2021年3月4日 NHKBS1「キャッチ!世界のトップニュース」
ワクチンの公平な分配を目指し
WHO(世界保健機)やユニセフ(国連児童基金)などが主導する国際的な枠組み
COVAXファシリティ。
現在190の国と地域が参加している。
先進国など98か国が資金を拠出しワクチンの開発などを支援。
途上国など92か国を含むすべての参加国が
自国民の人口20%を上限にワクチンを受け取ることが出来る仕組みである。
2月アフリカでCOVAXによる供給が始まった一方
公平な分配への課題は山積している。
2月24日西アフリカガーナに届けられた新型コロナワクチン。
COVAXによって供給される世界初めてのワクチンである。
(ユニセフ ガーナ事務所代表)
「COVAXのワクチンが供給された歴史的な瞬間です。」
2日後には同じ西アフリカのコートジボワールにもワクチンが到着。
3月1日にはそれぞれの国で医療従事者への接種が始まった。
COVAXで途上国への供給を担当するユニセフ シュライバー氏。
COVAXでの供給が始まったものの課題は山積しているという。
(ユニセフ シュライバー氏)
「ワクチンの供給は先進国でも遅れています。
とても複雑なことなんです。
医療体制がぜい弱な国であればその難しさは増します。」
最大の課題は
低温での保存が必要なワクチンをどう運び届けるか。
途上国では多くの医療施設で電気がなく電化製品が使えない。
そこで活用が期待されているのが太陽光などで動く冷蔵庫である。
ユニセフがこれまで途上国で肺炎などのワクチンを配るため設置してきたものである。
(ユニセフ シュライバー氏)
「太陽光で動く冷蔵庫を使えばワクチンを保存することが出来ます。
すでに4万台が設置されています。
多くのワクチンが供給されるようになるので
受け入れ準備が必要です。
今年の夏までに低温輸送体制を強化しなければなりません。」
途上国で始まったばかりのワクチン接種。
一方世界ではすでに医療従事者や高齢者などへの接種をほぼ終え
リスクの低い若者への接種が始まっている国もある。
(WHO テドロス事務局長)
「一部の国では
他国の医療従事者や高齢者よりも先に自国の健康な若者に接種をしていて遺憾だ。」
シュライバー氏も
まずは世界各地の医療従事者や高齢者への接種を優先すべきだと指摘している。
(ユニセフ シュライバー氏)
「裕福な国だけがワクチンを得るなんて倫理的に受け入れられません。
すべての人が守られなければならず
リスクの高い人から接種すべきです。」
ワクチンの分配が始まったことは評価できる。
新しいワクチンの開発は通常であれば何年もかかるものだが
COVAXに参加する先進国などが
世界各地の10のワクチン候補に一斉に投資したことが開発の大きな後押しになった。
アストラゼネカやモデルナのワクチンも
COVAXから提供された資金を受けて開発されたものである。
また開発と並行してワクチンの製造にも資金を投入し
大量生産体制を後押ししてきた。
このためワクチンの安全性が確認された後直ちに分配されることが可能だった。
課題となっているのは
先進国と途上国の接種のスピードに大きな格差があることである。
たとえばイスラエルはCOVAXとは別に
少なくとも800万回分のワクチンをファイザーから購入することで合意していて
ネタニヤフ首相は
ファイザーのCEOとの個人的な関係を生かして早い段階で調達できたとアピールしている。
実際 2月の時点で人口の半数余が少なくとも1回ワクチンを接種していて
これは世界でも極めて速いスピードである。
しかしアフリカなどの途上国では資金不足などから
自国で独自に製薬会社などと契約が結べず
ワクチンの供給を完全にCOVAXに頼っている国も少なくない。
先進国ではどんどん接種が進んで経済活動も再開していくのに
途上国では医療従事者ですら接種がなかなか進まない状況が続けば
格差がますます広がってしまうことが懸念される。
COVAXでは
医療従事者やリスクの高い人に必要な20億回分近くのワクチンを確保できているとしているが
これらが供給されるのは年末までの予定である。
COVAXでは
途上国だけでなく
日本などの先進国も含めて希望するすべての国に供給を行なう予定で
各国が独自契約した製薬会社などからワクチンを入手するスピードに比べて
供給には時間がかかる。
WHOのテドロス事務局長は
自国で確保したワクチンで医療従事者や高齢者などへの接種を終えた国に対しては
若い人たちへの接種を始める前に
途上国の医療従事者にワクチンを回してほしいと呼び掛けている。
しかし世界中で感染が続くなか
各国の政府はまずは自国民への接種を急いでいて
ワクチンを途上国へ回す動きは今のところ見られない。
COVAXの分配は始まったものの
世界全体にワクチンが行き届くにはまだまだ時間がかかるなか
COVACX人ワクチンの供給を頼る国が取り残されていないか
引き続き注視していきたい。