モリモリキッズ

信州里山通信。自然写真家、郷土史研究家、男の料理、著書『信州の里山トレッキング東北信編』、村上春樹さんのブログも

信州の伊那谷と木曽谷散策。森林浴三昧、諏訪立川流彫刻三昧の週末(妻女山里山通信)

2014-09-02 | アウトドア・ネイチャーフォト
 週末に仕事も兼ねて伊那谷へ向かいました。途中色々と寄りたい所があったので、今回は高速を使わずに全て下道で行ったのですが、信州は広いとしみじみ感じました。大町市の旧八坂村では、秋に仲間と登る予定の大姥山の登山口を探したのですが、入る林道を間違えてしまい、危うく遭難するところでした。夜は息子達とレトロな建物がたくさん残る伊那の旧市街を散策。ローメンとソースカツ丼が有名ですが、次男の希望で、「いーらぐーら」の濃厚な鶏白湯ラーメンを堪能しました。私は鶏白湯の醤油を頼んだのですが、濃厚なスープは後引き。塩は麺のかん水の味が出るので、私的にはキリッと香ばしい醤油がおすすめです。店主に次男が東京から各停で来て、小淵沢からは自転車で伊那まで、このラーメンを食べに来たんですと行ったらたまげていました(笑)。伊那では、高遠蕎麦とすんき蕎麦もおすすめです。

 翌日は木曽谷へ。まず上松町から15キロも山中に入った日本の森林浴発祥の地という赤沢自然休養林へ。森林鉄道もあるのですが、アマゴの泳ぐ川沿いを歩いて檜林に入りました。大型バスも何台も来て大賑わいなんですが、歩いて森に入る人はほとんどいませんでした。もったいないですね。歩きましょう。森林浴を楽しみましょう。

 森はヒノキが中心で、林床にはヒバ(アスナロ)の幼木がたくさん生えています。ヒバは光がなくても生えるので、自然にこうなるそうです。森林組合に勤める長男が今回は先生です。他にはサワラ、アカヤシオやホウノキ、ネズコ、コウヤマキなども。真ん中はヒノキの根本に生えていた艶のある葉のソヨゴと、右上がシロモジ。右は、三つ紐伐りという伝統の伐採法で来られた杉の切り株。伊勢神宮の建て替えに使われた御神木を斧だけで伐採した跡です。木曽では、この伝統技法を絶やさぬよう保存会が結成されたそうです。木を切ったことがありますか。100年生きた木は、100年使える様にしてあげないといけないのです。生命にひとつとして無駄なものはないのです。

 渓流に掛かるフウリンウメモドキ(風鈴梅擬)モチノキ科の艶のある赤い実。ヤマボウシ(山法師・山帽子)ミズキ科の青い実。熟すと紅くなります。蜂と熊も大好きな甘くて美味しい実です。最後はオオヤマレンゲ(大山蓮華)モクレン科の実。赤沢には多く、初夏に白い花が満開の様はたいそう美しいとか。

 ヤマハハコ(山母子)キク科で吸蜜するベニシジミ(紅小灰)。白い小花はシラネセンキュウ(白根川芎)セリ科シシウド属。最後は、ヨメナ(嫁菜)キク科。ノコンギク、カントウヨメナ、ユウガギク、シラヤマギク、シロヨメナとか皆似ていて、私は区別がつきません。同定は、キジムシロやミツバツチグリなどの春の黄色い花より困難です。でも大事なのは知識ではなく、生態系の相互連関を観察で知ることなのです。一本のブナの大木には、4000もの生物が共生関係にあると言われています。それをつぶさに観察して体感することが大事なのです。専門家が全て分かっているほど自然は単純ではないのです。新たな発見は、誰にでもそのチャンスはあります。

 最後に森林資料館へ。ここは端にあるためか面白いのに訪れる人がほとんどいないのが残念です。まずニホンカモシカとツキノワグマの剥製。両方共山中で出会ったことがありますが、できれば熊にはあまり出会いたくないものです。森林鉄道のジオラマ。よくできているのですが、故障していて動かないのが残念。ソーラー使って動かせばいいのにと息子達。最後は、昔の伐採の様子と木製の楽器。こきりこ節に使われるこきりこささら(びんささら、板ささら)もありました。右端にあるのは、江戸時代に木に刺したまま忘れたらしいという錆びた斧。他には伐採に使った斧や鋸、チェーンソーなど。木材の搬出方法も。蝶や昆虫の標本もありました。

