杯が乾くまで

鈴木真弓(コピーライター/しずおか地酒研究会)の取材日記

かかりつけの電器屋さん

2008-08-12 09:14:28 | 吟醸王国しずおか

 昨日(11日)の昼前、ちょうど北京で北島選手が金メダルを獲った頃、我が家に新しいパソコンがセットアップされました。

 

 酒を浴びたVAIOノートとともに昇天してしまったかと思われたハードディスクが無事よみがえり、『吟醸王国しずおか』撮影スナップもすべて復活! 臨時支出は痛く、ハンディカメラを買うつもりで貯めていたカネを放出する羽目になりましたが、死にかかったデータが新居で生き生きとよみがえる姿は、身内の病人が退院してきたような嬉しさと安堵さ。自分にとって、取材で得たものはすべて、自分の体の一部か家族みたいな存在だ、と改めて実感しました。

 

 パソコン修理人を紹介しようとメールをくれたUさんにさっそく報告したところ、「本当によかった。鈴木さんが撮った写真は、鈴木さん個人のものというより、蔵元と地酒ファンの共有財産なんだから」と返事をくれました。・・・私はこういう応援者の方々に支えられ、注視もされているんだと思わず身が引き締まりました。

 新しいパソコンは頑丈なデスクトップで、ACERという液晶の美しさにも定評のあるメーカーの機種です。

 

 

 VAIOノートは、1年前、某大型家電店で、偶然、昔の仲間だったデザイナーと出会い、今はパソコン販売員の法被を着て汗するその姿に、つい、売上に貢献しなきゃと思って、深く考えずに買ってしまったものでした。

 その後、何度か売り場を訪ねても、派遣で来ていたらしく、なかなか再会の機会がなく、今回のトラブルで駆け込んだときも会えずじまい。修理受付のお兄さんはマニュアルどおりの対応で、「直るわけないじゃん」と言いたげな冷たい態度。修理の見積もりが出るまで10日、未修理で戻してもらうまで1週間かかりました。大型店なのに、電話をしてもいつも話し中。・・・大事な仕事道具を量販店で買うもんじゃないとつくづく思い知らされました。

 

 

 

  

 ハードディスクに入っていた、締切間近のJA静岡経済連スマイルの取材写真が復活できるかどうか、できなければ撮り直しに行かねばと切羽詰まった中、以前、SBSのKさんに「ちょっとした修理や部品1個でも対応してくれる親切な店だから」と紹介してもらった近所の小さな電器屋さんに、ダメモトで預けたところ、半日もしないうちに「ハードディスクは無事だったよ」の電話。喜びいさんで店にかけつけ、データ保護のためにもバックアップはこまめに取ること、家ではデスクトップ型を使うことなどをアドバイスしてもらい、「映像の仕事をするならコストパフォーマンスのいい機種があるよ、Kさんも最近買ったばかり」と薦められたのがACERでした。価格は、大型店で提示されたVAIOの修理代よりも安かった・・・!

 パソコンに詳しい人ならおなじみのメーカーらしいのですが、私は初めて知るブランド。それでも、薦めてくれる店と、その店を薦めてくれたKさんへの信頼があれば、迷いはありません。昔、町の小さな酒販店で、無名だった静岡の酒を、その店の信用だけを頼りに買って感動したときの感覚と同じです。

 

 

 私は口に入るものに関しては、取材経験もあって、酒を買うならこの店、醤油はここ、味噌はここ、コーヒー豆もパンも、と買う店を決めているんですが、機械モノはどうも苦手で、大型店で有名ブランドが安く買えるならそれでいいとタカをくくっていました。

 でも、今回のことで、大型店で買うのが安心でおトクとは限らない、かかりつけのお医者さんみたいに、ベテラン修理職人のいる町の小さな電器屋さんを、大事に頼りにするほうが賢い、と実感しました。こういう店、大型店がハバを利かせるようになればなるほど、却ってニーズが増すんじゃないでしょうか。

 みなさんはかかりつけの電器屋さん、持っていますか?


