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信州里山通信。自然写真家、郷土史研究家、男の料理、著書『信州の里山トレッキング東北信編』、村上春樹さんのブログも

ツル性のトリカブトを探して冠着山と聖山へ。猛暑と人為の無惨を目の当たりに。サラシナショウマ、アブラチャン。メスグロヒョウモンのメス(妻女山里山通信)

2024-09-15 | アウトドア・ネイチャーフォト
 冠着山(姨捨山)と聖山へツル性のトリカブト(鳥兜)を探して登りました。しかし、2年続きの猛暑と無知が故の除草で無惨な結果となりました。最高気温が34度。9月中旬とは思えない暑さの中、登り始めは26度でしたが、下ってみると標高1000m以上なのに30度。

 冠着権現の石の祠裏のツル性かと思われるトリカブトはありませんでした。除草された痕跡は見られません。昨年根こそぎ抜き取られてされて絶えたのか、無惨な結果です。

 2020年9月5日、同じ場所で咲くトリカブト。周囲は樹木で囲まれていて直立したものが突風で倒れたという状況は見られません。茎の根元も折れてはいません。ツルは長いものは2mぐらいあり地面をはって横に伸びています。咲き始めなので花の色がやや薄い。つぼみもたくさん見られます。ただこれを九州の一部にある花葛(はなかずら)と同じとは言えません。おそらく別種でしょう。聖山で見たものは山葡萄のツルにからみついていましたが、今年は昨年同様猛暑で見られませんでした。また、冠着山聖山とも全山を調べたわけでもなく、近隣の里山も調査できていないので他にも群生地があるかも知れません。

 山頂の北面にサラシナショウマ(晒菜升麻)の群生があり、純白の花穂が爽風に揺れています。

 山頂からは眼下に長野自動車道と姨捨サービスエリア、篠ノ井線が見えます。右下には姨捨の棚田が。稲刈りが始まった田んぼも。千曲川の向こうは茶臼山。山上にたくさん集落があります。名店ロンディネッラも。その奥に陣場平山と富士ノ塔山。右奥に雲に隠れた飯縄山。

 山頂の東の端にあるトリカブトの群生。ツル性ではなく大きく伸びたものが重さで倒れたもの。

 猛毒のトリカブトをものともせず吸蜜するクマバチ。トリカブトの毒性は主としてアコニチンで、心臓発作、呼吸困難など致命的な症状を引き起こし、有効な治療法はありません。クマバチなど蜂には毒が効かないそうです。ただトリカブトの蜜でできた蜂蜜は有毒です。トリカブトは全草が猛毒なので絶対に匂いをかいではいけません。触れたときは手を洗ってください。

 冠着山北面の廃道になった巻き道へ来ました。2011年9月27日に来たときには一面トリカブトだったのですが、わずかに見られるだけ。トリカブトは暑さに弱いのです。

 その中の一本は、大町の居谷里湿原で発見されたツクバトリカブトの変種イヤリトリカブトに似ています。直立した後で直角に曲がり花をつけます。高さは1.5mぐらい。

 少し見えにくいのですが、中央にあるトリカブトがイヤリトリカブトに見えます。

(左)下山途中でヤマボウシの実が落ちていました。熊やスズメバチの好物です。(右)アブラチャン(油瀝青)の実。実からとれる油は、整髪剤や行灯やランプの油として使われました。春に黄色い花房を咲かせます。青い実をかじると爽やかな香りがします。和のハーブとして用いる人も。

(左)ハクサンアザミ(白山薊)かフジアザミ(富士薊)。似ている種なので、どちらでしょう。(右)吸蜜に訪れたルリシジミ。

 サラシナショウマ(晒菜升麻)の花穂。春の若葉は山菜です。

 花穂のアップ。昆虫に人気の花でたくさん訪れます。アリも登ってきます。

 県道498を聖湖経由で聖山へ向かいます。道幅1.5車線の狭いワインディングロード。対向車もあるのでカーブではクラクションを。落石は少ないけれど落枝には要注意。

(左)途中の古峠(東山道脇道)で、見つけた日本のホップ、カラハナソウ(唐花草)。苦味が少ないのでビール製造には使えないとか。無毒なので天ぷらで食べられます。ビールに合うそうです。(右)アキノキリンソウ(秋の麒麟草)があちこちに群生しています。

