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信州里山通信。自然写真家、郷土史研究家、男の料理、著書『信州の里山トレッキング東北信編』、村上春樹さんのブログも

秋雨後の妻女山で、クロメマトイにまとわりつかれながらキノコ狩り(妻女山里山通信)

2013-09-15 | アウトドア・ネイチャーフォト
 雨後のタケノコと言いますが、雨後に出るのはキノコも同じです。台風18号が来る前にと山に入りました。山桜がわずかに紅葉し始めましたが、蝉は鳴いているしクロメマトイは五月蝿くまとわりつくし、油断するとヤブ蚊に刺されるし、薮こぎすると蜘蛛の巣だらけと、9月の山は湿度も高く、決して快適ではありません。むしろ一年で一番不快かもしれません。それでも入るのは、秋のキノコが出始めるからなのです。不快に欲が勝つのです。キノコ屋の性とでも言いましょうか。

 クロメマトイをタオルで振り払いながら最初に見つけたのは山桜の倒木にびっしりと生えたウスヒラタケでした。除伐した山桜の倒木数本に白い花が咲いた様に群生しています。小さいものと老菌を除いて端から採って行くと大きな袋がいっぱいになってしまいました。とても食べきれない量なので、Kさんのログハウスに立ち寄ってお裾分け。これはいい出汁が出るんだよねと喜んでもらえました。柴犬の子犬モモタと遊んで再び山中へ。

 薮の急斜面を下りて、獣道を辿るとお目当てのウラベニホテイシメジが10本ほどありました。周囲には間違え易い毒のクサウラベニタケもたくさん。慣れないと見分け方が難しいキノコです。猛毒ではないので間違えても激しい腹痛と下痢に襲われるぐらいですが・・。ウラベニは、傘にかすり模様があって軸が太く長く中実。よく傘に指で押したような丸い紋があります。軸は枯葉を突き抜けて地面まであるので、写真で見えている長さの二倍はあります。クサウラは、傘に艶があり軸は細く中空。軸は枯葉から出るため短め。ところが軸が太くしっかりしたウラベニ擬がたまにあるので要注意なのです。しかも、なぜかウラベニで中空のものもあるのです。虫に喰われたのでしょうか。今回もありました。

 雨が多かったので、森には色々なキノコが出ていました。ほとんどは毒キノコか食べても美味しくないキノコ。今年は一本で8人分の致死量、別名を死の天使という猛毒のドクツルタケがあちこちに出ていました。こんな猛毒のキノコにつく虫がいるのですから、自然は面白い。写真のアイタケは、キノコには珍しい青緑色ですが、これは食菌です。食べられます。甘ったるい不思議な香りがします。コナラの倒木に近づいた時、突然ドンドンドンと太鼓の音が。狸の腹鼓ではなく山鳥のホロ打ちです。威嚇されたのです。

 不快極まりない森ですが、秋の気配も感じます。キツリフネの群生。微風に揺れる様は趣があります。ゲンノショウコの群生に木漏れ日が当たっていました。薬草です。マムシグサは毒草であり薬草。たいていの毒草は、微量なら薬草にもなります。秋が深まると真っ赤に色付きますが、決して口にしてはいけません。口内が焼けただれます。秋になる赤い実はほとんど毒と思っていて間違いありません。ヒヨドリジョウゴなどは、鳥も虫も食べないので、真冬になっても残っているわけです。クマノミズキの実は、晩秋になると赤から黒に変わり、鳥達の餌になります。

 薄暗い森の朽ちたキノコの傘に森の掃除屋といわれる座頭虫のオオナミザトウムシがいました。蜘蛛よりは壁蝨(ダニ)に近い仲間です。よく林道や登山道を歩いていると、カサカサと草むらに逃げ込むのが見られます。薄暗い林下の葉に真っ白な蛾が留まっていました。手ぶれしないように撮影。種類が多いのでたいてい現場では同定できません。今回も帰って調べてやっとヒトツメカギバと判明しました。蛾の同定にはいつも苦労します。

 前述したように9月の森は、まだ夏の薮がそのまま残っています。見通しも悪く湿った草や樹木が音を吸収するので動物の気配が感じにくいので要注意です。月の輪熊やオスの大きなイノシシに突然遭遇したら洒落になりません。雨が多いせいか今年は蛇もよく見ます。オオスズメバチも攻撃的になるのでこれも危険。里ではアメリカシロヒトリも大発生しました。おまけに7月以降は、福一の地下で再臨界でもあったのでしょうか、微量ですが長野市にも毎日の様にセシウムが降り注いでいました。ほとんどの人は知らないでしょうけど・・。最後に載せるスライドショーのように除染すれば、8~9割は除去できますが、高汚染されたキノコは、除染しても食べられません。

 真夏の様な妻女山の森ですが、それでも色付いたススキやカワラナデシコが、小さな秋を教えてくれます。
 大伴家持は、撫子がお気に入りだったようで、何首か詠んでいます。
「なでしこが  その花にもが 朝な朝な 手に取り持ちて 恋ひぬ日なけむ」
「秋さらば 見つつ偲へと 妹が植ゑし  やどのなでしこ 咲きにけるかも」
「なでしこが 花見るごとに 娘子らが 笑まひのにほひ 思ほゆるかも」

■【信州の里山】キノコの汚染と除染について
 菌根性のキノコと腐性性のキノコに分けて解説しています。文章が長くて読みきれないときは、ポーズボタンをクリックしてください。文字が小さい時はフルスクリーンで。



長野県内産きのこの放射性物質検査及び野生きのこの情報
 リンク切れの場合は、長野県のサイトトップから放射線等関連情報へ。軽井沢、佐久地方の野生キノコは、放射性物質の検出により、採取、出荷、摂取の自粛要請が出ているものがあります。


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