8月22日付 読売新聞編集手帳
一昨年の政権交代前、
ある外務省幹部が民主党の外交政策を「天動説」と皮肉っていた。
「インド洋での海上自衛隊の給油活動は中止」
「在日米軍予算は削減し、普天間飛行場の沖縄県内移設にも反対」
確かに、
民主党の主張は、
自分が世界の中心であるかのようで、
国際協調の視点が弱かった。
政権公約(マニフェスト)でも
「予算の組み替えで16・8兆円を捻出する」などと訴えていた。
野党とはいえ、
なぜ、
あんな大風呂敷に自信たっぷりになれるのか、
不思議だった。
まさか
「政権さえ取れば、財源は何とでもなる」
という小沢一郎氏の言葉を本気で信じていたのではあるまいが……
多くの公約が予想通り破綻した今、
ようやく公約見直しが「ポスト菅」の民主党代表選の焦点に浮上してきた。
財源捻出に何の指導力も発揮しなかった鳩山前首相らが、
見直しに反対を唱えているのには、
あきれるほかない。
「公約を破った」と批判され、
次の選挙で落選することを恐れているだけでは、
路線を軌道修正する機会は失われる。
民主党に求められているのは、
非現実的な天動説の「コペルニクス的転回」だ。