大掃除の朝

2008-08-10 10:00:13 | 吟醸王国しずおか

 多忙な週末です。世間はオリンピック観戦&お盆休み突入モードですが、映画づくりなんか始めちゃったせいで、休みは全滅、仕事先からは締め切りを突っつかれ、ついでにパソコンはダメになるし、はがした足のツメをかばってヘンな歩き方&お風呂の入り方を続けて腰が痛くなるしで、さんざんな8月です。

 

 こういうときって、ちょっとした励ましの一言やサービスがジーンと来るんですね。ブログを見てくださった方の「自分の知り合いでパソコンに詳しい者を紹介するからハードディスクだけでも救済できるかも」というメールや、吟醸王国しずおか映像製作委員会メンバーの「よくあきらめずにがんばりましたね」という一言。疲れているときこそ、何気ないそんな言葉がすごく効きます。

 

 たぶん、世間的には、プロのライターならパソコンの情報管理ぐらいまともにしろよ、とか、映画だって自分の名を売るために蔵元や酒屋にカネをたかってるんだろう・・・なんて白い目で見てるんだろうと想像します。あるいは、20年もかかわっているテーマなら、カンタンに作れるだろう、作れて当然、みたいに過剰評価されているかもしれません。

・・・疲れているときは、こんなふうに悪い想像ばかり巡らしてしまうので、「がんばったね」「力になるよ」という声かけは、愚かで小さな自分をちゃんと見てくれる人がいるって解って気持ちをとてもラクにしてくれます。

 これ、私のような単純な人間だけに効くことかもしれませんが、自分と同じように疲れている人がいたら、気持ちが萎えるようなマイナス情報ではなく、少しでも気力が上向きになるような声かけをしようと思います。もちろんマイナス情報は看過できませんが、元気のあるときなら跳ね返せるものも、そうでないときはホントにヘコみますからね。相手の気持ちを追い詰めるような態度はいけないってこと、自分が弱っているときほど身に染みて解ります。失敗やヘコみも、たまにはいいクスリなのかもしれません。

 

 

 ゆうべは、気力アップメールに嬉しくなって気力がみなぎり、年末の大掃除以来、ちらかり放題だった部屋の大掃除を突然始めました。やらなきゃならない仕事は山積みなのに、掃除っていざ始めるとやめられなくなりますよね。結局寝不足で疲れが倍増した感のある今朝ですが、整理整頓したデスクを前に、清々しい気持ちで、まずはブログを書こう!と思った次第です。

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 応援してくださるみなさんの温かいお心遣いに、持てる力で精一杯お応えしようと、昨日(9日)、映像製作委員会会報誌『杯が満ちるまで』第2号を発送しました。今回は試写会のご案内も兼ねているので多めに刷って、お世話になった会員外の方々にもお送りしました。酒造りのドキュメントを作る意義やカメラマン成岡さんの朝鮮通信使撮影秘話、会員の応援メッセージなども紹介してますので、楽しみにお待ちください。

 

 

 

 

 

 

 ◆『吟醸王国しずおか』予告パイロット版試写会のお知らせ

20081月から6月まで撮影した一部を仮編集した予告パイロット版をいち早くご覧いただき、制作過程のご報告と、会員増強を目指す試写会を開催いたします。<入場無料、要予約>

○日時 830日(土) 1回目上映1730分 2回目1830分 3回目1930

○会場 静岡市クリエーター支援センター 3階プレゼンテーションルーム(静岡市葵区追手町416 TEL 054-205-4759  *静岡県庁南隣、旧青葉小学校)

○申込み しずおか地酒研究会(鈴木真弓) msj@quartz.ocn.ne.jp

*席数に限りのある試写ルームですので、必ず事前にご希望の回のご予約をお願いいたします。

 

 

◆『吟醸王国しずおかの軌跡~静岡酒のドキュメンタリー映画、間もなく完成、予告編を東京初上映』開催!

