同じ心を、昔の人は歌に詠んでいる。
〈うらぶれて袖に涙のかかるとき人の心の奥ぞ知らるる〉。
さして昵懇(じっこん)の間柄でもなかったあの人が、
憎まれ口を叩き合ったこの人も…。
失意と逆境のときに触れる他人の情けほど、
骨身にしみてありがたいものはない。
米国はもとより、
中国やロシアを含む十数か国から救助隊が来日し、
東日本巨大地震の被災地で困難な救援活動に加わってくれている。
外電という形で届く“情け”もある。
英紙インデペンデントは1面全面を使って「日の丸」のイラストを掲げ、
日本語で
〈がんばれ、日本。がんばれ、東北〉
と書いた。
デイリー・ミラー紙は宮城県南三陸町の被災地ルポを載せ、
〈泣き叫ぶ声もヒステリーも怒りもない。
日本人は、黙って威厳をもち、
なすべき事をしている〉
と感嘆をもって伝えている。
イタリアでプレーしているサッカーの長友佑都選手がピッチで掲げた「日の丸」には
〈一人じゃない みんながいる!〉とあった…。
いま、こうして書いていて、文字がにじんでくる。
あの地震が起きてからというもの、
涙を燃料に毎日を生きている。
そんな気がする。