1月21日 NHKBS1「国際報道2020」
アメリカの音楽界で最高の栄誉とされるグラミー賞。
最優秀ラージジャズアンサンブルアルバム部門にノミネートされている
ジャズ作曲家の挾間美帆さん(33)。
この部門にノミネートされた日本人の作曲家としては15年ぶり2人目である。
ジャズ作曲家の挾間美帆さんは
自らが率いる楽団 m_unit の番のリーダーとしてニューヨークを拠点に活動している。
挾間さんの音楽は
ジャズのビッグバンドをベースにしながら
弦楽器やホルンなどクラシック音楽の要素を取り入れているのが特徴である。
その独創性が高く評価され
今回 最新アルバム「Danser in Nowhere」が第62回グラミー賞の候補に選ばれた。
(ジャズ作曲家 挾間美帆さん)
「想像すらしていなかったことなので驚きました。
自分がやりたいと思って作ってきた音楽が
より多くの人に聞いてもらえるチャンスを得たというのは
純粋にうれしいです。」
5才からクラシックの作曲を学び始めたという挾間さん。
音楽大学に進み
そこで出会ったのがジャズのビッグバンドだった。
それまでとはジャンルの違うビッグバンドの音にすっかり魅了された挾間さん。
2010年には名門マンハッタン音楽院に留学。
そこで本格的にジャズの作曲を学んだ。
そして卒業後
自らのバンドm_unitを結成し
CDデビューを果たしたのである。
ジャズの本場ニューヨークで暮らしながら第一線で活躍する挾間さんだが
アメリカに渡った当初はレベルの高さに圧倒されたという。
(ジャズ作曲家 挾間美帆さん)
「“どうやってサバイブして(生き残って)いくんだ“
“こんなレベルの高い街で”
って思った。
自分探し
自分のブランド作り
自分の強みをどうやってプロデュースしていくんだと
毎日必死でした ほんとに。」
自分の強みとは何か
悩んでいた挾間さんに大きな影響を与えたのが
当時マンハッタン音楽院の教授で
ビッグバンドジャズの巨匠 ジム・マクニ―リーさんだった。
(ジャズ作曲家 挾間美帆さん)
「ジャズだから適当に何かいい感じの曲を作っていけばいいかなと思い
良い感じの適当なものを持って行ったら
『君そうじゃなくて ちゃんと意味のある音をね』
『この音は何の意味があるの?』って言われて
それは大学でクラシックを勉強していたときに
教授に聞かれ続けていたことと全く同じだったんです。
それにはさすがにちょっとショックを受けて
あまりボーダーなんてないんだよなと。」
“ジャンルという固定概念にとらわれる必要はないんだ“と気づかされた挾間さん。
この経験がクラシックとジャズを融合させた独自の音楽性を生み出す土台となったのである。
マクニ―リーさんは挾間さんの作品をこう評価する。
(マンハッタン音楽院 元教授 ジム・マクニ―リーさん)
「彼女は伝統的なビッグバンドに弦楽器を組み入れることで
独自のスタイルを確立した。」
挾間さんの音楽はどのようにして生み出されるのか。
(ジャズ作曲家 挾間美帆さん)
「そのままだと思いっきり完全なる宗教音楽みたいな感じになるので
それをどう格好良くしようかなと思って。」
日本の金沢のオーケストラのために書いている楽曲。
金沢とゆかりのあるキリシタン大名 高山右近にちなんで
讃美歌をモチーフに選んだという。
(ジャズ作曲家 挾間美帆さん)
「作曲は特に自分の中では
アーティスティックなものを作るのであれば
そこに何か意味があってほしいという気持ちは当然だし
今でも自分はそういうふうに
必ずきっかけとか意味がある音をかけるように心がけていますね。」
独自の音楽で世界に注目される挾間さん。
これからもニューヨークを拠点に新たなジャズの世界を切り開いていきたいと考えている。
(ジャズ作曲家 挾間美帆さん)
「自分のブランドはここで築かなくてはならない。
なぜなら
ここは世界中からものすごくレベルの高い音楽家たちが集まっていて
そのレベルは桁違いで
この人たちと一緒に音楽をやらないでどうする
そういう天国のようなフィールドが整っているわけです。」
挾間さんは近年ドイツやオランダの名門ビッグバンドと共演したほか
去年10月にはデンマークのビッグバンドの首席指揮者に就任し
ヨーロッパにも活躍の場を広げている。