静岡県清酒鑑評会審査員としておなじみ・日本酒ジャーナリストで日本酒輸出協会理事長の松崎晴雄さんと、名著「日本の大吟醸」「杜氏という仕事」でおなじみ・エッセイスト藤田千恵子さんが、静岡吟醸への熱いエールを込め、予告パイロット版試写を兼ねたセミナー&パーティーを企画してくださいました。静岡酒だけをテーマにした松崎&藤田両氏の貴重な講話と、吟醸王国しずおか映像製作委員会会員の蔵元8社の銘酒&日本外国特派員協会パーティーホール自慢の多国籍料理が楽しめるスペシャル企画。首都圏在住の静岡酒ファンにぜひお声かけをくださいませ!

○日時 8月31日(日) 16時開場 16時30分開演 第1部セミナー&試写会、第2部パーティー(20時終了予定)

○会場 日本外国特派員協会(東京都千代田区有楽町1-7-1 有楽町電気ビル北館20階 TEL 03-3211-3161 *JR有楽町日比谷口前)

○会費 8000円

○申込み 日本酒市民講座(松崎晴雄)TEL 03-3260-5959  FAX 03-3260-5981 kikisake@dream.com


すいとんランチ

2008-08-07 20:55:24 | NPO

 昨日(6日)は私が敬愛してやまない女性2人―樹木医塚本こなみさんとNPO法人活き生きネットワーク代表の杉本彰子さんと一緒に、静岡グランドホテル中島屋の和食処ですいとんのランチを食べました。

 すいとんって、戦争中の貧しい食生活を振り返って平和と飽食の時代を考える意味で、この時期、特別メニューで出す店がありますよね。昨日は広島の原爆投下の日だからと仲居さんがとくに勧めてくれました。ホテルの店らしく、それなりに上品で洗練されたすいとんでしたが、健康に気を遣っている2人は大喜びで味わっていました。ホテルで上品にいただくすいとんってのも、何かヘン?と思いつつ、お疲れ気味の2人が、野菜たっぷりの風味豊かなすいとんの味に舌鼓を打つ姿に満足しました。

 

 

 こなみさん、彰子さんとは、(社)静岡県ニュービジネス協議会で出会い、かれこれ15年近いおつきあい。出会った当時、2人は女性起業家として飛ぶ鳥を落とす勢いで注目を集め、NPOの事例研修にチームを組んでニューヨークへ行ったりもしました。ひと回り年下の私は、職業人として、また女性として潔い生き方を貫く2人の背中を追いかけるのに精一杯でしたが、頼れる先輩や目標になる上司を持たないフリーランサーの身としては、2人の活躍が大きな励みとなり、2人が与えてくれるチャンスや仕事は、自分を大いに鍛える場となりました。

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 こなみさんは誰も手を出さなかった大藤の移植を成功させ、足利フラワーパークを集客数日本一観光植物園にし、一昨年のNHKプロフェショナルの出演によって、日本を代表する樹木医として名実共に知られるようになりました。

 彰子さんは長年の業績が評価されて一昨年は少子化担当大臣から、昨年は総理大臣から直接表彰を受けました。

 

 マスコミに取り上げられたり、お上から賞を貰うからエライというわけではありませんが、2人はそういう扱いをされて何ら不思議ではない、それ相応の仕事をしている人たち。バックにエライ人でもいて、推薦されて晴れ舞台に上がったわけではなく、本人たちはいたって自然体で、なんら偉ぶるところはありません。

 

 思うに、2人がスゴイのは、こうと決めたことに、爆走トラックのごとく突進し、途中で投げ出さないところ。馬力が続くのは、仕事でありながら仕事というよりも、いのちをかける、生きがいにするといったレベルで取組んでいるから。人がやれないことを成功させるのは、常識や慣習にとらわれず、対象物(人)の身になってどうしてもらいたいかを考え、口先だけでなく、ちゃんと実践するから。

 

 

 3人で会ったり食事する機会はめっきり少なくなってしまいましたが、いつ会っても2人の強烈なオーラは変わりません。異性と呑みに行くよりも、2人と会うときのほうが楽しくて気が楽で帰りには勇気や元気がもらえたりして、とても充実しています。もっとも、異性と2人で呑みに行く機会こそ、すっかりなくなってしまいましたが・・・。

 

 

 ランチの後は、静岡県商工会連合会の県産フルーツを使った新しいスイーツ開発事業の会議。上品とはいえ、すいとんを食べて飽食の暮らしを反省しなきゃと思った矢先、試作品のチョコ菓子を次から次に頬張り、夜は会議のメンバーで中華ディナーと紹興酒をさんざん食らってしまいました。

