1月23日 読売新聞「編集手帳」
米国の田舎町が舞台のスティーブン・キングの小説『IT』(文春文庫、小尾芙佐訳)に、
小学生のベンが俳句を作る場面がある。
<きみの髪は冬の火
一月のおき火
ぼくの心もいっしょに燃える>
<陽の光が髪の毛の中に潜り込んで燃えている>かに思えた好きな子への気持ちを、
英語の17音節で表したものである。
ベンは俳句を国語の授業で習い、
短い文節に感情を凝縮する発想に魅せられたという。
ラグビー日本代表のジョセフ・ヘッドコーチも俳句少年だったのだろうか。ワールドカップで自作の句により、
選手を鼓舞したのは記憶に新しい。
強豪アイルランドを迎え撃つ前だった。
連句のような仕立てになっている。
<誰も勝てるとは思っていない
接戦になるとさえ思っていない
でも誰もどれだけハードワークをしてきたか
どれくらい犠牲を払ったか知らない
やるべきことはわかっている>
アスリートの魂を凝縮しているようで、
いま思い出しても心を揺さぶられる。
競技を超えて通じるものがあるだろう。
東京五輪の開幕(7月24日)が半年先に近づいた。
感動、
感動の日々が待ち遠しい。