恢々疎にして漏らさず」とは良く言ったもので、私は必ずしも習近平が悪事を企んでいたとまで言う気はないが、トランプ大統領との争いが収まりかけたかと思えば、何と中国には新型ウイルス問題が、実は昨年の12月に襲ってきたのだが彼は事実を隠蔽していた、湖北省武漢で発生し中国政府の初動対応の遅れもあり、アッという間もなく中国全土に広まってしまった。しかも、習近平のWHO懐柔政策が裏目に出て、対応が後手後手どころか弥縫策すら打てずに、COVID-19の蹂躙を何ら阻止できないままに許してしまった。
このウイルスは考えるまでもなく、トランプ大統領よりも対処が難しい問題だ。兎に角、目には見えないままに感染していくのだから。私が見たところ、トランプ大統領の中国叩き攻勢には物理的にも対応できようが、目にも見えないウイルスには抵抗できておらず、新たな大敵に対して全く攻めるも守るも出来ないのだ。因果なもので、アメリカの攻勢を食い止めたかと思えば、ウイルスが攻め込んできたということ。習近平はこのウイルスを可及的速やかに終息させねば、全世界から鼎の軽重を問われるだろう。同時に、我が国では最早この状況を対岸の火事として軽視してはいられない時期に来たと認識すべき時だ。
中国経済の弱点を考える:
一言にすれば「過剰設備」だ。ここでは紙パルプ産業界で1955年から過ごしてきた者としての視点から、中国の弱点を考えて見ようと思う。私の見方は中国の産業界全般に通じる面もあると自負しているのだが。シンガポールに華僑が支配する有力な財閥シナル・マス(Sinar Mas)がある。この傘下にあるのが、今や世界最大級の製紙会社である Asia Pulp & Paper(APP)である。この会社はインドネシアと中国内に多くの製紙工場を所有し最新鋭の大規模設備で world classの品質の多品種の紙・板紙を大量に生産し、全世界に売り込んでいる。
「何だ。そんなことの何処が目新しいのか」と言われそうだが、このAPPのように後発の新興勢力が工場を新設すれば、そこに導入される20世紀末期から21世紀の抄紙マシンはコンピュータ制御は当然として、その生産能力はアメリカや我が国で前世紀から稼働している古くて小規模で生産能力が小さいマシンとは比較にもならない超高能率で大型なのだ。その能力から生産される紙類はインドネシア等の東南アジアや中国では消化しきれない量になってしまうのだ。故にAPPは輸出に懸命となるのだ。
ところが、先進諸国では(中国も含まれるかも知れないが)ICT化が著しく進み、印刷媒体(紙媒体)が瞬く間にインターネットに侵略されて、需要が激減しているのだ。それが証拠に我がW社は2005年に印刷用紙から撤退し、世界最大のアメリカのInternational Paperも2007年に印刷用紙事業を売却していた。話を飛躍させれば、印刷用紙の需要は全世界的に衰退している時期に、中国は全世界にその需要先を求めて船出していったのだった。しかも、新時代のマシンではコストの合理化も進んでいるので、売り方次第で「ダンピング」と認定されてしまう。現実に、アメリかではオバマ政権時代に中国とインドネシアからの印刷紙を高率の関税を科して締め出してしまっていた。
ここに例として挙げたような新興勢力の超近代的な生産設備導入によって、世界の供給能力対需要の関係が大きく変貌していたのだった。先進工業国の能力では太刀打ちならない品質の製品が新興国から安値で売り込まれてくるという時代になっていたのだ。それを関税をかけて締め出していればその生産能力過剰分は何処にも行き着かずに彷徨うことになってしまうのだ。だからダンピングに向かったのが、中国の粗鋼であり、韓国の製鉄のPOSCOなのだ。
私は「中国はトランプ大統領が求めているような条件を受け入れる訳にはいかないだろうし、過剰生産能力を多くの産業の分野で抱え込んでいるのだろう。」と見ている。しかも自国内の民度は未だしで、その設備能力は輸出が出来て始めて回っていく計算になっていると思う。故に、何が何でもアメリカを始めとする世界に売っていくしかないのだ。例えば、世界最大の1億トンを超す紙の生産国でありながら、国民1人値当たりの消費量はアメリカ(生産量は7,000万トン)の30%程度に止まっているのだ。習近平はGDPの数字をいじって世界に発表しているような時期にないと承知していると思うが、如何なものだろう。
世界は習近平が目指すようになるのか:
アメリカはオバマ政権時代に言わば習近平政権を野放しにして、事を荒立てないようにした対中国政策を採ったとしか思えなかった。その間に習近平は恐らく我が世の春を目指して東南アジアの海域でも好き勝手に振る舞い、それどころかAIIBから一帯一路(One Belt and One Road)とヨーロッパにまで悪魔の手を伸ばし、世界制覇を目論んでいる姿勢を露骨の鮮明に打ち出したのだった。アフリカの諸国にも返却不可能な借金をさせて手懐けていった。そのあからさまな例がWHOのテドロス事務局長だと見える。
ところが、「太平洋を別けて管轄しよう」と持ちかけた、思いがけなくアメリカの大統領に就任したドナルド・トランプ氏は前任者のオバマ氏のように甘くはなかった。その選挙公約の通りに中国に対して真っ向から牙をむいて戦う姿勢で臨んできたのだった。中国を徹底的に叩く態勢を整えて貿易赤字削減策を採り、中国からの輸入品に高率の関税をかける手段に出てきた。これなどはその中国叩き政策のほんの一部で、5Gを巡って中国のエース的企業の華為締め出し策を打っていったし、貿易面では知的財産権保護に注力するなど中国が到底飲む訳に行かない国有企業優遇策を止めよとまで要求した。
