2021年3月8日 読売新聞「編集手帳」
小学校の卒業式。
恩師を前に、
涙ながらに「仰げば尊し」を歌う子どもたち。
瀬戸内海の小豆島を舞台に、
教師と教え子の師弟愛を描いた1954年の映画「二十四の瞳」のワンシーンだ。
合唱する歌は違っても、
時代を超えて変わらない情景が今年も見られないことがあるという。
「密」を避けるために卒業式への保護者や在校生の出席を制限し、
校歌や卒業ソングの合唱を見送る学校が少なくないと聞く。
この春、
学びやを巣立つ児童・生徒らは最終学年の1年間をコロナ禍の中で過ごした。
文化祭や運動会などが縮小・中止され、学習や部活動の成果を披露できず涙した子もいるだろう。
つらい中でも頑張ってきた子どもたちの門出を祝ってあげたい。
そんな動きが広がっている。
東京音楽大の教員らは11日、
「仰げば尊し」「旅立ちの日に」など卒業ソングのコンサートをオンラインで配信する準備を進めている。
岩手県の小学校教師が寄せた応援メッセージが、
心にしみる。
<知らない人から何かしてもらった子どもたちは、
やがてきっと知らない誰かに対しても、
何かしてあげられる大人に育つはずです>