イタリアの蒸留酒「グラッパ」を知っていますか?
イタリアワイン好き、イタリア料理好き、イタリアそのものが好きな人は、もちろん!ですよね?
イタリア料理の店で食事をすると、最後に「グラッパはいかがですか?」と聞かれることがよくあるかと思います。
グラッパはアルコール度数の高い蒸留酒で、ゴージャスで素敵なボトルに入っているものも多く、高級品のイメージがあります。
それが、元々は貧乏人の飲み物だったそうです。
世界イタリア料理週間(2021年11月22~28日)のイベントのひとつにグラッパについての講演会「グラッパ ー それは一つのイタリアの歴史」がイタリア文化会館(東京・千代田区)で開催され、ご案内をいただいたので参加してきました。
グラッパ ー それは一つのイタリアの歴史 ”La grappa, una storia italiana”
講演会の冒頭に、この10月に新任したばかりの
駐日イタリア大使 ジャンルイジ・ベネデッティ閣下のご挨拶がありました。
対しのご挨拶の中で、グラッパはワインの副産物であり、貧しい人が飲んでいたこと、北イタリアで寒さと労役に耐えるための飲み物であり、北イタリアから数千年かけてイタリア中に広まったことを聞きました。
講演会の講師は、イタリアンプロフェッショナルソムリエの林 茂さん。
前職のサントリー時代、1982年に初めてイタリアに赴任したことを機にイタリアのさまざまな産物と接するようになり、
グラッパも、赴任中に出合い、1984年からグラッパ生産者の探索が始まったとのことでした。
グラッパの原料はブドウの搾りかすです。
ワイン用のブドウを搾った後に残る搾りかすを蒸留器にかけると、アルコール度数の高い液体が精製できます。
ワインが飲めない貧乏人が苦肉の策として搾り出したことから、「貧乏人の飲み物」と言われたわけです。
アルコール度数の高いグラッパは、寒い北イタリアでは身体を温めるものとして重宝されました。
家庭で密造したものを袋詰めし、それを女性が妊婦を装ってお腹に入れ、電車に乗って売りに行くこともあったとか。
グラッパは、貧しい農民の生活の糧でもあったようです。
グラッパの聖地は、ヴェネト州ヴィチェンツァ県のBassano del Grappa(バッサーノ・デル・グラッパ)。
ヴェネツィアから100kmほど北西にある町で、名産品は、もちろんグラッパ。
アスパラガスや陶磁器なども有名みたいです。
第一次世界大戦の時、バッサーノ以北にオーストリア軍が侵攻してきたそうで、兵士にはひとり500mlのグラッパが配給され、グラッパで身体を暖めたり、戦闘の恐怖をやわらげるのに役立てられたそうで… 切ないです…
グラッパは薬としても使われ、今から100年前にスペイン風邪が大流行した際、関節炎の痛みをやわらげるために飲んだとか。
また、消化剤としても使われました。消化剤としての使われ方は、今もそうですね。
ヴェネト人にとって、グラッパは日常にあるもので、皆が皆、飲んでいました。
ワイン同様、グラッパは単なる飲み物ではなく、カロリーがあり、滋養があり、食べ物と同じで、生活の中に浸透していて、教会の儀式にも使われました。
アルコール度数が高いにもかかわらず、朝はグラッパで始まります(笑)
グラッパをコーヒーにいれる「カフェ・コレット」が定番で、中には、グラッパだけを飲む人もいるそうで…(笑)
そんなふうに飲まれてきた「庶民の酒」だったグラッパですが、1980年代になると、パッケージが豪華になって高級店にも置かれ、高級贈答品としても認知されるようになってきました。
わたしが認識しているグラッパは、近代の、高級化したグラッパでした。
グラッパの原料がブドウの搾りかすということで、ワイン用のブドウがあればグラッパがつくれます。
トスカーナ州の「サッシカイア」など、有名ワイナリーの名前の付いたグラッパがありますが、グラッパの蒸留には特別なライセンスが必要なので、ワイナリーのある場所でグラッパをつくっているわけではありません。
契約している蒸留所に搾りかすを運び(すぐに運ぶそうです)、そこでつくってもらいます。
完成されたグラッパがワイナリーに戻ってきたら、ワイナリーの名前で発売、というのがひとつのルートです。
そのワイナリーのブドウを使ったことを明記して蒸留所が発売する、というルートもあります。
わたしはこれまでグラッパをあまり飲んできていないので、どんなグラッパがあるのか、自分の好みはどうなのか、まったくわかりませんでした。グラッパに関しては、実に素人です。
講演会終了後に17アイテムのグラッパが紹介され、試飲することができました。
17種のグラッパがずらりと並びました
駐日イタリア大使 ジャンルイジ・ベネデッティ閣下(右)に説明する林茂さん(左)
見るからにゴージャスなパッケージの高級品!
クリアな透明タイプのグラッパ
同じ造り手でいくつかのタイプをつくっている例もたくさんありました
17種すべてを試飲したわけではありませんが、いくつか飲む中で、自分の好みがわかってきました。
グラッパには、透明なタイプと色の付いたタイプがありますが、私が好きなタイプは、琥珀色の方みたいです。
ほんのり甘みがあり、香ばしく、コクが深く、まったりしたニュアンスもあります。
透明なグラッパは、私には少々タイトで強く感じましたが、あれこれ飲んでいくうちに、透明タイプにもハマっていくのでしょうか?(笑)
グラッパで乾杯!
いろいろ飲み比べると、こっちの方が好き、というのがわかるのがいいですね。
もし次にイタリア料理店でグラッパはいかが?と訊かれたら、現段階では色の付いている方を選ぼうと思います(笑)
講演会で聞いた話で、エスプレッソにグラッパを入れる飲み方(カフェ・コレット)については、会場内ですぐに体験できましたが、もうひとつ気になる飲み方がありまして、それもぜひ試してみたいと思っています。
それは、「レゼンティンーResentin」と呼ばれるもので、コーヒーカップに残ったわずかなコーヒーをキレイに飲むために、グラッパを入れてカップをすすいで飲むというのです。
これもヴェネト州ではあたりまえのことだそうです。
コーヒーカップをキレイにするために、あえてグラッパを注ぐ、という行為に、グラッパへの愛情を感じました
グラッパは、料理やお菓子にも使われているみたいで、これはぜひ現地で体験したい!
ヴェネト州はワインの取材で何度か訪問していますが、グラッパのことはいつも忘れてしまっているので、次の訪問の際には忘れないようにしないとですね
林茂さんのグラッパの話は、たる出版より発刊された「GRAPPA BOOK」に詳しく書かれていますので、グラッパに興味のある方は、ぜひ読んでみてください。
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