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信州里山通信。自然写真家、郷土史研究家、男の料理、著書『信州の里山トレッキング東北信編』、村上春樹さんのブログも

信州は、ウラベニホテイシメジの季節。菌根菌なので除染を念入りに(妻女山里山通信)

2013-09-22 | アウトドア・ネイチャーフォト
 台風一過の週末にキノコ狩り。信州で、この時期のキノコといえばウラベニホテイシメジ。イッポンカンコウともいいます。人によってはイッポンシメジという人も。確かにウラベニホテイシメジはイッポンシメジ科ですが、別にイッポンシメジという毒キノコがあるので、混同しない様に。また、最も間違え易いのは、クサウラベニタケ。プロでも間違える事があるほどなので、充分注意することが必要です。しかも、たいてい同じ所に混じって生えていることが多いのです。ウラベニホテイシメジとクサウラベニタケの記事もご覧ください。
 キノコの同定は、採取した現場で行うのが基本。時間が経つと変色したり、スギタケモドキとツチスギタケの様に、外見がほとんど同じで、木に生えると食、土だと毒というものもあるからです。生育環境(雑木林か松林か混合林かなど)を知るために採取現場の写真を撮っておくのも有効です。

 ウラベニホテイシメジは、写真の様に軸が太く、中実で、軸は枯葉を突き抜けて地面まで達しているので長いのです。写真の土が付いている部分から下が地中部です。傘は初め白く細かな繊維状のものがあり、指で押したような班があることがあります。軸の細いウラベニは、採るべきではありません。独特の刺激臭と苦みがあるので、濃い塩水に2、3時間浸けてから茹でこぼし、薄塩にまぶして冷蔵庫で保存します。適度に苦みが取れ旨味も凝縮します。秋なす、大根、鶏肉、厚揚げなどと煮込んだり、炒め物にしたり、おろし醤油で食べます。菌根菌なので放射性物質を溜め易いため、塩漬けと茹でこぼしで、7~9割除染できますが、酷い汚染地のものは食べるべきではありません。
 塩漬け茹でこぼしと同様に、味噌漬け茹でこぼし、粕漬け茹でこぼしなども除染効果があります。もちろん漬け床は捨てなければいけません。肉や魚介類、野菜にも応用できます。

 毒キノコのクサウラベニタケ。軸が細く、枯葉から出るので短いと図鑑には書いてありますが、写真のように太くしっかりしたものもあります。ただ、地中ではなく枯れ葉の部分から出るので、ウラベニホテイシメジと区別ができます。傘は艶があり放射状の筋があります。傘の裏を嗅ぐと特有の嫌な匂いがします。ウラベニホテイシメジと違い苦みはありません。誤って食べると激しい嘔吐、下痢が襲います。死亡する事は稀で、軽く済むこともあるので、実際はニュースにならない中毒の事例がたくさんあると思われます。ウラベニホテイシメジと同じ場所に生えていることが多いので、見比べて違いを把握しておくといいでしょう。

 帰化植物のマルバフジバカマの林道を1キロ程歩き、薮を抜けて急斜面の森へ。マルバフジバカマでは、イカリモンガが盛んに吸蜜していました。キノコ狩りは薮ごぎが必須ですが、この時期はいわゆる「ひっつき虫」を避けることはできません。ありとあらゆるひっつき虫が付いて来ます。植物の種なのに虫とは面白い名前ですが、これを気にしていたらキノコ狩りはできませんね。

 この時期には珍しい夏キノコのアカヤマドリがありました。傘が25センチにもなる大きなキノコで見てくれはグロテスクですが、美味しいのです。ただ、醤油と合わない。洋風にバター炒めやオムレツ、リゾットなどにすると美味しいのです。そして、森の倒木にピンク色のキノコ。なんだろうと近づくとウスヒラタケです。ウスヒラタケは発生する樹種によって色が変わります。山桜だとやや灰白色、コナラだと薄茶色。このピンクは山藤でした。獣道の脇で見つけたのが、松茸のようなキノコ。雑木林なのでバカマツタケでしょうか。香りはそれっぽい感じなのですが、もうひとつ確証が持てませんでした。やはり、香りからしても違う感じです。

 日当りのいいギャップにミドリヒョウモンが留まっていました。梅雨明け頃に羽化したものでしょう。翅はボロボロですが元気です。撮影後、軽やかに舞って行きました。薄暗い林床で木漏れ日に光る秋の銀竜草(アキノギンリョウソウ)。別名は、銀竜草擬き、幽霊茸。腐生植物で葉緑素が全くないため、透明感のある白色です。銀竜草は雌しべが青紫ですが、秋の銀竜草は白。果実は銀竜草は液果(えきか)で、秋の銀竜草は果(さくか)です。今年は、「死の天使」といわれる猛毒のドクツルタケがあちこちに生えています。林道脇では、嫁菜も咲いています。獣道にはイノシシの真新しい糞がありました。森の奥には大きなヌタ場(泥浴び場)も。

 帰りにKさんのログハウスに寄りましたが、不在でした。恐らく写真に見える向こうの西山へキノコ狩りに行ったのでしょう。台風18号で洪水に見舞われた千曲川も、すっかり水が引いて、水たまりではたくさんの中鷺が小魚を狙っています。
  ところで、キノコは古くから日本人に食べられて来た食材ですが、意外な事に万葉集では一首しかありません。
「高松の この峰も狭に 笠立てて 満ち盛りたる 秋の香のよさ」作者不詳「万葉集 巻10-2233」
 高松とは奈良の春日山の南に連なる高円山のことだそうです。秋の香というのは松茸のことでしょう。ちなみに猟師の知人が愛犬を松茸犬に仕立てようと訓練したのですが、いざ赤松林に入ると、そこいら中が松茸の匂いで犬が混乱し、全く役に立たなかったそうです(笑)。

 キノコは、標高800m以上1500m位までがよく採れます。理由は、朝晩霧に包まれることが多いからです。もちろん低山でも採れますが、乾き易いためポイントが限られ、いわゆるシロと出るタイミングを知らないと、まず一本も採れません。それから、月の輪熊との遭遇にも気をつけなければいけません。私も鏡台山系で三度ほど出逢っています。

ウラベニホテイシメジとクサウラベニタケ(妻女山里山通信)

■色々なキノコの写真は、【MORI MORI KIDS Nature Photograph Gallery】のキノコをご覧ください。

■【信州の里山】キノコの汚染と除染について
 菌根性のキノコと腐性性のキノコに分けて解説しています。文章が長くて読みきれないときは、ポーズボタンをクリックしてください。文字が小さい時はフルスクリーンで。


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