蒸し暑い梅雨の午後、妻女山へ。気温29度、湿度は60%ぐらいですが、まもなく激しい雷雨がやってくる予報です。椎茸栽培のホダ木を点検すると、2本に椎茸栽培の敵ゴムタケが出始めているのを発見。全て取り除きました。ゴムタケは高湿度を好むので、このところの雨で発生したのでしょう。
左の木の実を見て、すぐになんだか分かったら相当の樹木通でしょう。ウツギ(空木)の実です。果で熟すと3~4裂し、飛び散ります。乾燥した果実を煎じて飲むと、利尿やむくみに効くという民間薬です。シモツケ(下野)が咲くと、夏が近いなと思います。それまで白い花しかなかった里山が急に華やかになります。シモツケソウという草もありますが、妻女山には自生しません。右はコムラサキ(小紫)の小さな花。ムラサキシキブ(紫式部)より低木ですが、実がびっしりと付くので艶やかです。
里山の青海波、オカトラノオ(丘虎の尾)。オカトラノオは、みな同じ方向を向いて咲きます。大きな群生地では、花穂(かすい)の波うつ様子がまるで丘の青海波(せいがいは)のように見えるほどです。このオカトラノオ、従来の分類体系(新エングラー体系)ではサクラソウ科なのですが、APG植物分類体系ではヤブコウジ科です。どうにもあの赤い実を付ける低木のヤブコウジと同じ仲間とは思えず、人間は猿の仲間ではなくイボイノシシの仲間ですといわれたような気分で、なんとなく釈然としないのですが、 DNAレベルでみるとそうなんですね。
草地にヒルガオ(昼顔)の花。昼咲いて夕方にはしぼむ一日花。朝顔に比べて優しいピンクが可愛いので、庭や畑に移植したくなりますが、猛烈に地下茎を張るので除去が困難になります。
今年は雨が多いせいか、イチヤクソウ(一薬草)が元気です。これもAPG植物分類体系ではツツジ科なんですよね。不思議です。これも鹿蹄草(ろくていそう)という生薬です。
イカリモンガが盛んに舞っていました。幼虫はイノデなどのシダ類を食草とします。これは非常に珍しいことで、この種がシダ類が全世界を覆っていた古い時代からの生物だからでしょうか。蛾というより、セセリチョウよりも蝶らしく、明るい林道を盛んに飛び回って吸蜜していました。
ハルジオンで吸蜜するのは、ルリシジミ(瑠璃小灰蝶)。翅の表面は水色から明るい青紫色。瑠璃色ということでルリシジミ。春先から晩秋まで、山地から田畑、人家周辺でも見かけます。幼虫はバラ科、マメ科、ブナ科植物の蕾や花を食べます。でも、見かけたのはこの一頭だけ。以前は、ミズイロオナガシジミやツバメシジミもたくさんいたのですが。激減しました。蝶の研究家のTさんによると、千曲市の松枯れ病対策のネオニコチノイド系農薬の空中散布の影響が最も疑わしいということです。神経毒で、蜂や昆虫の中枢神経を冒すことが分かっています。欧州ではすでに禁止されている国があります。ベトナム戦争で使われた枯葉剤、ラウンドアップ(ベトちゃんドクちゃんを生んだモンサントの悪魔の農薬)と同様で、非常に危険なものです。
右はオオミスジ(大三筋)。妻女山山系では、コミスジを目撃することの方が多いのですが、オオミスジも久しぶりに見ました。オオミスジで検索すると、この蝶よりオオミスジコウガイビルがたくさん出てくるのには苦笑しました。以前住んでいた調布の若葉小へ下りる国分寺崖線の森では、今頃になると大量に発生して、通学の小学生を驚かせたものです。
草原で見つけたのは、ヒメギス(姫螽斯)かコバネヒメギス(小羽姫螽斯)なんですが、翅がもの凄く小さいのでコバネヒメギスでいいのでしょうか。キリギリスの仲間で、死肉もあさります。
