8月18日付 読売新聞編集手帳
同じ数字にも、
語呂合わせはいろいろある。
文芸評論家の巌谷大四さんがある随筆に書いていた。
たとえば、
〈1564〉が『人殺し』では物騒だが、
『人、混むよ』ならば商家にはゲンがよかろう、と。
〈2011〉年も『フレー! イレブン』と読めば、
眠い目をこすりつつ“なでしこ”に声援を送った朝が胸によみがえる。
『フレー! ひとびと』と読んでみるとき、
全身の躍動によって彼女たちが無言の声援を送った被災地の人々が目に浮かぶ。
サッカー女子ワールドカップで優勝した日本代表チーム(なでしこジャパン)に、
きょう、
国民栄誉賞が官邸で授与される。
被災地に希望を与えるのは政府の仕事であり、
自身の献金疑惑などで足もとのおぼつかなかった菅首相は、
仕事の一部を肩代わりしてくれた“なでしこ”たちに
一抹の後ろめたさを感じているかも知れない。
授与式ではほんの少しでもいい。
恥ずかしそうな表情を見せてもらおう。
誰が次の首相になるにせよ、
民主党代表選に名乗りを上げる面々は
〈2011〉が間違っても『ふぬけの人々』などと読まれぬよう、
心して臨まねばなるまい。