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偶然の祝福ー小川洋子

2021年08月11日 | 読書

評価5

小説家の「私」にまつわる7つの連作短編集。小川作品の「バックストローク」「貴婦人Aの蘇生」やアンネ・フランクにつながる物語が出て来て興味深い。珍しく小説家としての苦悩も垣間見られるような作品群ではあるが、安定の小川ワールド!

①失踪者たちの王国②盗作③キリコさんの失敗④エーデル・ワイス⑤涙腺水晶結石症⑥時計工場⑦蘇生

今回の小川ワード、「羊の血でぬられたナイフ」「マントルピースに取り残された入歯」「嘔吐袋」「調理台と冷蔵庫のすきまで作るホットケーキ」「リコーダー」「YHのイニシャルの入った万年筆」「アナスタシア」

「盗作」には作中の小説家のデビュー作として「バックストレート」が登場!この作品は「まぶた」の中の一作で、左腕が下せなくなった天才背泳ぎスイマーの話。「キリコさんの失敗」に出て来る万年筆を誤って焼却してしまうくだりはアンネの逸話からの引用だと思うし、万年筆のイニシャルがYHであることに驚く。小川さんの旧姓はな、なんと本郷洋子さん!そして、「蘇生」に出てくる読書と刺繍が好きなアナスタシアは、もちろん「貴婦人Aの蘇生」のロシア皇女!

一作家の作品をあれこれ読んでいると楽しいことがたくさんあります。まだまだ小川さんの未読本がたくさんあるので完全読破目指してガンバロー(笑)!