新宿少数民族の声

国際ビジネスに長年携わった経験を活かして世相を論じる。

大谷翔平君がMLBのアメリカンリーグのMVPに選ばれた

2021-11-20 09:23:23 | コラム
大谷翔平君のMVPの栄誉に思う事:

*大谷翔平君がもしも高校卒業後直ちにアメリカに行っていたら:
彼はそもそもいきなり向こうに行きたいと言っていたのを栗山監督が説得して日本ハムファイターズに入れて育てたと、報道機関は栗山氏の功績のように伝えている。私にはその当否は解らない。だが、私はもしも大谷君がいきなりアメリカに行ってメイジャーリーグかマイナーリーグか知らないが、あちら式に鍛え上げられていたらどうなっただろうかと、仮の話だが多いに興味があるのだ。または、錦織圭がそうしたように「フロリダ州にある運動選手を育て上げるので有名なIMGアカデミーのような機関に預けてみればどうなっただろうか」とも考えている。

このアカデミーがどれほど優れているかは知り合いの中にも息子さんを中学から入学させて、一流のフーッとボール選手に育て上げられたという実例すらある。言うまでもあるまいが日本人である。私が言いたいことは「アメリカでは三大スポーツのフットボール、ベースボール、バスケットボールを学校教育で経験するか、その何れにでも適応できるように身体能力と体幹を鍛えておく」と聞いている。我が国との違いは一つの運動部に所属すれば、野球なら野球道に精進するのみであり、他の競技には手を染めにくいのだ。

例えば、これまでに何度か採り上げた話で、MLBで活躍している選手の中には大学生活を終える際にMLBとNFL(フットボールリーグ)の何れを選ぶかで悩んだことがあるというのは珍しくないのだそうだ。私が言いたいことは、IMGなどで大谷君の素質を磨き上げてからMLBに身を投じていたら、どうなっただろうかという話である。例えば現時点よりも凄いピッチャーになっていたかも知れないが、果たして投打の両面の選手に育っていたかは疑わしい気もするのだ。

*大谷君の年俸:
第一に訂正しておかねばならぬことがある。それは、昨日彼の2022年の年俸は大幅に上昇するだろうとしたのは誤りで、来年は2年契約の最終年で6億円($1=¥110換算)と既に決まっていたのだった。彼は4年前にMLBに移った際にも日本ハムファイターズの年俸よりも下げていたのだった。その後も肘の手術や膝の故障等々があって、言うなれば事実かと疑いたくなるような低額の3.3億円で今年は大活躍していたのだった。それにも拘わらず恬淡として先頃の東京での記者会見では「金は使わないので貯まる一方」などと言っていたのだった。

如何にも安すぎる年俸である。例えば21年のNPBでの推定の最高年俸は田中将大の9億円、第2位が菅野智之の8億円、第3位が柳田悠岐の6.1億円という具合だ。俗な言い方をすればエインジェルスは「良い買い物をしていた」ことになりはしないか。英語にすれば“good buy”なのだ。

*マスメディアの報道の偏り:
次はマスメディアの報道には(敢えてカタカナ語を使っておくが)「ミスリーディング」な面があるのではないかと思う点だ。件名にも明記したように彼はMLBの中のアメリカンリーグのMVPに新聞記者の投票で選ばれたのであって、MLB全体のMVPではなかったし、連邦政府等の公共機関が選んだ訳ではないのだ。ナショナルリーグではフィラデルフィア・フィリーズのブライス・ハーパー(Bryce Harper)が選ばれていた。しかも2回目だった。大谷君が満票で選ばれたことは確かに偉業だが、こういうこともキチンと報道すべきだと思うのは当方だけか。

*苦節3年:
危うく日本ハムから転出して3年間は苦難の時だったことを忘れさせられかねない、今年の飛躍的大活躍だった。私は大谷君を類い希な素材であり「二刀流」などというマスコミ好みのアホらしい表現に惑わされることなく、160 kmの速球を投げる投手に専念させたら良いのにと見ていた。しかも、トミー・ジョン手術をしたとあっては、半ば以上に失望させられていた。そして、エインジェルスに体の良い広告塔のように使われて、折角の天与の素質を活かしきれずに終わるかとすら懸念させられていた。

それが、今年に入ってマスコミ報道では見えないところでの精進努力が実を結んだのか、投打の両面であのように開花したのだった。マスコミは彼の活躍振りを何時まで経っても100年も前のベーブ・ルースと比較するとか、その過去の偉業の記録を抜くか抜かないかで大騒ぎしていたのは、解らないではないが見当が違うと思っていた。

彼らは何かと言えばベーブ・ルースが打って走っている姿が出たフィルムを見せるが、あの程度の身体能力が普通であった時代の選手と、現代の科学的且つ合理的なトレーニングで鍛え上げてきた大谷君他の運動選手たち(カタカナ語になってしまった「アスリートたち」)を同日に論じるのは不当である。私は彼らが崇め奉る長嶋茂雄や王貞治にしても、あの体で21世紀の今日のスポーツ界に登場しても、果たして通用するかと疑っているほど、現代の運動選手たちの身体能力と鍛え上げ方は進歩しているのだ。

その時代の変化を忘れたかの如くに、ベーブ・ルースを引き合いに出す時代感覚には真っ向から疑問を呈しておきたい。寧ろ彼らが言うべきことは「大谷君ほどの類い希なる素質を以てしても、北と南のアメリカを中心にほぼ全世界から優れた素材が集まって鎬を削っているメイジャーリーグでMVPに選ばれるまでに、4年を要した点を取り上げて報道して貰いたかった。私は彼がその素質を活かして易々と、当たり前のようにあそこまで伸びたのではないと見ているのだ。素質を基にした見えないところでの努力があったはずだと信じている。