枯れ木の上にいたのはキマワリ(木廻)。ゴミムシダマシの仲間です。大都市の雑木林にも普通にいる昆虫なんですが、これを知っている子供は少ないと思います。たくさんいるのに全く注目されない昆虫採集でも無視される虫です。
ドクガ科のオオヤママイマイ(大山舞舞蛾)の幼虫。コナラの幹にたくさんいました。撮影中に胸に一匹、首の後ろに一匹取り付いていました。毛に毒はないのですが、刺さったりするとチクチクします。毒があるのは意外に少なく、チャドクガやイラガなどですが、まあ触らないほうがいいでしょう。
撮影中に木からポトッと落ちたのは、キマダラカミキリ(黄斑髪切虫)。クヌギ、クリなどに集まり、樹液バーにもやってきます。妻女山では極普通に見るカミキリムシです。ところが、松枯れ病の原因とされるマツノマダラカミキリは、一度も見たことがないのです。そのため私は、原因は排気ガスではないかと疑っています。つまり、農薬の空中散布は全く効果が無いということになります。詳しくは、「松枯れ病の原因は、本当にマツノマダラカミキリのセンチュウだけなのか!?」を。
ハルジオンで盛んに吸蜜するハナアブ科のホソヒラタアブ(細平田虻)。複眼が離れているのでメスですね。腹部が平たく、太細の縞模様が特徴。器用にホバリングしながら吸密します。幼虫はアブラムシを食べます。人間にとっては益虫ですが、モンサントのラウンドアップなど、ネオニコチノイド系やグリホサート系の除草剤や殺虫剤を使うと絶滅し、野菜や果樹、野草の受粉ができなくなってしまいます。実際、妻女山山系でも激減しています。
明るい林道で優雅に舞っていたのは、2000キロを旅してきたアサギマダラ(浅葱斑)。春の北上と秋の南下を繰り返す「渡り」をするチョウとして有名です。留まるのをジッと待ちましたが、20分ぐらいは舞い続けていたでしょうか。海を越えて2000キロを飛ぶのですから、20分ぐらいなんということもないのでしょう。その優雅な舞姿は、見飽きることがありません。やっと小枝に留まったところを撮影。
幼虫の食草は、イケマ・カモメヅル・キジョラン・サクラランなどのガガイモ科の植物です。いずれもアルカロイド系の毒素を含む毒草のためアサギマダラも毒化し身を守っています。関東だと9月頃に神奈川の陣馬山で、ものすごい数のアサギマダラが舞うのを見たことがあります。海を渡る蝶といえば、安西冬衛(ふゆえ)の「春」と題した一行詩。『てふてふが1匹 韃靼海峡を渡って行った』を想い出します。韃靼海峡は、間宮海峡ですが、アサギマダラは北限が東北か、せいぜい北海道南部なので、間宮海峡を渡ったのは別の種のようです。なんでしょう。
ヤマグワ(山桑)の実が落ち始めました。まもなくオオムラサキの羽化が始まります。終齢幼虫を探したのですが見つかりませんでした。6月末頃は、まだ樹液があまり出ないので、羽化したオオムラサキは、こうした桑の実の潰れた果実や猪の糞などを吸って栄養とします。
冠着山(姨捨山)の方から、大きな雷鳴が轟き始めたので、急いで山を下りました。
翌日、雨上がりの妻女山展望台へ。そういえば先日新潟から来訪の男性に、展望台から何にも見えないと苦情を言われました。周囲の桜の木やコナラが大きくなって、ほとんど展望が効かないのです。特に松代城跡方面は何にも見えません。木を切るのは忍びないとするなら、古くなった展望台を高く作り変える以外にないでしょう。このままではまずいので、一応長野市に報告はしておきました。
★オオムラサキの保護活動、妻女山里山デザイン・プロジェクトの記録。目次の一番下の妻女山SDPをクリック!
