9月7日 NHK海外ネットワーク
アメリカ西部のオレゴン州ニューポート。
港のそばにあるモニュメントは震災の津波で青森県からこの町に流れ着いた桟橋の一部である。
住民たちが去年設置した。
日本の苦難を忘れず防災の意識を高めていこうというのである。
(地元の住民)
「日本とオレゴンにはよく似た地震の断層がある。
東日本大震災のような津波がいつ起きてもおかしくない。」
そのオレゴン州の海岸に去年あるものが流れ着いた。
神社の鳥居の一部「笠木」と呼ばれる部分だった。
見つけた男性はかつて日本で暮していた時に鳥居を目にしていた。
(見つけた人)
「すぐにそれが何かわかった。
携帯カメラで撮影し地元新聞社に送った。」
鳥居漂着の知らせは海岸を管理するオレゴン州公園局に伝わった。
オレゴン州では漂着物の清掃や処分を行っているが場合によっては補完することもある。
(オレゴン州公園局 クリス・ハベルさん)
「ただのがれきではない特別なものだと思いすぐに保管することに決めた。」
この鳥居はどこから来たのか。
相談を受けたオレゴン州の日本庭園で働く内山貞文さんは鳥居の写真を見てあることに気が付いた。
鳥居には昭和63年に奉納されていたことが記されていて
こうした情報を頼りにどこの神社のものか探すことにした。
今年5月には被災地の宮城県南三陸町と気仙沼市を訪問。
情報の提供を呼びかけた。
そして帰国後
鳥居にあった名前は青森県八戸市の高橋さんではないか
という情報が被災地の人から寄せられた。
(内山貞文さん)
「信じられない。
いまだに。
名前も間違いないと高橋さん本人が確認。
これは大変なことだと。」
鳥居に名前が記されていた青森県八戸市に住む高橋利己さん。
漁業で暮らす高橋さんは26年前地元の漁港にある小さな神社に漁の安全を祈願し鳥居を奉納した。
しかし津波が神社の様子をすっかり変えてしまった。
赤い柱がわずかに残っただけだった。
(高橋利己さん)
「全部流れてしまってから鳥居がないことに気づいた。
あっという間であきらめるほかない。
津波だから。」
神社には震災後 新しい鳥居が祭られた。
流された鳥居が見つかるとは夢にも思っていなかったと言う。
(高橋利己さん)
「写真を見たら間違いない。
名前もあった。
自分のものだとわかった。
びっくりしてよくアメリカまで行くものだと驚きの一声。
本当に感謝している。」
先月 内山さんは報告のため州の公園局を訪れた。
(内山貞文さん)
「ここに相手ある高橋さんという方は現在85歳でお元気だそうで。」
(オレゴン州公園局 クリス・ハベルさん)
「鳥居がどこから流れてきたかわかり
今まで保管してきたかいがあった。」
(内山貞文さん)
「見知らぬところから流れてきた見知らぬものを大事に保安してくれた。
人と人とのつながりはありがたい。
大事にしていきたい。」
アメリカで大切に保管されていた鳥居。
太平洋を挟んで向かい合う日米の人たちの心を結びつけた。
9月5日 おはよう日本
東京浅草橋にあるITサービス会社。
このオフィスに従業員に人気の置き〇〇がある。
“置き菓子”。
いつでも好きなお菓子を買うことが出来る。
なんでもひとつ100円。
ケースに約10種類の菓子が入っており飽きないように週に一度品物が入れ替えられる。
置き菓子の下の冷蔵庫にはアイス。
(代表取締役)
「これが一番。
これ大好き。」
「残業しているときとかちょっと休憩したい時に買う。」
この置き菓子を手掛けるのが大阪の大手菓子メーカーである。
全国10万を超える企業においてもらっている。
富山の置き薬にヒントを得て始めたこのビジネスは去年の売り上げは45億円。
経営を支える大きな柱である。
(大t菓子メーカー 古藪啓介部長)
「職場はよく考えたら朝から夕方までいる場所。
オフィスにあるからこそ従業員に一番近い場所にあるからこその提案がしたい。」
この置きビジネスは今や菓子メーカーだけではない。
大手コンビニチェーンも新たに参入した。
コンビニに買いに行くのはちょっと面倒だと言う声にこたえて
オフィスに入り込め
と始めた。
棚にはお菓子に加えて焼き菓子など会社のリクエストに応じてカップめんなど品ぞろえを変えくれる。
(利用者)
「このあたりのコンビニはとても混むのででたすかっています。」
(大手コンビニチェーン 本多利範常務)
「通常のコンビニが出す店舗よりも小さい商圏。
無人の店舗で客に喜んでもらうことが出来る。
我々にとってもメリットがある。」
この置きビジネスはお菓子だけではなく
いまやオフィスに色々な商品が置いてある。
導入する企業としては手軽にそれほどコストをかけずに福利厚生を補いたいという背景がある。
ベンチャー企業が開いたイベント。
福利厚生を担当する約30社の社員が招かれた。
そこで紹介されたのが置き惣菜。
どれもレンジで1分ほど温める。
“本格的な食事をオフィスで”がうたい文句。
(参加者)
「すごくおいしい。」
「コンボ導入を検討したい。」
先月からこのサービスを利用しているIT関連企業。
社員60人が働いている。
食堂はコストがかかるため置けない。
その代わりとして置き惣菜の導入を決めた。
社員が支払うのは惣菜1品につき100円ないし200円。
残りの代金は会社が してくれる。
IT業界は今人材の争奪が激しくなっている。
職場環境をよくすることで優秀な社員を獲得し永く働いてもらおうと考えている。
(IT関連会社 社長)
「よりいい人材に来てもらうためにもより魅力的なオフィスづくりの必要がある。
福利厚生を今後も充実させていきたい。」
ソフトウェア制作会社に置き野菜が届けられる。
トマトにベビーコーン、ブルーベリーなど生野菜やフルーツを置いている。
この会社では社員に無料で野菜を提供している。
導入のきっかけは社員の食生活。
単身赴任が多いこの会社ではアンケートをとったところ回答した社員の7割が野菜不足と答えた。
(社員)
「単身赴任で地方から来ているのですごく助かっている。」
生野菜の置きビジネスは現在は100を超える企業が導入している。
仕事をしながらでもというニーズは高くサービスを行う会社では手ごろで新鮮な野菜の確保に必死である。
千葉県にある農業生産法人でいま目を付けているのがラディッシュ。
(置き野菜サービス運営会社 川岸亮造社長)
「野菜は好き嫌いも多い食べ物だと思う。
手に取ってみて以外とおいしいというところにつながればその後も使ってもらえると思う。」
広がりを見せる置きビジネス。
今後も有望な市場として成長すると専門家はみている。
(三菱UFJリサーチ&コンサルティング 高橋千枝子さん)
「企業の中はいろんな人が長時間過ごすのに販売拠点がなく空白地帯だった。
非常にビジネスチャンスだと狙っている。
“従業員消費市場”が生まれつつある。」