11月17日 NHK海外ネットワーク
ASEAN10か国でも中国との関係を重視している国と
フィリピンやベトナムのように対立している国と別れて
決して一枚岩ではない。
経済的に中国に大きく依存するカンボジア。
過去5年間の外国からの投資額の半分近くが中国からである。
今回首脳会議で使われる政府庁舎も中国による約27億円の無償援助で建てられた。
プノンペン中心部のマーケットでは衣服、日用品などあらゆるものが売られているが
そのほとんどが中国からの輸入品。
商品には中国語の文字があふれ
値札には中国の通貨人民元が表示されているものまである。
中国企業の進出に伴い中国語の新聞も次々に発行されている。
現在8紙にまで増えた。
「中国語を勉強するために買う。
中国人をビジネスがしやすくなる。」
中国語を学ぶ学校も次々に開校しカンボジア全土に50ほどある。
教師は直接中国政府から派遣されている。
(中国語の教師)
「私は中国の文化を伝え両国の関係をより深めるという役割を担っている。」
(生徒)
「中国語を学べばよいところで働けるし素晴らしい将来につながると思う。」
両国の結びつきは経済面にとどまらない。
10月に入院先の北京の病院で亡くなったシアヌーク前国王。
胡錦濤国家主席を始め要人らが次々と調音に訪れ関係の深さを内外に示した。
今年7月に開かれたASEAN外相会議。
フィリピンやベトナムがそれぞれ
中国と対立する南シナ海での領有権争いを共同声明に盛り込むよう求めたが
カンボジアは議長国として強く反対した。
(カンボジア ホー・ナムホン外相)
「中国とほかの国の2国間の領有権争いに
ASEANの共同声明を利用することは受け入れられません。」
45年前のASEANの創設以来
初めて外相会議の声明が採択されない異例の事態となった。
今回の会議でも議長国カンボジアをいわば味方につけたい中国。
11月初め中国の外務次官がプノンペンを訪問し
カンボジアのホー・ナムホン外相と会談した。
外務次官はASEANとの連携を訴える一方で
東アジアサミットの場で南シナ海の問題を取り扱うべきではないと強調。
カンボジアに念を押す狙いがあったものとみられる。
「南シナ海の問題は我々の間で議論すべきだ。
ほかの国際的な協議の場に持ち込むべきではない。」
17日は18日からの首脳会議を前にASEANの外相会議が開かれた。
会議では7月の外相会議で深まった亀裂を埋めるのが先決といった状況で
フィリピンやベトナムは中国と争う個別の領有権問題は取り上げなかった。
まずはASEANが結束しなければ中国と渡り合ってはいけない
という現実的な判断があったものとみられる。
ASEANは南シナ海の平和的な解決に向け
法的な拘束力を持つ「行動規範」と呼ばれるルール作りを求めている。
18日の首脳会議や19日との首脳会談でこの問題を那覇市合う予定であるが
中国は自らの海洋権益の確保に支障が出かねないルール作りには消極的である。
このため10年前にASEANと中国が合意した拘束力のない
「行動宣言」を確認するにとどめ
「行動規範」についての具体的な議論は棚上げとなりそうである。
ASEANは中国のしたたかな外交に振り回されている感があり
南シナ海は3年後に迫ったASEANの経済的な統合にも暗い影を落としている。