トランプ政権の中国叩きは徹底的であり、広範囲に及んで行ったし、中国からの輸入に対する関税の賦課も時が経つにつれて広範囲に広がっていっただけではなく、中国にアメリカからの農産品などの輸入の増加を言わば強要するなどと、中国政府が到底容認できそうもない次元に達していった。習近平以下は懸命に防戦に努めているようには見えたが、虚しい抵抗であるかとも思わせられた時期すらあった。私は個人的にはトランプ大統領の中国叩きの姿勢だけには拍手喝采だったし、やれるところまで叩いて貰いたいと期待していた。
ところが、色々と情勢が変化していく間に、トランプ政権にもやや軟化の姿勢が見え始め、つい先頃何となく中途半端だとすら感じさせられた協定を結んで、極論的に言えば「アメリカ側が撃ち方止め」とでも言いたいような形で一段落させてしまった。この落とし方がトランプ大統領の選挙対策の一環かどうかは知らないが、私はやや失望した。だが、アメリカと中国が対立し続けて、関税合戦を続ければ、世界の経済に及ぼす悪影響が大きくなる一方なので、トランプ大統領がその辺りを考慮されたかとも思っていた。中国は言わば危機を脱したかの感があった。
だが、「天網恢々疎にして漏らさず」とは良く言ったもので、私は必ずしも習近平が悪事を企んでいたとまで言う気はないが、トランプ大統領との争いが収まりかけたかと思えば、何と中国には新型ウイルス問題が、実は昨年の12月に襲ってきたのだが彼は事実を隠蔽していた、湖北省武漢で発生し中国政府の初動対応の遅れもあり、アッという間もなく中国全土に広まってしまった。しかも、習近平のWHO懐柔政策が裏目に出て、対応が後手後手どころか弥縫策すら打てずに、COVID-19の蹂躙を何ら阻止できないままに許してしまった。
このウイルスは考えるまでもなく、トランプ大統領よりも対処が難しい問題だ。兎に角、目には見えないままに感染していくのだから。私が見たところ、トランプ大統領の中国叩き攻勢には物理的にも対応できようが、目にも見えないウイルスには抵抗できておらず、新たな大敵に対して全く攻めるも守るも出来ないのだ。因果なもので、アメリカの攻勢を食い止めたかと思えば、ウイルスが攻め込んできたということ。習近平はこのウイルスを可及的速やかに終息させねば、全世界から鼎の軽重を問われるだろう。同時に、我が国では最早この状況を対岸の火事として軽視してはいられない時期に来たと認識すべき時だ。
中国経済の弱点を考える:
一言にすれば「過剰設備」だ。ここでは紙パルプ産業界で1955年から過ごしてきた者としての視点から、中国の弱点を考えて見ようと思う。私の見方は中国の産業界全般に通じる面もあると自負しているのだが。シンガポールに華僑が支配する有力な財閥シナル・マス(Sinar Mas)がある。この傘下にあるのが、今や世界最大級の製紙会社である Asia Pulp & Paper(APP)である。この会社はインドネシアと中国内に多くの製紙工場を所有し最新鋭の大規模設備で world classの品質の多品種の紙・板紙を大量に生産し、全世界に売り込んでいる。
「何だ。そんなことの何処が目新しいのか」と言われそうだが、このAPPのように後発の新興勢力が工場を新設すれば、そこに導入される20世紀末期から21世紀の抄紙マシンはコンピュータ制御は当然として、その生産能力はアメリカや我が国で前世紀から稼働している古くて小規模で生産能力が小さいマシンとは比較にもならない超高能率で大型なのだ。その能力から生産される紙類はインドネシア等の東南アジアや中国では消化しきれない量になってしまうのだ。故にAPPは輸出に懸命となるのだ。
ところが、先進諸国では(中国も含まれるかも知れないが)ICT化が著しく進み、印刷媒体(紙媒体)が瞬く間にインターネットに侵略されて、需要が激減しているのだ。それが証拠に我がW社は2005年に印刷用紙から撤退し、世界最大のアメリカのInternational Paperも2007年に印刷用紙事業を売却していた。話を飛躍させれば、印刷用紙の需要は全世界的に衰退している時期に、中国は全世界にその需要先を求めて船出していったのだった。しかも、新時代のマシンではコストの合理化も進んでいるので、売り方次第で「ダンピング」と認定されてしまう。現実に、アメリかではオバマ政権時代に中国とインドネシアからの印刷紙を高率の関税を科して締め出してしまっていた。
ここに例として挙げたような新興勢力の超近代的な生産設備導入によって、世界の供給能力対需要の関係が大きく変貌していたのだった。先進工業国の能力では太刀打ちならない品質の製品が新興国から安値で売り込まれてくるという時代になっていたのだ。それを関税をかけて締め出していればその生産能力過剰分は何処にも行き着かずに彷徨うことになってしまうのだ。だからダンピングに向かったのが、中国の粗鋼であり、韓国の製鉄のPOSCOなのだ。
私は「中国はトランプ大統領が求めているような条件を受け入れる訳にはいかないだろうし、過剰生産能力を多くの産業の分野で抱え込んでいるのだろう。」と見ている。しかも自国内の民度は未だしで、その設備能力は輸出が出来て始めて回っていく計算になっていると思う。故に、何が何でもアメリカを始めとする世界に売っていくしかないのだ。例えば、世界最大の1億トンを超す紙の生産国でありながら、国民1人値当たりの消費量はアメリカ(生産量は7,000万トン)の30%程度に止まっているのだ。習近平はGDPの数字をいじって世界に発表しているような時期にないと承知していると思うが、如何なものだろう。