6月5日 おはよう日本
国際的の関心が高まっている日本の歴史認識。
それに関する1つの声明文が注目を集めている。
5月 欧米の日本研究者や歴史家が連名で発表したもので
いわゆる従軍慰安婦などの問題に関して偏見のない清算を呼びかけている。
この声明に賛同する研究者は発表した当初187人だったが
徐々に増え
457人にまで広がりを見せている。
「JAPAN AS NO.1」のエズラ・ボーゲル氏や
ピュリツァー賞を受賞した「敗北を抱きしめて」の著者ジョン・ダワー氏など
知日派の中でも著名な研究者も名前を連ねている。
彼らの声明は私たちに何を問いかけているのか。
タイトルは「日本の歴史家を支持する声明」。
戦後70年の日本の歩みが世界の祝福を受けるには
いわゆる従軍慰安婦などの歴史認識問題が妨げになっている指摘。
そのうえ
この(慰安婦)問題は日本だけでなく
韓国と中国の民族主義的な暴言によってもあまりにゆがめられてきました
元「慰安婦」の被害者としての苦しみが
その国の民族主義的な目的のために利用されるとすれば
それは問題の国際的解決をより難しくするのみならず
被害者自身の尊厳をさらに侮辱することにもなります
しかし同時に
彼女たちの身に起こったことを否定したり
過小なこととして無視したりすることも
また受け入れることはできません
過去の過ちについて可能な限り全体的ででき得る限り偏見なき清算を
この時代の成果として共に残そうではありませんか
この声明の呼びかけ人の1人 アメリカ コネティカット大学のアレクシス・ダデン教授。
歴史認識を巡る政治的な対立が歴史の検証を妨げているのではないかと
懸念を抱いたことがきっかけだと言う。
(コネティカット大学 アレクシス・ダデン教授)
「私たちが歴史問題と向き合っているのは将来のためだと信じています。
私たちは20世紀の歴史を正確に記録に残す必要があります。
21世紀に過去の暴力を繰り返さないためです。」
この声明の作成にかかわった1人 ハーバード大学 アンドルー・ゴードン教授。
アメリカでの日本史研究の第1人者で去年9月から日本に滞在し研究や講義を行っている。
(ハーバード大学 アンドルー・ゴードン教授)
「私たちが重要だと考えたのは
歴史評価における偏狭なナショナリズムや言論に対する制限が
日本だけの問題ではないということです。
そのことを声明の中に適切な形で盛り込むことが重要だと思いました。
その点もしっかり声明に盛り込まれたと考えています。」
声明に賛同した研究者たちの間には
いま日中韓の3カ国で
異なる立場の意見を認めない雰囲気が広がっているという危惧がある。
例えば日本ではヘイトスピーチなど在日韓国朝鮮人に対する差別的な言動。
韓国では
“20万人の少女が日本軍に強制連行されたという認識は実態と異なる”
と主張した大学教授が大きな反発を受け
裁判所が本の出版を差し止める決定を下した。
(ハーバード大学 アンドルー・ゴードン教授)
「攻撃されることなく自由な発言ができるかという点で
今の雰囲気は過去に比べて制限されていると感じます。
こうした現実を指摘することによって
歴史家同士が自由な気持ちで議論できる土俵を作りたいと思いました。」
長年ゴードン教授と親交がある研究者 五百旗頭真さん。
防衛大学校の前の校長で今回の声明を評価している。
(五百旗頭真さん)
「戦争の過去についての自己批判・反省をして
今の普遍的価値を持って処すべきという議論ですね。」
(ハーバード大学 ゴードン教授)
「そう聞くときわめてうれしいですね。
私たちも声明を人に読んでほしいし
反発よりは考えていただきたかった。」
今回の声明に賛同できないという研究者もいる。
その1人 現代史家の秦郁彦さん。
慰安婦について
“日本の官憲による組織的な強制連行はなかった”という立場である。
秦さんは声明が
“慰安婦の数について永久に正確な数字が確定されることはない”
などと表現していることに違和感がある。
(現代史家 秦郁彦さん)
「誰も慰安婦の数を計算しようとする人もいない。
ここまで言えるとかそういうことをやってみようというのではなくて
数が永久に分らないと放り出してしまうのはどうかと思う。
歴史家はあくまでも事実を忠実に再現していく。」
さらに秦さんは声明には政治的な思惑もあるのではないかと推測している。
(現代史家 秦郁彦さん)
「憶測すれば阿部首相が8月に談話を出すと言われている。
それを意識しての呼びかけなのでは。
歴史家としての任務を放置してそういう政治的策動に巻き込まれるのは避けるべきだと思う。」
ゴードン教授は今回の声明が歴史と向き合うきっかけになってくれればいいと考えている。
(ハーバード大学 ゴードン教授)
「私の希望は
多くの日本人の学者や歴史研究家・市民に話し合ってもらうことです。
我々の役割は一部にすぎません。
日本政府などの当事国同士が何らかの声明を出すことで
未来志向でありながら
過去を率直に見つめ
東アジアの可能性が実るような道を見出すことを願っています。」
ゴードン教授は
“自分たちアメリカ人も歴史を完全に振り返っていない。
過去の歴史問題に向き合うことはどの国にとっても難しいことだ。”
と話している。