 木曽に戻って次に訪れたのは、木祖村の藪原宿。中山道35番目の宿場です。ここの「おぎのや」さんで、ざる蕎麦二枚をいただきました。築120年の古い町家で、天井の高い内部は黒い梁が幾重にも交差しています。蕎麦は細く白めの二八蕎麦です。大変美味でした。食後に出る梅シャーベットが爽やかです。食後は、店の裏手の中央西線上にある薮原神社へ。目的は、ここの立川流彫刻を見るためです。諏訪立川流の立川和四郎富昌の作で、写真の様にそれは見事な宮彫です。最後は、薮原神社下から見る藪原宿。島崎藤村の長編小説『夜明け前(リンクはラジオドラマ。秀逸)』の書き出し「木曾路はすべて山の中である」を思い出します。

 最後は、定番の奈良井宿へ。少し観光化されすぎた感はありますが、やはり趣があります。空は晴れて陽も指しているというのに雨。狐の嫁入りですね。天気雨と動物を合わせる表現は世界中にあるそうです。秋桜が咲いていました。嫁菜でミドリヒョウモンが吸蜜。帰りに奈良井ダム辺りで大雨になりましたが、伊那谷に戻ると雨は降っていませんでした。夜はなぜかブラジル料理三昧。長男が手際よくリングイッサ(腸詰め)を焼いたりしてくれました。

 翌朝、長野に向けて出発です。蕎麦の白い花が壮観です。小林一茶の句で、「山鼻や そばの白さも ぞっとする」というのがあります。真っ白な妖気漂う蕎麦畑の描写かと思うと、前書きに「老いの身は 今から寒さも 苦になりて」とあるので、蕎麦の白い花を雪に見立て、雪深い北信の厳しい冬の到来を詠んだ句の様です。ちなみに有名な、「信濃では 月と仏と おらが蕎麦」は、一茶の句ではないそうです。「赤椀に 龍も出そうな そば湯かな」蕎麦湯を詠んだ句は珍しいですね。椀の朱漆をバックに蕎麦湯の湯気の中から龍が出そうという想像力豊かな洒落た句です。新蕎麦の季節が待ち遠しい。

 帰り道に、辰野町の旧三州街道(国道153号)沿いにある矢彦神社に寄りました。隣は小野神社。この矢彦神社は、諏訪立川流の元祖で富昌の父、立川和四郎富棟の彫刻があります。信濃国二之宮ですが、立川和四郎富棟の出世作となった信濃国一之宮の諏訪大社秋宮に引けをとらないほど立派なものです。隣り合う両社の境内は広く、大木が生い茂り、荘厳な雰囲気を醸し出しています。信州には、この天才親子と言われた二人や弟子達の作品がたくさん残っています。山を木を知り尽くした信州の達人達が生み出した世界に誇れる作品群なのです。
 
にほんブログ村 写真ブログへ にほんブログ村 写真ブログ ネイチャーフォトへ にほんブログ村 アウトドアブログへ にほんブログ村 アウトドアブログ ハイキングへ にほんブログ村 歴史ブログへ にほんブログ村 歴史ブログ 日本史へ

必見!◆新農薬ネオニコチノイドが脅かすミツバチ・生態系・人間:JEPA(pdf)ネオニコチノイド系農薬は、松枯れ病だけでなく、水田の除草剤やカメムシの除虫、空き地の除草剤や家庭用殺虫剤に使われていますが、元はベトナム戦争の化学兵器の枯葉剤と同様で(代表的なのがラウンドアップ:グリホサート剤)、脳の発達障害、多動性障害(ADHD)を引き起こす強力な神経毒の『農薬』ではなく、『農毒』です。

★妻女山山系の自然については、【MORI MORI KIDS Nature Photograph Gallery】をご覧ください。キノコ、変形菌(粘菌)、コケ、花、昆虫などのスーパーマクロ写真。滝、巨樹、森の写真、森の動物、特殊な技法で作るパノラマ写真など。蝶の写真はこちらにたくさんあります。

★ネイチャーフォトのスライドショーは、【Youtube-saijouzan】をご覧ください。粘菌やオオムラサキ、ニホンカモシカのスライドショー、トレッキングのスライドショーがご覧頂けます。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする