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コミックにハマる

2020-02-28 07:00:00 | 編集手帳

2月9日 読売新聞「編集手帳」


 何年か前、
本紙の人生案内で読んだ相談である。
漫画の登場人物の死から立ち直れない。
涙が止まりません…
精神科医の野村総一郎さんの回答にやられた。
「全巻読みました。
 ハマりました。
 若い感性なら不思議はない。
 現実の出来事でも大いに感情移入を続けていってほしい」

出版不況の中、
コミックスが元気だという。
昨年、
電子はもとより紙の本も販売額が前年を上回った。
ヒット作、
吾(ご)峠(とうげ)呼世晴(こよはる)さんの『鬼滅(きめつ)の刃(やいば』(集英社)は年の暮れ、
あちこちの書店が「品切れ中」「入荷待ち」の貼り紙を掲げていた。
初版100万部が瞬く間にはけたそうだ。

先週出た最新刊のそばには買い占め防止か、
「お一人様1冊で」の但(ただ)し書きがあった。
凄(すさ)まじい人気、
作品の力に素直に驚く。
主題の鬼は古来、
様々な物語が編まれて――
といった衒学(げんがく)的な解説はやぼの極みだろう。
物語は佳境だ。
ただハマるのが正解かと。

半世紀前の告別式の話を思い出す。
『あしたのジョー』で主人公のライバル、
力石徹が落命したおり、
数百人が集い、
死を悼んだ。
僧の読経に焼香、
弔辞を書き、
指揮したのは劇作家の寺山修司だった。

 

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