★ネイチャーフォトのスライドショーは、【Youtube-saijouzan】をご覧ください。粘菌やオオムラサキ、ニホンカモシカのスライドショー、トレッキングのスライドショーがご覧頂けます。
左の木の実を見て、すぐになんだか分かったら相当の樹木通でしょう。ウツギ(空木)の実です。果で熟すと3~4裂し、飛び散ります。乾燥した果実を煎じて飲むと、利尿やむくみに効くという民間薬です。シモツケ(下野)が咲くと、夏が近いなと思います。それまで白い花しかなかった里山が急に華やかになります。シモツケソウという草もありますが、妻女山には自生しません。右はコムラサキ(小紫)の小さな花。ムラサキシキブ(紫式部)より低木ですが、実がびっしりと付くので艶やかです。
里山の青海波、オカトラノオ(丘虎の尾)。オカトラノオは、みな同じ方向を向いて咲きます。大きな群生地では、花穂(かすい)の波うつ様子がまるで丘の青海波(せいがいは)のように見えるほどです。このオカトラノオ、従来の分類体系(新エングラー体系)ではサクラソウ科なのですが、APG植物分類体系ではヤブコウジ科です。どうにもあの赤い実を付ける低木のヤブコウジと同じ仲間とは思えず、人間は猿の仲間ではなくイボイノシシの仲間ですといわれたような気分で、なんとなく釈然としないのですが、 DNAレベルでみるとそうなんですね。
草地にヒルガオ(昼顔)の花。昼咲いて夕方にはしぼむ一日花。朝顔に比べて優しいピンクが可愛いので、庭や畑に移植したくなりますが、猛烈に地下茎を張るので除去が困難になります。
今年は雨が多いせいか、イチヤクソウ(一薬草)が元気です。これもAPG植物分類体系ではツツジ科なんですよね。不思議です。これも鹿蹄草(ろくていそう)という生薬です。
イカリモンガが盛んに舞っていました。幼虫はイノデなどのシダ類を食草とします。これは非常に珍しいことで、この種がシダ類が全世界を覆っていた古い時代からの生物だからでしょうか。蛾というより、セセリチョウよりも蝶らしく、明るい林道を盛んに飛び回って吸蜜していました。
ハルジオンで吸蜜するのは、ルリシジミ(瑠璃小灰蝶)。翅の表面は水色から明るい青紫色。瑠璃色ということでルリシジミ。春先から晩秋まで、山地から田畑、人家周辺でも見かけます。幼虫はバラ科、マメ科、ブナ科植物の蕾や花を食べます。でも、見かけたのはこの一頭だけ。以前は、ミズイロオナガシジミやツバメシジミもたくさんいたのですが。激減しました。蝶の研究家のTさんによると、千曲市の松枯れ病対策のネオニコチノイド系農薬の空中散布の影響が最も疑わしいということです。神経毒で、蜂や昆虫の中枢神経を冒すことが分かっています。欧州ではすでに禁止されている国があります。ベトナム戦争で使われた枯葉剤、ラウンドアップ(ベトちゃんドクちゃんを生んだモンサントの悪魔の農薬)と同様で、非常に危険なものです。
右はオオミスジ(大三筋)。妻女山山系では、コミスジを目撃することの方が多いのですが、オオミスジも久しぶりに見ました。オオミスジで検索すると、この蝶よりオオミスジコウガイビルがたくさん出てくるのには苦笑しました。以前住んでいた調布の若葉小へ下りる国分寺崖線の森では、今頃になると大量に発生して、通学の小学生を驚かせたものです。
草原で見つけたのは、ヒメギス(姫螽斯)かコバネヒメギス(小羽姫螽斯)なんですが、翅がもの凄く小さいのでコバネヒメギスでいいのでしょうか。キリギリスの仲間で、死肉もあさります。
枯れ木の上にいたのはキマワリ(木廻)。ゴミムシダマシの仲間です。大都市の雑木林にも普通にいる昆虫なんですが、これを知っている子供は少ないと思います。たくさんいるのに全く注目されない昆虫採集でも無視される虫です。