 

 

 食べすぎがたたってか、夜中に腹の調子が悪くなり、何度もトイレに起きるハメに・・・。時間が出来たら、粗食だけど生きる原動力につながるような、ちゃんとした?すいとんを作って食べようと誓いました。

 

 

 

 さて、今週一杯で『吟醸王国しずおか』予告版の編集作業にも一定のメドがつきそうです。自分の20年来の地酒への思いを、短いフレーズにしたテロップが、実際に映像に張り付いたのを見て、なんだかじんわり感動してしまいました。

 早く誰かに観てもらいたいような、いや、誰にも見せたくないような、そんな複雑な思いにさいなまれています・・・。


メッセージを伝える技量

2008-08-05 10:10:18 | NPO

 今日(5日)付けの静岡新聞朝刊の5面(農林水産面)、ちょっと雰囲気違うって感じた方も多いと思います。

 

 この紙面は、静岡新聞編集局整理部の平野斗紀子さんが作ったもの。平野さんといえば、静岡新聞出版局の名物エディターとして活躍され、私もライター稼業を始めた20ウン年前からおつきあいさせてもらっています。96年のしずおか地酒研究会設立時にも陰で何かとサポートしてくれて、現在、編集中の映画『吟醸王国しずおか』で使った当時の写真を凝視しては、「蔵元サンたちはみんな歳取っているのに、平野さんだけ変わらないなぁ」と懐かしんだり、当時、平野さんが手がけていた県農林水産部協賛の情報誌『旬平くん』の制作時のことを思い出し、「この頃から平野さん、農業について深い思い入れがあったんだなぁ」としみじみ感じています。

 

 比較的フランクな雰囲気の出版局とは違い、新聞の整理部に異動してからは、窮屈な思いの連続だったそうです。担当を任された農林水産面も、情報提供者(JAや行政など)目線になっている編集方針を読者目線に変えたい!と何度も上に掛け合い、3年目にしてようやく実現のはこびに。

 

 先日、一緒に京都旅行をしたとき、京極蛸薬師の小料理屋でさんざっぱら呑みながら「8月からやっと変わるのよ~」と嬉しそうに語っていました。

 

 新しくなった農林水産面。食の安全、表示偽装、穀物価格の高騰といったハードなニュースは社会面にまかせ、ここでは日頃、食に付いて身近に考え、行動する消費者(とくに子育て世代や健康長寿に関心の高いシニア世代)に、生産者の言動を伝えるメッセージ性の高い紙面づくりを心がけたようです。コーナータイトルのデザインやアイキャッチなども、平野さんの雑誌づくりのキャリアが生かされていて、ふだんこの紙面を見過ごしていた読者の眼もキャッチできるのでは、と期待しています。

 

 

 さて、ゆうべ、映画の編集作業をしていたら、活き生きネットワークの事務局から写真が届きました。2日(土)に静岡県男女共同参画センターあざれあで開かれた『活き生きネットワーク法人化10周年記念夏祭りバザー&コンサート』でのひとコマです。私は生爪ワレの右足親指をひきずりながら、丸一日、コンサートの司会役を務めたのです。

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 コンサートは、静岡英和学院大学の学生バンド・コンソメWパンチ、車椅子のシンガーソングライター森圭一郎さん、そして爆音戦隊スンプレンジャーの出演でした。

 

 

 

 スンプレンジャーって最近地方でよく見かけるローカル戦隊ヒーローショーをやる人たちかと思っていたら、大間違い! 本格的なロックバンドで、しかもアマとは思えない腕前。ツェッペリンやディープパープルをコピーしてるところを見ると、世代的には私と同じかそれより上ぐらい? とにかく演奏はプロはだしで、見かけにごまかされてはイケナイ・・・!と反省しました。子どもたちは見事に見かけにごまかされ、それはそれで狙い通りでしたけど。

