箕面三中もと校長から〜教育関係者のつぶやき〜

2015年度から2018年度に大阪府の箕面三中の校長を務めました。おもに学校教育と子育てに関する情報をのせています。

就職氷河期世代問題に思うこと

2020年01月25日 05時43分00秒 | 教育・子育てあれこれ




いま日本で問題となっているのが、「就職氷河期世代」の人びとへの就労支援です。政府も本腰を入れて対策に取り組もうとしています。

就職氷河期世代は、おもに1993年から2004年の間に高校、大学を卒業した際に就職した世代になりますので、現在32歳から48歳になっている人たちが含まれます。

この人たちの就職期には、希望する就職ができず、現在も不安定な仕事を余儀なくされている人が少なくありません。

とりわけ1999年に就職期を迎えた人たち(現在38歳~42歳)は、就職できなかった人が10万人を超えました。

そして、いま、希望する就職やその後の転職が難しいのは、とくに高卒や高校中退で社会に出た人たちです。

思い起こせば、この就職氷河期には、「勝ち組」「負け組」という言葉が盛んに言われるようになりました。また、「ロストジェネレーション」という言葉も使われたと記憶しています。

教育界では、1990年代に、子どもの「自己実現」をめざすことが言われだしました。

その言葉に呼応するかのように、就職できなかった人には、機会は平等なのだから結果は「自己責任」だという論が力をもつようになったのでした。

自己責任は自己実現とセットで使われるようになったようです。

今現在、不安定な就労にある人や生活保護を受けている人たちにも、「自己責任ですね」という「まなざし」が向けられがちです。

はたして、そうでしょうか。

氷河期時代の就職難は自己責任などではありません。構造的な問題であり、社会のしくみが生み出した問題でした。

たしかに就職氷河期はバブルがはじけた後の不景気の時代でしたが、この時期に日本の産業構造が大きく変化した時期だったのです。

1995年ごろには、正社員の定義の見直しされ、雇用の流動化が進んだのでした。

2008年ごろには、製造業でよく名前を聞くメーカーが生産調整を行い、非正規雇用の労働者を容赦なく減らすようになりました。

契約期間の途中で派遣を打ち切る場合もあり、「派遣切り」と呼ばれました。

ですから、この就職氷河期世代の人びとの雇用の不安定という今の問題は、社会のしくみが生み出した社会的問題なのであり、本人の努力が足りなかったというものでは決してありません。

私は、中学生に努力することの大切さをずっと説いてきています。

しかし、私たちはどんな問題でも、結果というものを簡単に、「あなたの努力が足りなかったのね」「じゃあ、しかたがないね」などというように人の努力にそのうまくいかない理由をかえしてしまうことには違和感やとまどいを覚えます。

その問題の深層に、社会のしくみの問題があるとき、それは社会を変えていくべき課題であると考えるのです。



コメントを投稿