11月24日 NHK海外ネットワーク
ヨーロッパの中では信用不安の影響を最も受けているスペインでは
中央政府が進める緊縮策への強い反発が広がっている。
とりわけ独立志向の強いカタルーニャ州では
中央からの分離独立を求める声がこれまでになく高まりを見せている。
スペイン第2の都市バルセロナを州都とするカタルーニャ州。
古くから地中海貿易の拠点として栄え
現在は工業や観光業を中心としてスペインの国内総生産の5分の1を担っている。
バルセロナの街には世界的に有名な建築家ガウディの建物があちこちで見られる。
曲線を多用した独特の建物を一目見ようと世界中から大勢の観光客が訪れている。
多くの芸術家を輩出してきたバルセロナには
世界的に有名な文化財が数多く残されている。
そんな華やかな一面の傍ら
カタルーニャはスペインの中央政府に反発してきた長い歴史がある。
民族が異なり300年前にスペイン王国の支配下に置かれた後も
独立志向が強い地域として知られてきた。
いまでも独自の言語を守り続け
スペイン語と並んでカタルーニャの言葉のカタラン語を公用語としている。
そのカタルーニャでも信用不安の深刻な影響が広がっている。
景気の低迷に加え中央政府が進める厳しい緊縮策によって失業率は20%超。
バルセロナの中心地でも借り手の付かない集合住宅などが目立つようになった。
収入を失った人が空き家になった住宅に勝手に住み着くケースも増えている。
「勝手に使うのはあるいと思っていますが
ずっと放置されていたし私たちが使ってもいいじゃないですか。」
かつてカタルーニャがスペイン王国に支配された9月11日に
バルセロナでは150万人デモが行われた。
“カタルーニャがこれほど厳しい経済状況に陥ったのは
中央政府に不当に搾取されているからだ”
いま人々の不安は中央政府に向けられ今までに無く独立機運が高まっている。
「独立すれば私たちの金が奪われることはないはずだ。」
「300年経って独立のときがやってきたんだ。」
10月 カタルーニャ州のマス首相は任期を2期残しながら急きょ州議会を解散。
選挙に打って出ることで
自らが率いる独立支持派が躍進することができると判断したのである。
(カタルーニャ州マス首相)
「我々自身がカタルーニャの将来を決めるのです。」
「今回の投票では我々カタルーニャ人が
ヨーロッパの新しい国家をつくるかどうかが問われている。」
独立を支持するジョルディ・モンレアルさん(51)は
洋服の輸入業を営んできたが不景気で仕事がなくなった。
今では2人の子どもの月4万円の児童手当と父親の年金の一部を受け取りながら
細々とっ生活している。
カタルーニャが独立すれば必ず景気が好転し自分の仕事も増えると信じている。
(ジョルディ・モンレアルさん)
「カタルーニャ州の経済は他の地域より競争力がある。
独立すれば景気も良くなり暮らし向きも上向くはずです。」
モンレアルさんは選挙で独立支持派が勝利するよう仲間とともに活動を続けている。
(ジョルディ・モンレアルさん)
「それぞれの地域や有権者に合わせて作戦を考えよう。
独立への支持を広げていくんです。」
モンレアルさんは地元の老人会を訪れ
このままで名中央政府によって年金が削減されると訴えた。
「中央政府のせいで年金制度に問題が起きてしまう。
カタルーニャがスペインにとどまり続けるのはおかしいですよね。」
「カタルーニャに生まれた私たちはスペイン人ではなくカタルーニャ人よ!」
こうした独立の動きに中央政府は神経をとがらせている。
最も経済規模の大きなカタルーニャ州が独立を求めて混乱が広がれば
ただでさえ揺らいでいる国の信用がさらに失墜することになるからである。
投票日が迫る中中央政府のラホイ首相が自らバルセロナを訪れ
独立を目指すことはさらなる危機を招くだけだと訴えた。
(スペイン ラホイ首相)
「あなたたちを苦しめるようなことはしません。
皆さんはカタルーニャ人であるとともに
スペイン人 ヨーロッパ人であり続けてください。」
300年の歳月を経てカタルーニャが再び独立の旗を掲げることになるのか
出口の見えない信用不安はスペインの国の枠組みを大きく揺さぶっている。