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 メンバーは子どもたちとの記念撮影に快く応じ(もちろん私も司会役の特権を押し通して楽屋裏で一枚)、一人一人に「みんなとなかよくしようね」「あいさつをしようね」と書かれたメッセージカードを配っています。こういうパフォーマンスを地域の学校や施設やイベント等で披露し、06年には地域の子育て支援活動として評価され、男女共同参画に関する静岡県知事賞を受賞しています。見かけがおもしろい、カッコイイで終わるのではなく、彼らが何を伝えようとしているかを、親子がそれなりにキャッチしてくれるといいですね。

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 森圭一郎さんは、昨年の活き生きネットワーク七夕コンサートでもお会いした、プロのシンガーソングライターです。16歳のときに交通事故に遭って車椅子生活となり、21歳頃から音楽活動を始め、25歳のときギター1本で日本縦断の旅へ。引きこもりやニート、障害者、障害者といった社会的弱者への生活支援や雇用支援を行う活き生きネットワークのゲストとして最適任者の一人といえるかもしれませんが、私自身は、森さんの明るいキャラや爽やかなイケメンぶり、そして音楽性を含めたアーティストとしての魅力を素直に実感し、CDも2枚購入しました。

 

 ヘビメタスタイルのスンプレンジャーと、アコースティックギター1本の森圭一郎さんのステージを同時に観られる機会なんて、この日限りだったかもしれません。一見、特異に見えるスタイルでも、伝えたいメッセージが確かにあって、確かな演奏テクニックでしっかり伝えることのできる、彼らは、その意味でプロに違いありません。

 

 伝えたいことがあっても表現方法が未熟だったり、伝えたいものがないのに見かけだけはプロ仕様という作品が、世の中には多々あります。

 少なくとも今の自分には、伝えたいことが確かにあると自信を持っていえるのですが、未知の読者や視聴者にアクセスしてもらえる場がどれだけ用意できるか、作品自体の吸引力がいかほどなのか、ここは一番、踏ん張りどころ・・・ですね。


カッティングエッジ実践中

2008-08-04 16:15:32 | 吟醸王国しずおか

 先週、30分の長さに編集した『吟醸王国しずおか』予告パイロット版のコピーを家に持ち帰り、目下、全シーンを香盤表に書き出して、テロップ原稿と表示のタイミング、音響や音楽の指示などを書き加える作業をしています。

 

 シーンを分解する作業ばかり続けていると、全体の流れを見失うことになり、全体の流ればかりにとらわれていると、細かい部分が雑になりがちです。動画に文字(テロップ)を加える、真っ黒な画面に文字だけの説明を入れるときは、言葉をよくよく吟味し、数秒間で読ませて理解させるよう、簡潔で核心を突いた文章にしなければなりません。言葉を操る作業は、コピーライターの経験が多少は役立ちますが、動画の流れの中で活字がどれほどの効果を示せるのか、すべてを入れ込んだ映像を通しで見ないことにはピンときません。

 映像の編集というのは、未開の地を手探りで歩いて、ときには行ったり戻ったりして、真っ白な地図に新しい道を書き込む・・・そんな作業なんだとつくづく実感します。

 

 対象物をどう撮るかはカメラマンにまかせっきりだったので、編集段階で初めて、「このシーンの、この人の表情、もう少し静止したままで使いたいのに、カメラが移動してしまった」「ブリッジ(つなぎ)に使えるようなイメージ画(酒造道具、柱、屋根瓦、井戸水の流れ、空、雲、鳥、樹木など)が欲しいなぁ」といった欲も出てきます。ちゃんとした監督さんならば、撮影中にカメラマンにちゃんと指示できるんでしょうね・・・。

 私のようなど素人にこき使われる成岡さんも気の毒。彼も彼なりにいろいろ考えて、さまざまな角度や色調で撮ってくれているんですが、それでも、編集する時点で初めて気づく撮りこぼしってあるんです。

 

 撮影を始めてちょうど半年。この段階で、いったん、編集作業を体験してみるというのは、映像制作の経験がほとんどゼロの自分にとって、映画学校で勉強したり編集マニュアル本を読むよりも有益で、まさに生きた勉強!です。秋から始まる今期の酒造りでは、撮り方についていろいろ実験してみたいと思っています。