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茨の道を香り高い道に変えて

2020-02-03 07:00:00 | 編集手帳

1月16日 読売新聞「編集手帳」


茨(いばら)とは、
薔薇(ばら)などトゲのある植物の総称である。
茨の道、
というと、
苦難の多い人生の意味に転じてしまうが、
江戸期の俳人・与謝蕪村は茨を悪いように詠まなかった。

<花いばら故郷の路(みち)に似たる哉(かな)>。
細い道を歩いて、
咲き乱れる野茨の香りに行き合った。
そういえば子供の頃、
そっくりの小道に遊んだなあ、
と解釈される。

ショッキングなニュースが駆けめぐったとき、
蕪村の句を思い浮かべた。
茨の道をふたたび、
香り高い道に変えてほしいと。
遠征先のマレーシアで交通事故に遭い、
けがをしたバドミントンの桃田賢斗選手(25)である。

ふたたび、
と先に書いたわけは多くの方がお分かりだろう。
賭博問題で長く謹慎処分になった桃田選手は、
過去と真摯(しんし)に向き合いつつ、
自分の心と体を鍛え直した。
目下の世界ランキングは1位。
茨の道をやっと通り過ぎ、
栄光の場所に近づいたと思えたところで、
不運な事故に見舞われた。
試練がまた始まった。

蕪村には次の句もある。
<愁ひつつ岡にのぼれば花いばら>。
悲運を思いながらも、
坂道をひたひたと歩み続けてもらいたい。
きっと、
美しい花に会える。

 

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