毎日の原稿書きでストレスがマックスになったので、週末久しぶりに鞍骨山に登りました。薄日が差すぐらいの天気で、そこそこ寒風もありましたが、鞍骨城跡のある山頂に着くと、風も止み長閑な昼餉を楽しむことができました。
妻女山の駐車場に車を置き、まず仲間とやっている椎茸のホダ木を見に行きました。冬越しの椎茸が何個か出ています。どんこになりかかっているのもありましたが、まだ大きくなりそうなので放っておくことにして出発。林道を歩いて天城山(てしろやま)は巻き道を使い、二本松峠を越えて笹の道を行くと、大きな赤松の倒木。巻き添えになったヤマザクラの枝を、こんなこともあろうかと持ってきたのこぎりで切って道を開けました。
進むと、駒留(こまどめ)と呼ばれる最初の深い堀切(左)。少し進むと明るい尾根に出て目指す鞍骨城跡が正面に見えます(中)。そこから尾根を200m位進むと、二条の堀切(右)。ここを越えると城内です。
尾根の左右に馬場跡ともいわれる幅3、4mの帯状の平地が続いています(左)。残雪のある急斜面をガシガシ登って腰郭へ(中)。結構広い四の郭から本郭を見上げたところ(右)。ここからは南面へ回りこんで登ります。
南面の大手から山頂へ。倉科のMさんが制作した天空の山城 鞍骨城跡の標柱と、鞍骨山の標柱(左)。本郭の西端から東を見たところ。東端には、少し高い土塁があります(中)。その土塁の上から東端を見たところ。手城砦のあった天城山が見えます(右)。
昼にする前に、20mほど先にある二つの展望岩へ行ってみました。東の展望岩から見下ろす松代城跡。戦国時代は海津城。手前が松代小学校の校庭で、右に黒い瓦屋根の文武学校が見えます。その手前の山は、上に神社のある離山。城内が丸見えになるために、江戸時代は庶民が登ることを禁じられていました。その右に、象山の尾根の先が見えます。
松代城跡の右上は、松代中学。世界的アコーディオン奏者のcobaさんと、モーニング娘。15の羽賀朱音ちゃんの母校。ついでに私の母校でもあります。松代駅の線路跡がみんな駐車場になってしまいましたね。ここはお堀だった場所で、復活の計画もあるとか。
西の展望岩からは、登山口の妻女山が俯瞰できます(左)。右へ目をやると、完成したAC長野パルセイロのホームスタジアムが(中)。この15日に内覧会をやるそうです。試合当日は、ここまで歓声やチャントが聞こえるでしょう。ずっと左へ目をやると、昨年の神城断層の地震で、山頂が4割も崩落してしまった虫倉山が見えます(右)。手前は茶臼山。奇しくも両山とも山頂が崩壊した山です。虫倉山は、現在は登山禁止です(その後、不動滝コースは復旧)。一日も早く復旧して欲しいと願わずにはいられません。歴史ある本当にいい山ですから。
【信州の里山】虫倉山さるすべりコース2 Mt.Mushikura at Nakajo in Nagano 2
鞍骨山頂からの景色。松代城下が俯瞰できます。Mウェーブが見えますね。明太子に自家製の松前漬けを挟んだおにぎりを食べながら、ボーっとこの風景を見ていました。右下の尾根は、象山です。ヒオドシチョウが舞って来て留まりましたが、活性が高く撮影できませんでした。春は確実に近づいて来ている様です。
本郭の東端から何段にも重なる腰郭を見下ろしたところ(左)。二の郭から本郭を見上げたところ(中)。二の郭の石垣。綺麗に残っています(右)。
午後になると結構寒風が酷くなり、下山中に冷えて股関節と膝が痛み出しました。ちょっと薄着過ぎた様です。陣場平へ寄りました(左)。貝母(編笠百合)が枯葉を押しのけて芽吹いていました。咲くのは4月下旬からゴールデン・ウィークにかけて。それは見事です。鮮やかな朱色のキノコ。ヒイロタケかシュタケでしょうか。ちょっと同定できませんね。
今回、こんなこともあろうかと、スーパーの袋を二つ持参しました。このテーピングを回収するためです。こういう行為は、若い登山者はめったにしません。するのは環境問題に疎い高齢者です。
テーピングがなぜいけないのか、その理由を説明しましょう。
◉環境破壊
これらはみなケミカルな化学物質で、本来自然にはないものです。基本的に生分解しません(生分解性プラスチックもある)。ずっと以前に、奥多摩で死んだ鹿を解剖したら、胃の中から大量のすずらんテープやビニールテープが出てきて問題になったことがありました。野生動物が誤食するのです。また、粘着性のテープで巻かれた樹木は、そこから腐敗し枯れることもあります。
◉景観破壊
山で写真を撮影して帰って見てみると、このテープが写っていて興ざめすることがあります。自然の中でヒラヒラ舞うピンクや金や赤のテープは、興ざめ以外の何物でもありません。山は歌舞伎町やTDLではありません。
◉林業従事者への迷惑
林業関係者は、生分解性プラスチックテープなどを間伐や除伐の印に使うことがあります。これと混同すると、遭難の危険もありますし、林業関係者にも迷惑をかけることとなります。
そもそもテーピングに、登山者の明確な共通認識があるわけでもなく、どこの誰が何の目的で付けたか分からないテープを頼りに山を登るなど狂気の沙汰です。実際、昔私も山梨の山でテープを頼りに下山して酷い目に遭ったことがあります。それ以降全く信頼しなくなりました。
写真を見ても分かるように、既に矢印がある上に付けたり、複数付けたり、こうなるともう親切どころか自己顕示欲以外の何物でもないと分かります。こういう事をする人は、山は登山者だけのためにあるわけではない、ということが分かっていないんでしょう。自分の目印のために巻くのなら、帰りに全部回収すべきです。
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山は、本来自己責任で登るものです。地形図とコンパスを持ち、読図力を磨くべきなのです。それができない人は、たとえ里山でも、単独登山やバリエーションルートは、登る資格がないということです。
加えて、標識やロープの樹木への結び方ですが、これも行政や山の会の人も必ずしも正しく理解していないのが現状です。樹木は思っている以上に早く大きくなります。針金やワイヤーで標識を樹木に巻くと、木が絞め殺されてしまう場合もあるのです。ですから、木が成長するのに合わせて緩むように取り付けなければなりません。
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また、標識には、絶対に石油系のペイントを使ってはいけません。7年前に帰郷したときに鏡台山へ登ったら、百瀬の分岐に新しい標識が立っていました。私は匂いを嗅いで、これは1年持たないだろうなと思いました、実際そうなりました。月の輪熊によって破壊されたのです。「猫にマタタビ、熊に石油」という事を、この標識を設置した人達は知らなかったのでしょう。昔、山梨県もそうでした。石油系のペイントを使った標識が、尽く破壊されました。現在は、間伐材を使って樹脂注入したものが共通で使われています。長野県も、各自治体でバラバラに設置しないで、山梨県の様に共通のデザインと素材で作ってくれると登山者も理解しやすいと思うのです。デザインも、ちやんとインフォメーション・デザイン(エンバイロメンタル・グラフィックス)が分かる人に頼みましょう。頼まれれば、私アート・ディレクターやりますけど。