ワインな ささやき

ワインジャーナリスト “綿引まゆみ” (Mayumi Watabiki) の公式ブログ

注目!ドイツ・バーデンのピノ系ワイン生産者「Dr.Heger」

2013-08-02 18:49:26 | ワイン&酒
今週、ドイツのバーデン地域のワインをテイスティングする機会がありました。

フィーチャーされた生産者は、「Weingut Dr.Heger」(ドクター・ヘーガー)。

ドイツ南西部に位置するバーデン地域は南北に長いワイン産地です。
ヘーガーは、南部のカイザーシュトゥール地区イーリンゲン村の生産者で、現当主の ヨアヒム・ヘーガー は3代目。20haの自社畑を所有しています。

1935年、祖父で村の医者だったマックス・ヘーガーがささやかなブドウ畑を入手したことから始まりました。1949年には息子のヴォルフガング・ヘーガーが引き継ぎます。3代目のヨアヒムは1981年に加わり、1992年に引き継ぎました。

1986年には、ヘーガーのワインをもっと飲みたいという消費者の需要に応えるため、ヨアヒムは 「Winehaus Joachim Heger」を立ち上げています。
自社畑だけではなく、情熱を持って良質のブドウを育てる契約栽培農家のブドウも使い、いわばネゴシアンですが、醸造チームやセラーでのケアなど、すべてエステートワインと同じに扱っています。



地名の“カイザーシュトゥール”は、“カイザー(皇帝)のスツール(椅子)”という意味。
小高い丘陵が連なる火山地帯で、古いチョークと火山灰土壌の土地 です。

私も10年ほど前にカイザーシュトゥールを訪問しました。
その時にMonhaldeという丘の上から撮った写真が残っています。


Mondehaldeから眼下に広がるカイザーシュトゥールのブドウ畑


斜面の段々にテラス状に植えられています ―周辺もテラス畑が多かったです



ヘーガーが所有する畑は、この写真よりも数km南西になります。
代表畑は、イーリンゲン村のウィンクラーベルクと、アッハカーレン村のシュロスベルク

どちらも丘陵の斜面に畑がつくられ、斜度は40度にもなります。
傾斜が厳しく、また、段々のテラスなので機械が入らず、畑仕事は手作業です。

ヘーガーが所有する20haの畑の内訳は、シュペートブルグンダー30%、グラウブルグンダー30%、ヴァイスブルグンダー15%、リースリング10%、シルヴァーナとシャルドネが各5%、その他5%

2005年時の「ゴー・ミヨ」のドイツワインガイドを見ると、所有畑17ha、シュペートブルグンダー24%、リースリング24%、グラウブルグンダー18%、ヴァイスブルグンダー13%、シルヴァーナ8%、シャルドネ5%、その他7%でした。

シュペートブルグンダー、グラウブルグンダー、ヴァイスブルグンダーが増え、特にグラウブルグンダーが急増しているのがわかります。ヴァイスブルグンダーは比率では下がっていますが、実質は2.6haから3haに増えています。

というのも、ヨアヒムはピノ系の品種に力を入れている からなんです。
シュペートブルグンダー、グラウブルグンダー、ヴァイスブルグンダーは、それぞれ、ピノ・ノワール、ピノ・グリ、ピノ・ブランになります。



さて、いよいよテイスティング。


2012 Dr.Heger Ihringer Winklerberg Weissburgunder trocken(VDP Erste Lage)

若々しくフレッシュなピノ・ブランです。しかし、熟したフルーツの豊かなアロマがあり、果実味のアタックのボリュームがあり、芯のしっかりした酸、ミネラル感も備えています。きちんとした骨格があり、かつ上品なワインで、幅広い料理に合わせられるでしょう。私は野菜のテリーヌなどに合わせたいと思いました。風化した火山岩土壌。アルコール13.5%。



2011 Dr.Heger Ihringer Winklerberg Grauburgunder Spatlese trocken

ピノ・グリのシュペトレーゼ辛口。少しスモーキーなニュアンスがあり、個性的。桃を思わせるやわらかなタッチなのに、味わいに甘さをほとんど感じない辛口。少々ビターな感じもある?こちらも骨格はしっかりし、フィネスを感じます。スモークサーモン、マグロのマリネなどにオススメ。高級レストランの料理にふさわしい品格のある素晴らしいワインです。風化した火山岩土壌。アルコール13.5%。



2011 Weinhaus Heger VITUS Grauburgunder QbA Barrique trocken

こちらはWienhausのピノ・グリで、フランス製バリックの大樽で発酵、熟成を行っています。そのせいで、樽の風味は感じますが、フルーツのボリュームが大きく、ボディに厚みがあり、パワフルです。しかし、少々の雑味を感じます。土壌の違いのせい?バターを使った料理に合わせれば、雑味をマスキングし、素敵なマリアージュとなりそうです。重たいローム、レス土壌。アルコール13.0%。
※“VITUS”は、あちこち渡り歩き、アメリカにまで渡ったヨアヒムの大おじの名前



2010 Dr.Heger MIMUS Ihringer Winklerberg Spatburgunder Barrique trocken

限定された畑の古木のピノ・ノワールを低収量で収穫し、新樽50%のバリック樽で15カ月熟成させています。外観と香りからは、世界のどの産地のピノ・ノワールか?見分けがつきにくいように思います。タッチはやわらかで、少々もわもわした果肉感があり、ぽわん、としたボディの赤ワインです。もう少し酸のボリューム、質が変わってくると、ドイツらしさが出てくるように思います。が、グラスに入れて時間が経つと、だいぶまとまってきました。デカンタージュしてもいいかもしれません。料理は、甘辛い味付けの鴨ロースなどが合いそうです。風化した火山岩土壌。アルコール13.5%。
※“MIMUS”はヨアヒムの父(2004年に逝去)の子供時代の呼び名



2005 Dr.Heger Achkarrer Schlossberg Riesling Spatlese

つや、輝きのある濃いイエローのリースリングは、アッハカーレン村のシュロスベルク畑のブドウからのもの。ミネラルの風味があり、想像する典型的なリースリングの特徴を備えています。なめらかな口当たりで、やや残糖(27.0g/リットル)がありますが、酸がしっかりしているため、非常にバランスの取れたものになっています。食事に合わせることなく、そのまま飲んでもいいですし、洋梨のコンポートなどと組み合わせても素晴らしいと思います。風化した火山岩土壌。アルコール12%。



2008 Dr.Heger Ihringer Winklerberg Muskateller Eiswein

珍しいムスカテラーのアイスワインで、残糖は195.0g/リットル。先のリースリングの7.2倍!かなり甘いですが、リースリングよりも酸度の数字が高く、絶妙なバランスです。濃い琥珀色の外観、メロン、ムスクを思わせる芳香、つるん、とろんと甘美な口当たりで、もううっとり。ブルーチーズ(英国のスティルトン)に合わせたり、和のスイーツとのマッチング(白玉、天然氷のかき氷など)もチャレンジしてみたいですね。風化した火山岩土壌。アルコール8%。



ヨアヒム・ヘーガーは、「ゴー・ミヨ」ワインガイドの “Wine Producer of the Year 2013” を獲得しています。

彼は15年前には “Riesling Star of the Year 1998” を獲得し、リースリングの期待の星でしたが、現在はドイツで最も温暖なバーデン地域でのピノ系品種に力を入れ、地域のエリートとしてだけではなく、ドイツを代表するつくり手となっています。

ここは 要注目 ですよ!


※現在、日本では手に入らないかもしれませんが、近々入ってきそうな…?


コメント
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