11月10日 NHK海外ネットワーク
日本大使館の前はフェンスが敷かれ近寄ることができなくなっている。
抗議する人は見えないが大使館の周囲はピリピリした空気が続いている。
元の時代の庶民の暮らしぶりを今に伝える北京の観光名所のひとつでは
三輪車で回るツアーは外国人に人気だが
反日デモ以降は日本人の姿がまったく見られなくなった。
中国の大手旅行会社は
先月1か月間に中国全体で約6,000人の日本人観光客を受け入れる予定だったが
すべてキャンセルとなりガイドは仕事を失った。
日本大使館のすぐそばにあるレストラン街もかつての賑わいは見られない。
北京市内のレストランは客が戻ってきている。
それでもまだ以前と比べると7割ほど。
店はデモがあった4日間営業をやめ
暴徒からの攻撃を避けるため中国の国旗を店頭に掲げるなどした。
(日本料理店経営者)
「政治的なことが起こるとどうしても一番危ない場所なので
今後反日デモが起こらないことを切に祈るだけです。」
(日本人客)
「表面的には危険を感じることはないが
仕事をやっていたりすると日本企業に対する冷たい目というか
なかなか厳しいものがあります。」
(中国人客)
「切っても切れない関係だから
もっと理性的に考えて行動した方がいいんじゃないかと思っています。」
北京市内を歩いても危険を感じることはない。
ただ日本に対する厳しい見方は以前にも増して強まっているように感じる。
「日本が悪いですよ。
戦争になるでしょう。」
「日本は好きではないですがもちろん平和がいいですよ。
戦争は双方にとって良くありません。」
「日本と中国の利益は密接に絡み合っているので
もっと友好的に付き合う方が良いと思います。」
反日感情が高まる一方で日本との良好な関係を望む人も数多くいる。
北京の大学院で電子工学を学ぶ李力さん(24)。
日中関係が悪化した今も日本の企業に就職したいという思いは変わっていない。
5日 大学で開かれた日本企業の就職説明会に参加した。
李さんのように日本の企業を目指す学生が主催者の予想以上に数多く集まった。
(李さん)
「日本企業は技術も高く色々な経験ができます。
日本と中国の政府がもめていても個人には影響しません。
争いはうまく解決してほしいです。」
日中関係が好転するにはまだしばらく時間がかかりそうだが
新しい体制に変わる節目の今こそ両国の関係改善をはかるべきだ
と訴えている人が中国でも少なくない。
貧富の格差や汚職などに対する国民の不満は強く
それにうまく対処できなければ党の存続が危うくなりかねない
そんな危険性を今の中国ははらんでいる。
そうした事情が対日強硬姿勢の背景にあることを十分踏まえた対応が必要。
また対外的に責任ある大国となりうるのか
それとも国益を前面に押し出して緊張を生み出す存在であり続けるのか
中国の行方は日本をはじめ国際社会全体にとって大きな関心である。