6月8日 編集手帳
中世ウクライナで栄えた「キエフ・ルーシ公国」は君主の娘をフラン ス、ノルウェー、ハンガリーの王に嫁がせ、
欧州の大国として君臨した。
『物語 ウクライナの歴史』(中公新書)に詳しい。
相当の外交力があったのだろう。
今もロシアに脅かされながら、
プーチン大統領と反目するジョージア前大統領を州知事に起用したり、
ロシアへの債務返済停止をちらつかせたりと、
あの手この手で抵抗している。
そのウクライナを安倍首相が訪問した。
北方領土を占拠され、
別の隣国の威圧も受ける国として「力による現状変更は許さない」と内外に訴え、
併せて「日本はプーチンに甘い」といぶかる米国の疑念払拭をもくろむ。
プーチン氏はおもしろくあるまい。だが、
「対日関係の悪化は避けたいはず。
黙認せざるを得ない」と読む。
したたかな外交を試みたか。
ウクライナ人を父に持つのが、
元横綱の大鵬だ。
かつて「横綱は、
相手によってどんな相撲でも取れなければならない。
どんな不利な体勢になっても、
対応できないといけない」と小紙で語っていた。
海千山千の国々がひしめく国際社会での外交にも通じる。