箕面三中もと校長から〜教育関係者のつぶやき〜

2015年度から2018年度に大阪府の箕面三中の校長を務めました。おもに学校教育と子育てに関する情報をのせています。

学ぶ生徒に就学の機会を

2021年03月03日 11時09分00秒 | 教育・子育てあれこれ
中学生の進路指導を行う際、教員は奨学金の制度について、広く知っておく必要があります。

保護者は高校進学について、3年間でどれほど学費がかかるのかも考慮します。
自分の家庭の収入や家計をみて、必要な場合には奨学金の申請をします。
そのときに、適切なガイダンスや情報提供、手続きの案内を、学校もしなければならないからです。


奨学金には、国や地方公共団体による公的な奨学金と学校独自や育英団体による民間の奨学金があります。
また、給付型と貸与型があります。


さて、そのさまざまな奨学金の中に、「あしなが奨学金」があります。

この奨学金は、親を病気、災害、事故、自死などで亡くした遺児が受けるもので、全国で7000人以上が受けています。

ところが、今回のコロナ禍でひとり親家庭の親が、解雇などの影響を受けています。

2020年秋にあしなが育英会が行った全国の遺児家庭に対する調査によると、ほぼ3人に1人が「収入が減った」と答えました。

あしなが育英会では、奨学金の財源にするため、毎年春と秋の2回、全国のおよそ200箇所であしなが奨学生が募金活動を行なっています。

しかし、このコロナ禍で2020年は春秋とも実施できず、今年の春も募金ができません。(あしなが育英会は、募金以外に基金用に直接の寄付も受け付けています。)

遺児家庭は経済的に困窮する場合が多く、そこに今回のコロナ禍がさらに状況を厳しくしているのです。

夫を交通事故で亡くしたある母子家庭の母親は「ふだんでも子どもにはつらい思いをさせているのに、さらに厳しい生活になるのはすまなく思う」という切実な声が聞こえてきます。

学ぶ意欲や機会のある学生が、経済的な理由で進学を断念することのないように、学校は保護者の相談にのり、適切な手続きを行ってもらえるようサポートすることも、進路指導の大切な側面です。



思い出を胸に抱き

2021年03月02日 15時01分00秒 | 教育・子育てあれこれ
神戸市の須磨海浜水族園が建て替え工事のため、2月末日に営業を終えました。

この水族園の歴史は古く、1957年に須磨水族館としてオープンしました。

イルカショーは関西の人にはなじみのあるもので、子どもを連れた家族連れが一回は訪れたことがある、有名な水族館です。

わたしも娘が小さいとき、家族全員で行ったことがあります。

阪神淡路大震災のときには、学校全体が避難所となり、授業が再開できない神戸市立鷹取中学校に水族園の一部を教室に貸し出したりしたこともありました。

本館の大水槽の前にはメッセージのポードがあり、来場者の思い出が掲げられています。

「震災にも笑顔が取り戻せた」
「息子と通った日々は、わたしの宝物」
「若い頃の思い出が詰まった場所」

このような感謝の言葉であふれています。

イルカライブショーの最後の日には、トレーナー、飼育員が深々とお礼をするのを、観客が温かい拍手で応えました。


いまの時期は、学校では卒業式を行う「別れの季節」です。

感慨深くなる弥生・三月です。

思い出を胸に抱き、新たに新生活のスタートをきります。

卒業は「出口」であり、「入口」でもあります。

須磨水族園は、2024年にリニューアルして民営化され、再スタートします。

部活動ってブラック?

