3月14日 読売新聞編集手帳
「遠く離れた…」と言うとき、
人はどのくらいの距離を思い浮かべるだろう。
〈ほととぎす自由自在に聞く里は酒屋へ三里豆腐屋へ二里〉。
不便と同居する風流人を詠んだ歌にもあるように、
2~3里(1里=約4キロ)はじゅうぶんに遠い距離と誰もが思う。
今回の東日本巨大地震では人家と樹木を根こそぎにして、
海岸線から“遠く離れた”2~3里も先、
10キロほど内陸に入った地域にまで津波がおよんでいる。
身を省みて、
津波とは堤防の釣り人や海沿いの住民が警戒するもの――
という思いこみがなかったとはいえない。
地震発生から津波来襲まで、
最も早い地域ではわずか30分であったという。
津波を伴う地震はどこで、いつ起きてもおかしくない。
「きょう」かも知れないその時、
限られた時間内にどう行動するか…。
海とも陸ともつかぬ無残な光景が問うている。
ニュースに耳をすますたび、
何十人の単位で死者・不明者が増えていく。
ほんとうならば教訓うんぬんはひとまず後回しにして、
いまはただ犠牲者に瞑目(めいもく)し、
不明者の無事を祈るときだろう。
地震大国の冷酷な現実が、それを許してくれない。
「遠く離れた…」と言うとき、
人はどのくらいの距離を思い浮かべるだろう。
〈ほととぎす自由自在に聞く里は酒屋へ三里豆腐屋へ二里〉。
不便と同居する風流人を詠んだ歌にもあるように、
2~3里(1里=約4キロ)はじゅうぶんに遠い距離と誰もが思う。
今回の東日本巨大地震では人家と樹木を根こそぎにして、
海岸線から“遠く離れた”2~3里も先、
10キロほど内陸に入った地域にまで津波がおよんでいる。
身を省みて、
津波とは堤防の釣り人や海沿いの住民が警戒するもの――
という思いこみがなかったとはいえない。
地震発生から津波来襲まで、
最も早い地域ではわずか30分であったという。
津波を伴う地震はどこで、いつ起きてもおかしくない。
「きょう」かも知れないその時、
限られた時間内にどう行動するか…。
海とも陸ともつかぬ無残な光景が問うている。
ニュースに耳をすますたび、
何十人の単位で死者・不明者が増えていく。
ほんとうならば教訓うんぬんはひとまず後回しにして、
いまはただ犠牲者に瞑目(めいもく)し、
不明者の無事を祈るときだろう。
地震大国の冷酷な現実が、それを許してくれない。