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緑一色の国旗 ついに風前のともしび

2011-08-25 08:33:16 | 編集手帳



  8月24日付 読売新聞編集手帳


  世界で一番シンプルな国旗は? 
  「日の丸」と答えたいところだが、
  正解はリビア国旗である。
  緑一色、何の図柄もない。
  カダフィ氏がクーデターで王政を倒した8年後、
  1977年に制定された。

  それまではエジプトと同じ図柄であったのを、
  エジプトのサダト大統領が
  仇敵(きゅうてき)イスラエルを訪問したことに激怒したカダフィ氏が一夜にして改めた――と、
  吹浦忠正氏の監修した『世界の国旗』(学習研究社)にある。

  「一夜にして」となればデザインに凝る時間はなく、
  無地になったのも道理だろう。
  ひとりの人間の感情がそのまま法令になる独裁国家の実像を、
  国旗の成り立ちが物語る。

  独断と専制の象徴であった緑一色の命脈も、
  ついに風前のともしびであるらしい。
  反体制派が首都トリポリの8割ほどを制圧し、
  王政当時の国旗である赤、黒、緑の三色旗を掲げて歓喜する市民の姿が報じられている。

  イスラムの預言者マホメットが身につけていたターバンの色ともマントの色とも伝えられる緑は
  「高潔」を意味するという。
  これ以上の流血を招かぬよう、
  カダフィ氏には旗の緑に恥じない身の処し方があろう。
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