ドクガ科のオオヤママイマイ(大山舞舞蛾)の幼虫。コナラの幹にたくさんいました。撮影中に胸に一匹、首の後ろに一匹取り付いていました。毛に毒はないのですが、刺さったりするとチクチクします。毒があるのは意外に少なく、チャドクガやイラガなどですが、まあ触らないほうがいいでしょう。
撮影中に木からポトッと落ちたのは、キマダラカミキリ(黄斑髪切虫)。クヌギ、クリなどに集まり、樹液バーにもやってきます。妻女山では極普通に見るカミキリムシです。ところが、松枯れ病の原因とされるマツノマダラカミキリは、一度も見たことがないのです。そのため私は、原因は排気ガスではないかと疑っています。つまり、農薬の空中散布は全く効果が無いということになります。詳しくは、「松枯れ病の原因は、本当にマツノマダラカミキリのセンチュウだけなのか!?」を。
ハルジオンで盛んに吸蜜するハナアブ科のホソヒラタアブ(細平田虻)。複眼が離れているのでメスですね。腹部が平たく、太細の縞模様が特徴。器用にホバリングしながら吸密します。幼虫はアブラムシを食べます。人間にとっては益虫ですが、モンサントのラウンドアップなど、ネオニコチノイド系やグリホサート系の除草剤や殺虫剤を使うと絶滅し、野菜や果樹、野草の受粉ができなくなってしまいます。実際、妻女山山系でも激減しています。
明るい林道で優雅に舞っていたのは、2000キロを旅してきたアサギマダラ(浅葱斑)。春の北上と秋の南下を繰り返す「渡り」をするチョウとして有名です。留まるのをジッと待ちましたが、20分ぐらいは舞い続けていたでしょうか。海を越えて2000キロを飛ぶのですから、20分ぐらいなんということもないのでしょう。その優雅な舞姿は、見飽きることがありません。やっと小枝に留まったところを撮影。
幼虫の食草は、イケマ・カモメヅル・キジョラン・サクラランなどのガガイモ科の植物です。いずれもアルカロイド系の毒素を含む毒草のためアサギマダラも毒化し身を守っています。関東だと9月頃に神奈川の陣馬山で、ものすごい数のアサギマダラが舞うのを見たことがあります。海を渡る蝶といえば、安西冬衛(ふゆえ)の「春」と題した一行詩。『てふてふが1匹 韃靼海峡を渡って行った』を想い出します。韃靼海峡は、間宮海峡ですが、アサギマダラは北限が東北か、せいぜい北海道南部なので、間宮海峡を渡ったのは別の種のようです。なんでしょう。
ヤマグワ(山桑)の実が落ち始めました。まもなくオオムラサキの羽化が始まります。終齢幼虫を探したのですが見つかりませんでした。6月末頃は、まだ樹液があまり出ないので、羽化したオオムラサキは、こうした桑の実の潰れた果実や猪の糞などを吸って栄養とします。
冠着山(姨捨山)の方から、大きな雷鳴が轟き始めたので、急いで山を下りました。
翌日、雨上がりの妻女山展望台へ。そういえば先日新潟から来訪の男性に、展望台から何にも見えないと苦情を言われました。周囲の桜の木やコナラが大きくなって、ほとんど展望が効かないのです。特に松代城跡方面は何にも見えません。木を切るのは忍びないとするなら、古くなった展望台を高く作り変える以外にないでしょう。このままではまずいので、一応長野市に報告はしておきました。
★オオムラサキの保護活動、妻女山里山デザイン・プロジェクトの記録。目次の一番下の妻女山SDPをクリック!
★ネイチャーフォトのスライドショーは、【Youtube-saijouzan】をご覧ください。粘菌やオオムラサキ、ニホンカモシカのスライドショー、トレッキングのスライドショーがご覧頂けます。