5月30日 おはよう日本
世界中で利用が拡大する航空機。
空の旅をより安全に快適にするための斬新なアイデアを競うコンテストがドイツのハンブルグで開かれた。
2年に1度開催されるフライ・ユア・アイデアである。
滑走路から充電するシステムや
機内のごみ処理を劇的に早めるアイデア。
500超のチームが競い合った。
今回は日本勢として初めて東京大学のチームが決勝まで勝ち進んだ。
コンテストは
ヨーロッパの航空会社が若い人たちに航空業界に関心を持ってもらおうと6年前から始めた。
世界各地から500超のチームが参加したが
決勝に残ったのはわずか5チーム。
通過率1%未満という狭き門である。
日本チームが今回目指したのは
鳥の群れが航空機に衝突するバードストライクの防止である。
6年前にニューヨークのハドソン川に旅客機が不時着したのもバードストライクが原因とみられているが
それを防ぐ具体的な方法はまだ確立されていない。
そこで東大チームはあるものに注目した。
チームが注目したのは小型の無人機ドローン。
ドローンにある役割をさせることでバードストライクを防ぐことが出来ると考えた。
それは羊を追いかける牧羊犬。
空港近くを飛ぶ鳥の群れをドローンを使って囲い込む。
そのまま空港から離れた営巣地まで追い立てようというのである。
メンバーは航空工学などを学ぶ学生たち5人。
リーダーの宮谷聡さん。
羽田空港だけでも年間200件を超えるバードストライクを解決しようと
去年チームを起ち上げた。
(宮谷聡さん)
「ドローンで誘導することで
人間にも鳥にも住みよい空を作ろうというのが目的。」
ところがいきなり課題にぶつかった。
コンピューターでシミレーションを重ねたところ
何度やっても鳥はドローンの列の上下から逃げて行ってしまうのである。
どうすればうまく誘導できるのか。
数か月かけて1つの方法にたどり着いた。
センサーを着けた30機のドローンが連携して飛び
群れ全体を囲い込むようにすれば
100羽の鳥を逃がさず誘導できるとシミレーションした。
(宮谷聡さん)
「ドローンで鳥を誘導するということは世界のどの研究者もやっていないと思う。
予想通りにはいかないことばかり。
試行錯誤を重ねてここまでたどり着いた。」
ドイツでの本番前日。
チームは最終チェックを行っていた。
発表はすべて英語。
繰り返し練習を行う。
さらにバードストライクの問題を少しでも身近に感じてもらおうと細かい演出も考えた。
(宮谷聡さん)
「明日のプレゼンテーションのためにやるべきことは全部やったと思う。
ここまで来たからには絶対優勝したい。」
5月27日 コンテスト本番。
各チームの発表時間は20分間。
注目されると大手航空機メーカーから直接声がかかり
アイデアが具体化するチャンスも広がる。
(オランダの大学チーム)
機体の振動を防ぐことはできません。
でもそれを活用することはできます。
ライバルのオランダチームは飛行機の翼が揺れる現象に注目。
この振動を生かして飛行中に発電するシステムを発表した。
中国のチームはセンサー技術を応用することで
空港で飛行機をより安全に誘導できる仕組みを発表した。
日本チームの出番になった。
整備士は私に尋ねました。
“バードストライクについて知っているかい”
宮谷さんはバードストライクについて教えてくれた整備士を演じながら発表する。
ドローンの配置を改良し
ラグビーボールのような形で連携して飛ばす方法を提案した。
私たちには解決策があります。
これでバードうトライクは起きません。
「コンテストの優勝チームは・・・オランダです。」
優勝は逃したが日本勢として初めての入賞である。
(宮谷聡さん)
「どのチームが1位になってもおかしくないと思っていた。
結果に納得している。
良いチームメートを持てて良かった。」
主催側は日本チームのアイデアを高く評価している。
(主催したメーカー幹部)
「バードストライクは航空会社にとって大きな負担です。
日本チームの解決策は斬新で素晴らしいものでした。」
未来の航空業界を担う学生たちの夢の舞台。
ここから未来の飛行機の技術が生まれていく。