英語には独特の言い方があるとご承知置きを:
「ソースを取って下さい」:
解説)これを“Will you please get the sauce for me?” とは通常は言わないのが英語の面倒なところだ。勿論、このままで「ソースを取って下さい」として通用するのだ。だが、食卓では正確には “pass the sauce to me” のようになるのである。「手渡す」の意味で使われている。理屈を言えば、他動詞としてのpassを使うのだ。サッカーでもラグビーでも言う「パス」と同じだ。
ここで、もう一つの面倒な話をしておこう。それは我が国で「ソース」と普通に呼ばれているのはWorcester(shire) sauceのことなのであり、醤油(soy sauce)との対比のように使われている。またさらに面倒なことにWorcesterは「ウスター」と発音されていること。「ウヮーセスタ-」ではないのだ。さらさらに、sauceとは「食べ物にかける液体か液体状の物」のことなのだ。故に、アメリカでも何処でも外国に行って“sauce“と注文してもWorcester sauceは出てこないのだ。
二重否定(=double negative):
解説)このような言い方に出会うと一寸戸惑う。しかも、私が常に言う「下層階級」の人たちだけではなく、チャンとした会社の四大の出身者で管理職でも“Hey. Don’t say nothing.”であるとか、“He does not know nothing.”のような言い方をするのだから。
このような二重否定を使えば「何も言うな」か「彼は何も知らない」なのだが、二重否定を使う人がいて、混乱させられるので困る。使っている人の意図は「強制形なのだ」と解釈すれば良いと思う。こういう場合には前後の状態か、話の流れの中の状況で判断するしかない。
だが、貴方が自分から使ってしまうと、多分知性と教養を問われてしまうかも知れないのだ。何も英語の場合だけではないことで、言葉遣いには時と場合を心得ておく必要がある。
「スクランブルエッグにする」:
解説)「スクランブルエッグ」はカタカナ語あり、文法的にも正しくないのだ。だから、アメリカでも何処でも”I’d like to have scramble egg.”のように注文しない方が良いのだが、勿論、これでウエイターでもウエイトレスにも通じるだろう。即ち、正確に言えば“scrambled”のように過去分詞の形にしておかないと、「卵をかき回す」だけの意味になってしまうのだ。
このように文法的に間違っていると「教養が無い」と蔑まれる危険性があるのだ。この辺りを充分に注意し留意しておく必要があるし、英語の難しい点だと覚えておくべきなのだ。しかも、実際には”eggs”と複数で言わなければならないのだ。
なお、卵料理を「目玉焼き」(=fried egg/s)で注文する時には「”over easy”と言えば黄身を上にして半熟程度であり、「カチカチに焼いて」は”over hard”になる。他には「黄身を下にして」は「sunny side down」のように気取って言う。ゆで卵は「何分で」と指定せねばならないのが面倒で、私は一度も注文したたことがなかった。
「~はありますか」:
解説)「~」のところは商品か商品名を意味していると思って頂きたい。これは買い物に行って在庫の有無乃至は取り扱っているかを尋ねている表現だと思って頂きたい。この場合に日本の教育で育ってきた方々は、”Do you have a pair of very small size shoes?”のように”have”を使う。だが、アメリカ語では”Do you carry a pair of Nike shoes?”のように”carry”を使うのが一般的のようだ。
何故そうなるのかを私なりに分析してみれば「~の在庫を持っている」は、”We carry heavy inventory of California rice.”のように在庫はcarry するものなので、haveは使わないのだと受け止めている。なお、余計なお世話になるだろうが、”have”で十分通用するのだが、”carry”を使う方が熟練しているように聞こえて格好が良いような気がする方は、一度お試しあれ。
余談だが、我が国の小売店には店頭に屡々”Price down”と表示されているのを見かける、あれは日本語。”price”は”reduce”か”discount”と言うのが普通である。故に、値切ろうと思って”Price down.”と主張しても通用するか否かは保証の限りではない。私は値切るのは余り得手としていなかったが、”Give me some discount from this tag price.”のように言った覚えはある。私はアメリカには値切る文化は余り普及していないと思っている。
「キャウ」(=cow)は下品?:
解説)これも余談の部類に入るかも知れない発音の話。アメリカ語の発音は微妙なものが多く、我が国の学校教育で育った方を悩ましている。私が屡々引用する日系人でワシントン大学のMBAのBJ氏の奥方は(好ましくない表現かも知れないが)白人だった。彼女は夫の赴任先の東京で英会話の家庭教師を依頼されたそうだった。1970年代のことだった。
奥方が”cow”を何気なく「キャウ」と発音したところ「そんな下品な発音をする人に教えられたくない」とばかりに、即刻契約を解除された由。BJ氏夫妻は苦笑いするしかなかったとか。今ならば「大統領様だって”council”をキャウンスル“とおっしゃる」と言えただろうに。このような発音はアメリカでは普通なのだが、慣れていなければ戸惑うだろう。
さらに、アメリカ人たちのこのような発音の例を挙げれば、”counter”などは”t”を省いて「カウナー」か「キャウナー」と発音されることが多い。だが、Oxfordには「アメリカ式」として「カウナー」の発音記号が載せられている。また、”twenty”も屡々「トウエニー」と聞こえるように”t”を抜かすことがある。私は今日までに日本人がこのような余り上品とは言いがたい発音を、native speakerたちがするからと言って。無闇に真似をするべきではないと、多くの方に説き聞かせてきた。何時も正確に「トゥエンティ-」と発音できるように“t”の発音に慣れ親しんでおいてほしいのだ。
なお、今回は2005年9月17日に発表した「旅先での簡単な英会話 #2」を未だお読み頂いていることに有り難く感謝して、加筆訂正したものである。