2021年2月16日 読売新聞「編集手帳」
古来の災害を調べてきた歴史学者の磯田道史さんは、
現在は「災後」ではなく「災間」だと述べている。
地震、津波、風水害…常に災害と災害の間に生きていて、
この現実から逃れられないと。
近く発生から10年を迎える東日本大震災の被災地である福島、
宮城を震度6強の地震が襲った。
けが人多数、
建物の破損などが報告されたものの、
亡くなった人がいるとの報を聞かない。
深夜の突然の強震だったにもかかわらず、
である。
多くの家庭で、
家具の倒壊や落下物への警戒がされていたからだろう。
災間の備えの結果とみていいのではないか。
すこしだけホッとできたのもつかの間、
今来ている災間は忙しい。
低気圧が急発達し、
東北に激しい雨が降り注いだ。
土砂崩れをはじめ地震で緩んだ地盤の崩壊が懸念されている。
念のための避難が命を守る場合がありそうである。
磯田さんは「起きてもいないことを想像することが防災の生き方だ」とも語る。
「信長が殺された時、
京都で戦う作戦を持っていたのは秀吉だけ。
勝者の法則です」。
災害と災害の間に生きる現実を受けいれつつ、
勝利することをめざそう。