ワインな ささやき

ワインジャーナリスト “綿引まゆみ” (Mayumi Watabiki) の公式ブログ

フランスワインを楽しむ中国料理コンクール2012

2012-09-25 10:16:53 | ワイン&酒
「フランスワインを楽しむ中国料理コンクール」 の授賞式が、20012年9月24日、東京誠心調理師専門学校(東京都大田区)にて行われ、取材に行ってきました。



フランスをはじめとしたヨーロッパでは、中国料理とワインを合わせて古くから楽しまれてきました。
そこで日本でも、フランスワインと中国料理を楽しむための中国料理コンクールが行われるようになり、今年で10回目を迎えました。

主催は年によって若干変化がありますが、今年もフランスのアルザスワイン委員会(CIVA)が中心となり、フランス農水省、欧州連合(EU)、社団法人日本中国料理協会の協力の下、フランスワインを楽しむ中国料理コンクール が開催されました。

これは単なる料理コンクールではなく、課題となるワインとのマッチングを審査します。
よって、料理単体で美味しいだけでは入賞できません。



課題ワインは、アルザスのリースリングかゲヴュルツトラミネール(白)、または
ボジョレーかボジョレー・ヴィラージュ(赤)で、この4つからどれを選択してもOKです。

今年は日本全国から91名の応募があり、前菜部門、熱菜部門それぞれ5名ずつ、合計10名が決勝に進み、9月24日の決勝に臨みました。
部門ごとの入賞者を紹介します。



<前菜部門>

グランプリ 福里 聖 (旭川グランドホテル)(北海道旭川市)
牡蠣貝のシンプル山椒オイル漬け 秋刀魚の魚烹仕立て~ワイン風味

ワイルドで大胆な盛り付けが目を引きます!福里さんに話を聞きました。
この料理に合わせてほしいのはアルザスのゲヴュルツ。
ワインに合うよう味付けを濃いめにし、また、ゲヴュルツはスパイスをきかせた料理に合うので、スパイスをポイントにしています。オイル漬けは山椒だけでなくピーナッツオイルも加えて甘さを出し、白コショウ(黒コショウでなく)をきかせています。
ワインとの相性を考える際には、スタッフのソムリエと一緒に色々試したそうです。



このサンマとゲヴュルツを実際に合わせてみましたが、甘辛い味わいと甘さのあるゲヴュルツがよく合いました。これは家庭でも応用できそうです。



準グランプリ 菅谷 勇喜 (szechwan restaurant 陳)(東京都渋谷区)
鮑と帆立の四川“麻”の香りオードブル~フルーティなお酒とのハーモニー



優秀賞 寺本 圭助 (熊本ホテルキャッスル)(熊本県熊本市)
香り豊かなホタテの二種前菜




左)佳作 石毛 啓之 (横浜ベイシェラトン&タワーズ)(神奈川県横浜市)
平貝の中国風パン粉焼き スモークしたサーモンのタルタル風~扇の舞

右)佳作 関崎 常正 (中国料理 煌蘭 川崎店)(神奈川県川崎市)
塩漬け卵入り太刀魚の燻製と帆立貝柱の紅麹焼き



<熱菜部門>

グランプリ 中島 幸泰 (中国料理 沙羅)(滋賀県近江八幡市)
梅香る近江鶏二種料理


中島さんはこのコンクールの常連ということですが、グランプリは初とのこと

とにかく、合わせるワイン(ボジョレー)との相性をよくよく考えた、と言います。
“塩分”に注目し、ちょっと塩辛いくらいの味付けをし、冷めても味がしっかり残るようにしています。鶏手羽の中には紫蘇と梅干が入っていますが、ほぐさず形とガツンとした味を残しています。奥のバトン状の鶏肉にもバルサミコ酢でしっかり味と酸味を付けています。また、西京味噌やチーズといった濃厚な味のものも使い、メリハリのある濃い味に仕上げているので、これは本当にボジョレー(ややスパイシーなもの)に合いました。ワインとの相性をよくよく考えた味付けの勝利!



準グランプリ 畑川 豊 (大阪あべの辻調理師専門学校)(大阪府大阪市)
葡萄の葉でスモークした仔鳩、空芯餅を添えて

生のブドウの葉っぱが使われています。家の近所の葉っぱなんですって。ブドウの葉のほのかな風味が鳩に移っていました。これはボジョレーを合わせるそうですが、ゲヴュルツもイケました。



優秀賞 市本 尚 (ホテル阪神)(大阪府大阪市)
香りの中で楽しく食べる新感覚の鶏団子~鶏皮と有機野菜のパリパリサラダ添え

団子がスパイシーなので、(本来はボジョレーとマッチさせるようですが)これもゲヴュルツが合う!




左)佳作 井上 和豊 (szechwan restaurant 陳)(東京都渋谷区)
マスタードの新たな可能性を表現した鶏肉料理~日本庭園仕立て

右)佳作 西山 峻 (ロイヤルパークホテル)(東京都中央区)
鶏肉と味噌漬けフォアグラのオブラート包み蒸し紅花ソース




なお、全作品の中から最もワインと相性がよい作品に贈られる特別賞(アルザス賞) が、
福里 聖さん(旭川グランドホテル)に授与されました

これらの作品を私たちも試食しましたが、福里さんのサンマはゲヴュルツによく合ったのはもちろん、赤のボジョレーともいい相性でした。
サンマは家庭でもよく登場する食材ですので、中華風の味付けにアレンジしてアルザスワインやボジョレーワインと気軽に合わせてみたいですね。


10人の決勝進出者と審査員の皆さん

決勝に残った選手はすべて男性。女性選手のエントリーはあるんでしょうか?と主催者側に聞いてみたところ、全体の3割ぐらいとのことでした。
レストランでワインを好んで飲むのは女性が多いですし、マリアージュの感性も女性の方が敏感なので、こうしたコンクールなら女性選手が活躍しそうですが、中国料理はまだまだ男性が中心なんですね。他のコンクールでは女性も活躍していますので、中国料理の世界でも、ぜひ女性に頑張ってほしいですね。


熱田 貴さん(日本ソムリエ協会 名誉顧問)


Tierry Fritsch(CIVA)  Charles Durand(Sopexa Japon)


(社)日本中国料理協会の山中専務理事から
「元々アルザスワインは中国料理と相性がいい。今年のコンクールは洗練された盛り付けが目立ち、30年前にヌーベル・シノワが始まった頃と比べて非常に洗練され、だんだん変化してきている。モンゴルや、清朝などの異文化と接触し、取り入れることで変化し、新しい中国料理が出来上がってきた。ワインを取り入れることもそれと同様で、これからの中国料理の発展にとって重要なことだと思う。たしかに、今回の料理の見た目は洗練されているが、これからは見た目だけでなく味わいにおいても洗練されたものを目指し、高めてほしい」と講評がありました。



本当に違和感なく、中国料理とフランスワインがマッチしました。
日本独自の素材も使われており、3か国のタッグが素晴らしいと思いました。

現在、中国と日本の関係は微妙に揺れ動いていますが、ワインを架け橋としてこのコンクールで両国がつながってきたように、今後もいい関係がずっと続いていくことを切に願います。
選手の皆さんの今後の活躍にも期待しています!



コメント
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