8月27日付 読売新聞編集手帳
秋の心で〈愁〉、
心に非(あら)ずで〈悲〉…いつぞや、
「心」を含む漢字をいくつか小欄で取り上げた。
土用の丑(うし)にちなみ、
菅首相に似合う字として蒲(かば)焼きの串に心、
〈患〉を挙げたのをご記憶の方もあろう。
居座りによる外交の停滞を国家の患いに喩(たと)えたつもりだが、
読者の方からお便りを頂いた。
〈患〉よりも〈忌〉が似合う、
とおっしゃる。
己(おのれ)が、
己がのパフォーマンスこそ忌むべきものだと。
言われてみればなるほど、
思い当たる言動が少なくない。
原発事故対応のヤマ場に官邸を留守にした現地視察、然(しか)り。
引きずり降ろされる形で辞めたくないメンツ優先の居座り、
然り。
電撃発表の向こう受けを狙って閣内の意思疎通を軽んじ、
公言したエネルギー政策の基本方針が一夜にして「個人の見解」にしぼんだ醜態、
また然り。
民主党代表選がきょう告示される。
誰が“ポスト菅”の重責を担うにしても、
〈忌〉の一字は受け継いではなるまい。
部首の「心」は名称を「したごころ」という。
票欲しさに、
信念を曲げて党内実力者にすり寄る下心も忌むべきものの一つだろう。
〈志〉に燃える新代表の登場を待つ。