新宿少数民族の声

国際ビジネスに長年携わった経験を活かして世相を論じる。

アメリカの就職事情

2021-11-11 08:41:17 | コラム
マスコミ報道の無責任さを問題にしたい:

本日発売の週刊誌の新聞広告には何と「小室夫妻の離縁」に触れている記事があった。小室夫妻のことについては、もう触れないと決めていたが、これを見て矢張り言っておかねばなるまいと思いついたことがあった。

それは、掲題の「アメリカにおける就職事情」、即ち文化の違いである。少し前に、どの週刊誌だったかは失念したが「小室氏がNY州の弁護士試験に不合格となり、収入が激減した場合には、UKのレスター大学で博物館学修士を取得しておられた真子さんが1,500万円ほどの年俸が期待できる博物館に就職して家計を支えれば」という記事を載せていた。非常な誤解というか誤認識を招きやすい記述だと思った。

そう言う根拠は「我が国とアメリカの間には、就職と就社の違いがあるということ」なのだ。私はこの点については、これまでに繰り返し述べてきたのである。その中で最も顕著な違いの一つとして挙げてきたことが「アメリカでは事業部長(博物館ならば館長か)が必要に応じて即戦力を採用するのであって、その必要がないときに新規に採用して増員することはない」なのである。

その「必要な場合」とは、その事業の責任者が「事業の発展によって人材不足となった」、「退職か引退によって生じた欠員を補充する」、「新規事業を計画する」等々の場合に補充するのだ。その方法は「社内に募集広告を出す」か「公募する」か「伝手を頼って同業乃至は他業界から引き抜きをかける」か「ヘッドハンターに依頼する」か「責任者の手元にある履歴書の中から選んで声をかける」か「自薦で押しかけてきた者か、他者から推薦された者を面接する」等々である。製造業界は4年制大学の新卒者を定期的に採用することなどないとは既に指摘してあった。

真子さんが就職されるとなれば、皇族の出身というのは強力な材料かも知れないし「伝手」になるかも知れない。だが、博物館にせよ何にせよ、責任者が欠員もないときに新規採用するとは考え難いのだ。私はマスメディアが海外に多くの駐在員を出しているし、アメリカ等の海外の大学に留学の経験者は多いと思う。即ち、彼らは「アメリカでは就職であって、我が国のような就社ではない」という異文化の世界だと知らないはずはないと思う。そうであれば、チャンとそういう点を明記した記事を流すべきだと思う。流石に新聞社は真子さんの就職の可能性に触れていなかったが。

最後に確認のためにもう一点触れておこう。それは「アメリカの就職は、例えばアップルに入りたいと狙う場合には、会社に採用されることを希望するのではなく、具体的にその会社のどの部門で何をしたいかを明確にしておかねばならない」のである。我が国のように「先ず希望の大企業に入社できても、どの部門に配属されるかは別な問題である」という事情とは異なっているのだ。

私はW社に転じて2年目の1976年に、我が事業部がFood & Dairy Showに出展した際に、そのブースに立っていたときのことが忘れられない。そこにやって来た某大学の大学院生と名乗った青年が「この会社のこの事業部で営業を担当したいのだが、履歴書は誰に送れば良いのか」と尋ねたのだった。全く意味が解らず、ブースにいたアメリカ人の社員に「何のことか解らないので、替わって欲しい」と頼み、後でその質問の意味を解説して貰った。私はこのようにして、初めて彼我の文化の違いを学んだのだった。



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