箕面三中もと校長から〜教育関係者のつぶやき〜

2015年度から2018年度に大阪府の箕面三中の校長を務めました。おもに学校教育と子育てに関する情報をのせています。

食物アレルギーをもつ子どものこと

2021年12月02日 10時10分00秒 | 教育・子育てあれこれ


学校はたくさんの児童生徒が集まる場所です。

それゆえに、さまざまな特性や病気をもつ子もいます。

その一つに食物アレルギー体質の子がいます。

牛乳やピーナッツ、ソバ、乳製品、えびなど、きまった食品を摂るとじんましんや咳が出たり、呼吸障害、意識障害まで起きるのです。

重篤な場合は、命の危険にさらされることもあり、救急搬送することもあります。

食物アレルギーの子どもの多くの親は、わが子が幼少期の頃から、それはそれはたいへんな体験をして育ててこられたのです。


私が校長をしていた中学校でも、牛乳アレルギーの生徒が中1入学段階で引っ越してきました。

牛乳は飲むのはもちろん、牛乳の汁が皮膚についただけでも、赤くなりじんましんを発症する重度なアレルギー反応をもつ子でした。

入学前は養護教諭といっしょに、小学校を訪問し、その子の様子や救急搬送したケースや学校生活で配慮することなどを聞き、引き継ぎを十分にして受け入れました。

ちょうど、箕面市の中学校では、その子の中学3年間の途中から学校給食を開始することになっていました。

その子は、3年間で成長と共に牛乳アレルギーが改善され、いまはほぼ乳製品を摂取しても大丈夫なほどになったと聞いています。

しかし中学校在籍当初は給食の除去食(アレルギー反応を示す食材を抜いたメニュー)を実施するなど、細心の注意を払いました。

修学旅行など宿泊行事に参加するときも、ホテル側にその子用の除去食を依頼し、調整します。

また、調理の際にも他の生徒用のメニューを作る際に乳製品を扱ったなべや包丁等で除去食をつくらず、別の鍋や包丁を使ってもらうよう依頼もしました。

ここまで聞かれると、きっとその子の学校生活は制約が多く、楽しくなかっただろうと感じられるでしょう。

では、食物アレルギーの子はどのような学校生活を送っていたのでしょうか。

たしかに制約は多かったですが、自分のアレルギーに向き合い、付き合い、前向きに生活を送っていました。

とかく食物アレルギーはマイナス面ばかりが強調されますが、そんなことはありません。

いまは世間での認知も進み、「アレルギーに対応してほしい」と保護者がまわりに声をあげるのは当たり前のことです。遠慮もいりません。

また、医学的にも研究が進み、アレルギー症状が出にくくしたり、改善する治療法も始まっています。

アレルギーをもつ子が、自分自身の病状を受け入れ、自分の可能性を広げていける学校や社会になるには、周りのアレルギーに対する理解を深めることが大切だと思います。

 留学生に学ぶ場を ~一律の入国制限実施と制限緩和について~

2021年12月01日 07時22分00秒 | 教育・子育てあれこれ
外国人の日本への入国が、11月30日からまた原則禁止になりました。

新型コロナウイルスの変異株といわれるオミクロン株の感染が世界で広がっていることへの対策です。

じつは、日本は外国人の入国制限を2020年10月に緩和しました。しかし再度感染が拡大したため、2021年のはじめに新規外国人の入国を再度制限したのでした。

そして、国内の感染状況が落ち着き、入国制限はやっと11月8日に大幅に緩められたばかりだったのです。

留学生だけでなく、外国人のビジネスマン、技能実習生の入国も条件付きで認められたのでした。

ところが、わずか3週間でまた逆戻りです。

オンライン授業を母国で受け、待機していた海外からの留学生もこれから日本に来ることができるようになったと喜んでいたのに、突然の入国禁止です。

関係者には、まさに「寝耳に水」です。

2020年の全国一斉休校も、今回の外国人入国制限も、トップダウンで決め、現場にどれだけの影響が出るかを考慮していないと言われても仕方がないと思います。

いきなり「こうします。したがいなさい」ではなく、ていねいに現場の事情や現状をリサーチして、理解を求めて対策をうつべきでしょう。

なぜなら、「答はいつも現場にある」からです。

大学側も留学候補生にオンライン学習を行ったりの対応はとっていて、母国での待機をお願いしていました。

2020年はじめの留学生入試で合格し、この年の秋に入学予定だった留学生は、日本のコロナ渦の影響をまともに受け、入学が延期された人もけっして少なくはなかったのです。

また、国内の日本語学校の中には、学費を納めたまま入国を待たせている学校もあります。このまま入国できなければ、学費を返還してもらい、日本に見切りをつける人もあらわれるでしょう。

入国制限を緩め、入国検査を徹底して行った上で留学予定者には日本で学ぶ門戸を開く対応はできないものでしょうか。

つまり一律な外国人の入国制限より、柔軟な入国制限ができるのではないかということです。海外の他の国は留学生の新規入国を認めていました。

留学生の入国制限が1年半以上続いたことで、海外からの留学生が日本を留学先に選ばないようになることが心配されるのです。

実際、2021年1月頃から「日本への留学はあきらめる」とか「他の国へ変更する」という申し出が出始めています。

そして、今回の入国制限で、日本への留学生が減るのは現実問題となります。

じつは海外からの留学生は、向学心がありたいへん研究熱心であり、大学の研究活動を牽引してくれる場合が多いのです。

また、今後留学生を受け入れる大学は、PCR検査等をていねいに受けれる体制を整え、感染防止に努め、留学生の日本での学習を保障していくべきです。