2021年03月02日 08時28分00秒 | 教育・子育てあれこれ


今、国は中学校での働き方改革の一環で、休日の部活動は教員の顧問を外し、外部からの支援員に委ねる制度変更を目指しています。

教員で部活動の休日指導を希望する者は、部活動支援員に登録すれば可能になります。

中学校では年々、個別対応が必要な生徒が増え、保護者からの要望も多くなっています。

本来、部活動は子どもが興味関心のある活動に打ち込み技術・技能を高め、自主性を伸ばすことに役立ちます。
また、異なる学年の生徒同士が交流して、人間関係を深めたりできる、とても意味のある活動です。

学習以外に生徒が学ぶことの多い活動です。

ただ、今の部活動改革は、どちらかというと部活動に「ブラック」というイメージがついています。

中学校の教員の長時間労働の元凶と言わんばかりに捉えられているようで、教育行政は部活動の改革を断行することになります。

しかし、生徒の大会や発表会で会場までいっしょに行き、時間と場所を共有して、勝利や受賞の喜びを、生徒、保護者、教職員がともに共有した経験がないと、改革の方向性を誤ることになります。

答えはいつも現場にあるのです。

たんに「ブラック部活」だからと制度を変えようとするのは現場の意向に寄り添わないことにもなりかねません。

「わからない」には価値がある

2021年03月01日 08時13分00秒 | 教育・子育てあれこれ


いまの時代、わかりやすさが重宝がられます。

たとえばイベントのチラシや企画書にしても、パッとみてわかる情報になっていないと、見てもらえないし、読んでもらえません。

私が「学校だより」を作成するときはつねにそのことを心がけて、実行していました。

また、学級担任つくった学級だよりの原稿や学校発の保護者向け文書を決裁するときも同じでした。

文章の行間を詰めて、たくさんの文字を書いていれば、それだけで保護者は読む気が失せます。

そこで、文章を少なくして、行間を十分にとり、パッとみたとき文字だらけの紙面にならないよう修正していました。

また、インパクトのあるイラストや写真を効果的に挿入し、ビジュアルな紙面にするようにアドバイスすることもありました。

見やすく、わかりやすい印刷物でないと、広報誌や学校文書の意味がないとまで言っていました。

いまの時代、「わかりやすさ」が求められるのは紙面だけではありません。人が話すときでも、わかりやすく話すことが求められるように思います。

話が冗長で何がポイントなのか理解しにくい話し方は、一般的に好まれないのがいまの時代の風潮です。

テレビのバラエティ番組やワイドショーも、視聴者がわかりやすさを求めます。

それに応えるためか、出演者も短い時間で明快な説明をします。
そして、「これはこうだ」という断定的な言葉の方が、視聴者にはウケがいいようです。

くわえて、テレビ番組には、言葉の誇張もあります。

取材の結果を伝えてきて、途中で「とんでもない事実が判明した」とか「おそるべき結末が、その結末とは・・・」で視聴者の関心をひきつけておきます。
そして、いったん切ってCMをはさみ、チャンネルを変えさせないようにします。

そのあと、本当にとんでもないか、おそるべきかといえば、そうでもないような結末になっていたりして、誇張・誇大表現があふれているのが現状です。

そのような、問いを示して、視聴者の興味を掻き立てた後で明解な答えが出るという流れは、ある意味で「わかりやすさ」を番組ディレクターが求めるからでしょう。

しかし、人が実際に生活したり、生きていく中で、AかBのどちらであるというように明確な答えが決まっていることは少ないものです。

AかBだけでなく、AでもBでもないCの場合もあります。

しかし、「わかりやすさ」はCがあることを許さないのです。

よく似たことが、学校教育でもあります。

いまの子どもたちはすぐに正解を求めます。教職経験の少ない若い教師はそれに拍車をかけます。

答えが一つしかない質問を生徒に投げかけ、正しい答えだと「はい、正解!」と反応します。

わたしは、「ああ、この教師は学生の頃からずっと正解を出すことを求められてきたのだ」とも感じます。

また、いまの生徒が正解をほしがるのは、みんなと同じであるという安心感を求めるからでしょう。

答えが一つの質問しか出せない教師も問題です。

本来、生徒はそれぞれちがう存在ですから、ちがう考えをもっていても不思議ではありません。

「~についてどう思いますか」という問いを出し、個々の生徒がそれぞれちがう考えを発表できる授業がいい授業だと思います。

その場合も、「わかりやすい授業」を先行させるのではなく、わかりにくいから生徒が考えるのです。

「別の見え方もあるよ」という余地を残す授業は、生徒に思考することを促す、いい授業なのです。