 メスグロヒョウモン(雌黒豹紋)のメス。雌雄で全く異なる色と文様。なかなか出会えない蝶です。花は帰化植物のノラニンジン(野良人参)か。英名はワイルドキャロット。ローマ時代から薬草として使われたそうで、ヨーロッパではスープや煮込み料理に用いられることが多く、さらには健康食品や化粧品の成分としても有効とか。

 聖山の山頂から南の眺め。眼下は麻績村。四阿屋山と奥に美ヶ原。左の谷を行くと修那羅峠を経て青木村。台形の子檀嶺岳(こまゆみだけ)。拙書の表紙です。右奥は善光寺街道を経て松本へ。冠着山には熊はいないと思います。聖山にはいます。以前、山頂直下で北面の藪の中を登ってくる熊の音に気づいて大きな音と声を出して追い払ったことがあります。

 東方には善光寺平。南からいくつも尾根が伸びています。一番手前が斎場山。右にグニャグニャ曲がる千曲川。左に真っ直ぐな犀川。間が川中島。向こうの落合橋付近で合流します。新潟に入ると信濃川。

(左)ハンゴンソウ(反魂草)。若芽は山菜になり天ぷらなどで食べられますが、結構苦味やアクがあります。(右)ノコンギク(野紺菊)キク科シオン属の多年草。薄紫から濃い紫までありますが、白花もあります。白い野菊はたくさんあるので同定が難しい。

 山頂直下のトリカブト。紫の花びらにみえるのはガク。この色でマルハナバチを誘います。別名は、カブトギク、カブトバナ、アコニツム。ドクウツギ、ドクゼリとともに日本三大毒草。春の若葉は食用野草のニリンソウとそっくりで隣り合わせで生えていることもあるので要注意です。
 下山後は戸倉上山田温泉の観世温泉へ。やっと生き返りました。

ツル性のトリカブトは、環境省のレッドデータブックー日本の絶滅危惧種で、絶滅危惧ⅠB類(EN)に指定されている離弁花類キンポウゲ科の猛毒の植物です。学名はAconitum ciliare。国内では九州の一部だけに極稀に自生するとされています。それが信州の山に自生しているのです。牧野植物園では、九州、朝鮮半島、中国東北部、ロシア沿岸地域に分布とあります。
トリカブトは全国的に変種が多く、ヤマトリカブト、オクトリカブト、ツクバトリカブト、イブキトリカブト、タンナトリカブトに加えて長野県北部特産として茎の長さ300cm、上部はツル状のイヤリトリカブトがあるそうです(1~1.5mという記述もあり)。結論からいうとトリカブトには変種が非常に多く、そのためか詳細な分布や研究は充分には行われていないということ。おそらく九州のハナカズラと当地のツル性トリカブトは別種でしょう。トリカブト亜属でも40種以上あり、花弁の舷部が距に向かって膨大するキヨミトリカブト節には、アズミトリカブト、ハナカズラなどがあります。
「トリカブト亜属に属する種は、多年草のなかの疑似一年草に分類される。地上部と地下の母根(塊根、「烏頭(うず)」)はその年の秋に枯死するが、母根から伸びた地下茎の先に子根(嬢根、「附子(ぶし、ぶす)」)ができ、その子根が母根から分離して越冬芽をもち、翌年に発芽し開花する。地上部と地下の母根から見れば一年草であるが、子根が翌年にも生存するため、擬似一年草のカテゴリーにはいる。分離型地中植物とも呼ばれる。」トリカブト(Wikipedia)

ツル性トリカブトを探して冠着山(姨捨山)と聖山へ。三種類のトリカブトが混生か。イヤリトリカブトか。鞍骨山と天城山のトリカブト(妻女山里山通信)

ツル性のトリカブトを冠着山(姨捨山)と聖山で発見。絶滅危惧種のハナカズラが信州に?(妻女山里山通信)

「村上春樹さんのピーター・キャットを中心とした70年代のクロニクル」というムサビの美大生時代に彼のジャズ喫茶でアルバイトしていた当時のブログは世界中からアクセスがあります。この文章をクリックで見られます。ロンドンに5週間住んでいて、Queenのフレデイ・マーキュリーの恋人のメアリー・オースチンが勤めていたBIBAの店で当時の私の恋人が彼女からジャケットを買った話。70年代の美大生の赤裸々な日々が見られます。

好評だったブログ記事:「ブラジルへの郷愁」レヴィ=ストロース 川田順造訳 みすず書房。文化人類学、また構造主義におけるバイブルのひとつ(妻女山里山通信)は、都合によりリンク先の楽天ブログに移転しました。

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