2021年3月5日 NHKBS1「国際報道2021」
3月5日に開幕した全人代。
李克強首相は今後 中国は“科学技術強国“を目指すと強調した。
(中国 李克強首相)
「国家戦略として科学技術のイノベーションを加速させその強化を推し進める。」
中国はいま5Gや人工知能などのハイテク分野に経済のけん引役を期待している。
ところがこうした分野に欠かせない半導体をめぐって課題に直面している。
アメリカ政府は一昨年以降
中国の通信機器大手ファーウェイに対して
半導体などの輸出を禁じるなど締め付けを強めてきた。
半導体の多くを輸入に頼ってきた中国は自国での産業の育成を急いでいる。
2020年10月 上海で開かれた展示会。
政府系のメーカーなどが開発した半導体の技術力をアピールした。
(紫光集団 申副総裁)
「製品を着実に発展させ
全世界に届けます。
私たちの製品の技術力の高さを信じています。」
産業育成のため国を挙げた支援が行われ
政府系ファンドが3兆円余の資金を調達して積極的に投資を行なっているほか
高性能の半導体を製造する企業には最長10年間法人税を免除している。
政府の大号令に応じ地方では半導体への巨額の投資が次々に行われてきた。
しかし行き詰まるプロジェクトも相次いでいる。
半導体の国内生産を目指して作られている巨大な工場。
資金繰りがつかなくなり工事がストップしたと伝えられている。
内陸部湖北省では“1兆円以上投資してスマートフォン用の半導体の製造工場を作る“と大々的に宣伝されていた。
しかし去年工事が突然停止した。
「1年間 作業員の給料は支払われず
みんなここに残っています。」
東部江蘇省でも5年前から着工していた半導体工場の建設が停止。
イスラエルの企業と提携し
電気自動車の充電スタンドなどに使用される半導体を生産する計画だった。
プロジェクトを進めていた企業の会長 李さん。
地元政府からも経済開発区の土地の取得や資金面での支援を受けていた。
(李さん)
「南京の経済開発区のトップや関係者が来賓し工場建設の式典を開きました。」
成功は間違いないと考えていたが
短期的な利益を求める投資家などがから十分な資金を集めることが出来ず
破産寸前まで追い込まれたという。
(李さん)
「まさか資金繰りがつかず立ち行かなくなるとは
当時深く考えておらず
反省しなければならない点だと思います。」
いま中国では
投資総額が1,000億円以上になると宣伝された半導体関連の大型プロジェクトのうち
少なくとも6件が破綻しかかっていると指摘されている。
専門家は
半導体産業は長期的には有望だとする一方で
高い技術力が必要で
育成のあり方を見直す必要があると指摘する。
(芯謀研究 顧主席アナリスト)
「地方政府はあまりにも焦って半導体産業を発展させようとするため問題が起きています。
専門性がなく無計画な政策を取り続ければ
国際競争で差が縮まるどころか広がってしまいます。」