7月30日 海外ネットワーク
映画の都ハリウッドの観光名所のウォーク・オブ・フェームには
スターを称える名前を刻んだプレートが埋め込まれている。
そのなかで一番人気はおととし亡くなったマイケル・ジャクソン。
ゆかりの地には多くのファンが集まる。
世界中でその死が大きく報道され、
なくなった直後からCDやDVDの売り上げが急上昇した。
ビッグスターは死亡した後にも巨大な利益を生み出すという人気の高さを見せつけた。
エルビス・プレスリーが最初で、財団の代理人を務めていたマーク・ローズラー弁護士。
亡くなった有名人の権利を遺族に代わって管理する代理人ビジネスを手がけている。
扱っているのはジェームス・ディーンやイングリット・バーグマンなど
亡くなった有名人を中心に200人以上。
ローズラー弁護士
「有名人の名前・肖像などは亡くなっても無形の財産で残る。
故人のブランド化だ。」
有名人がかかわる権利としてよく知られているのが
CDや出版物など著作物に対して持つ著作権。
もうひとつは、有名人の名前や顔写真などを使って商品を作ったり、
宣伝をしたりするときに有名人本人が持っている権利で、
宣伝・広告を意味することからパブリシティ権と呼ばれている。
有名人の死後、この権利を弁護士が管理し、
商品を販売する会社から使用料を徴収、
収益は遺族などに与える。
インディアナ州に住むマーカス・ウィンズローさん(67)は、
ローズラー弁護士と契約を結んだことで生活が一変した。
ウィンズローさんはハリウッドの永遠のスター、ジェームズ・ディーンのいとこにあたる。
1955年、ジェームス・ディーンは24歳の若さで亡くなり、主演映画はわずかだったが、
いつまでも色あせない青春の象徴として死後50年余り経ってもカリスマ的な人気がある。
9歳のときに母親をなくしたジェームス・ディーンはウィンズローさんの両親に預けられた。
年の離れた従弟をジェームス・ディーンは可愛がってくれたと言う。
弁護士が管理するパブリシティ権によって、
毎年、日本円で数千万円の収入を得ている。
その一部は町にあるジェームズ・ディーン博物館の運営費にも使われている。
死後の権利を扱うビジネスでは、スターの死後も人気を衰えさせない努力が欠かせない。
関連商品が発売される前には一定の品質を保っているか厳しく審査する。
粗悪の品物が出回るのをふせぎ、スターのブランドイメージが傷つくのをふせぐ為である。
公式のウェブサイトも管理し、
故人にまつわる新商品やイベントなどの情報を掲載する。
ジェームスディーンのこのサイトには毎月世界中から数万件のアクセスがある。
「ウェブサイトを通してファンやライセンス契約を結んでいる企業、
これから結ぼうという企業に最新情報を届けられる。」
巨額の富を生み出す死後の権利ビジネス。
しかし州によってはスターの
“死後のパブリシティ権を認めない”ところもある。
実際に訴訟にまで発展したのが、アメリカを代表する女優マリリン・モンロー。
マリリン・モンローは生前ニューヨークに暮らしていた。
ところがニューヨーク州の法律では、
亡くなった人のパブリシティ権は認められていない。
このためニューヨーク州ではマリリン・モンローの関連グッズを作る際、
許可を得る必要はない。
マリリンの財産を管理する団体が権利を主張して争った裁判でも
パブリシティ権は認められなかったのである。
パブリシティ権をスターの死後も認めるかどうか、
アメリカでは州によって異なるのが現状である。
ニューヨーク州では亡くなった後では認められていない。
一方カリフォルニア州では死後70年間、
インディアナ州では死後100年間保護される。
ローズラー弁護士は、
全ての有名人の権利が平等に保護される法律の整備が必要だと主張する。
ローズラー弁護士
「こうした権利を守るのは難しい。
さまざまな法律が混在している。
亡くなった人のパブリシティ権を法律上どう位置付け保護するか
はっきりさせることが必要。」
マイケル・ジャクソンは、住んでいたカリフォルニア州などおよそ20の州で
パブリシティ権が認められる。
スターにあこがれる人たちがいる限り、
死後の新たなビジネスチャンスがまた大きく膨らもうとしている。