モリモリキッズ

信州里山通信。自然写真家、郷土史研究家、男の料理、著書『信州の里山トレッキング東北信編』、村上春樹さんのブログも

「ブラジルへの郷愁」レヴィ=ストロース

2006-03-02 | アマゾン
クロード・レヴィ=ストロースといえば、構造主義の原典となった「悲しき熱帯」が有名ですが、本書は、その著者が二台のライカで撮った1930年代のブラジル、アマゾンの写真集です。美しいモノクロ写真と共に彼のスケッチも入っています。

白亜の高層ビルの建築が始まったサンパウロと、対照的に300年余りの白人による侵略の中で、追いやられ、殺され、略樽されて未開人へ転落したある部族。しかし、同時に見られるジャングルで暮らす先住民たちの逞しさと美しい笑顔。

アメリカ大陸発見と欧米人は言いますが、先住民は「俺たちがどう猛なお前達を発見したのだ」と言うかもしれません。そして忘れてはいけない、おぞましい民族大虐殺(ジェノサイド)。文明の不幸な衝突は古くて新しい問題。ヨーロッパ中心主義が破壊したものは限りなく大きい。それは、同時に日本にも置き換えて見ることができるものでもあるのです。近代化による世界的な画一化とそれに対する過激な抵抗。

それでも無邪気な笑顔を見せる少女、裸で戯れる子供達の姿には、心が和みます。しかし、同化政策や入植者、金堀人たちとの軋轢で、この光景の多くが失われた過去のものであることも事実なのです。
真に美しいものは忘却の彼方にある、のかもしれません。

「ブラジルへの郷愁」レヴィ=ストロース
川田順造訳 みすず書房
コメント (2)
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